22 / 53
笑顔で・・・
しおりを挟む
「・・・・え?」
この状況を理解するのに数秒かかった。
ネメシスはすぐに奈津の腹部から手を抜いて距離をとった。
俺は倒れゆく奈津の体を抱きかかえる。
「大丈夫か!?奈津!」
俺は必死に呼びかけた。何度も何度も呼んだ。
そして名前を呼び続ける中で不意に奈津の体を支えている手にヌルッとした感触がした。
恐る恐る見るとそれは大量の血だった。
その血を見て俺は奈津の姿を姉の最後の姿に重ねてしまった。
・・・救えなかった。と思った瞬間に俺の中で何か黒いものが蠢く感覚があった。
俺は知っていた。その黒いものを。
・・・殺意だ。テロリストに抱いたものと同じく深くドス黒いものだった。
そうして俺は再び殺意と能力に飲まれた。
このままいけば暴走してしまうと薄れゆく意識の中で感じていたがもう止まれなかった。
その瞬間、俺の頬に何かが触れた。
奈津の手だった。それによって俺は暴走を食い止めることができた。
すぐに奈津の顔を見る。息遣いは荒く呼吸する事でさえ精一杯という感じだった。
自身の「傷を癒やし回復させる能力」で腹部の傷を治すという方法も考えたが多分、間に合わない。
傷も深いし何より今の奈津にこの傷を治せるほど体力もない。
「何で俺なんか庇ったんだよ!?」
奈津の両親はあの事件で亡くなったと聞く。つまり俺が殺したのも同然なのだ。
だからこそ親の仇である俺を庇った意味がわからない。
少しの沈黙のあと奈津が口を開いた。
「好きになってしまっただけです。だからこそあの時、庇った。それだけですよ。」
その答えに俺は唖然とした。
そんな俺を見て奈津は笑った。
「そんな腑抜けた顔をして斗真君らしくないですね。」
「確かに貴方は怠惰で世話を焼きましたけど色んな任務の時に助けてもらいました。」
奈津は薄々、勘づいていたのだろう。俺が力を隠し行動していたことに。
喋るのも辛そうだったが奈津は話を続けた。
「その不器用なくせに優しい貴方に惚れたんです。」
「・・・でも俺はお前を救えなかったんだぞ?」
俺は下を向きながら、か細い声で言った。
大切な人を救えなかった俺に奈津の愛を受け取る資格はあるのだろうか?
その様なことを考えていると奈津は予想外の一言を告げた。
「充分、救われましたよ。」
その言葉を聞き俺は奈津の顔を見る。
「パートナー選別の時や任務の時など色んなところで救われました。」
「人は日々を生きていくだけでも誰かを救い幸せにしてあげられるんですよ。」
その言葉に俺は涙を流した。止めようとしても絶え間なく目尻から溢れてきた。
頰を伝う涙を奈津は手で拭い言った。
「別れの時は涙ではなく笑顔ですよ。笑いましょう。泣いてばかりでは前は切り拓けませんから。」
「確かにそうだな。」
俺は涙を止め満面の笑みを作り別れの言葉を言った。
「俺のこれからの戦いを天国で見届けてくれ。それとお前との生活は楽しかったぞ。」
その言葉を聞いた奈津は声が出ないのか笑いながら唇をかすかに動かし一文字ずつ告げた。
「あ・り・が・と・う」
この五文字が奈津の最後の言葉だった。
言い終わった瞬間、今まで持っていた奈津の手が重力に従って下に沈んだ。
とても安らかな顔で眠っている奈津を俺はさらに強く抱きしめる。
その瞬間、あの夜と同様に俺の中で変化があった。
過去を乗り越えたことが原因なのか俺には分からない。だけど俺はその変化を瞬時に理解した。
そうこれは能力が覚醒したのだと・・・。
この状況を理解するのに数秒かかった。
ネメシスはすぐに奈津の腹部から手を抜いて距離をとった。
俺は倒れゆく奈津の体を抱きかかえる。
「大丈夫か!?奈津!」
俺は必死に呼びかけた。何度も何度も呼んだ。
そして名前を呼び続ける中で不意に奈津の体を支えている手にヌルッとした感触がした。
恐る恐る見るとそれは大量の血だった。
その血を見て俺は奈津の姿を姉の最後の姿に重ねてしまった。
・・・救えなかった。と思った瞬間に俺の中で何か黒いものが蠢く感覚があった。
俺は知っていた。その黒いものを。
・・・殺意だ。テロリストに抱いたものと同じく深くドス黒いものだった。
そうして俺は再び殺意と能力に飲まれた。
このままいけば暴走してしまうと薄れゆく意識の中で感じていたがもう止まれなかった。
その瞬間、俺の頬に何かが触れた。
奈津の手だった。それによって俺は暴走を食い止めることができた。
すぐに奈津の顔を見る。息遣いは荒く呼吸する事でさえ精一杯という感じだった。
自身の「傷を癒やし回復させる能力」で腹部の傷を治すという方法も考えたが多分、間に合わない。
傷も深いし何より今の奈津にこの傷を治せるほど体力もない。
「何で俺なんか庇ったんだよ!?」
奈津の両親はあの事件で亡くなったと聞く。つまり俺が殺したのも同然なのだ。
だからこそ親の仇である俺を庇った意味がわからない。
少しの沈黙のあと奈津が口を開いた。
「好きになってしまっただけです。だからこそあの時、庇った。それだけですよ。」
その答えに俺は唖然とした。
そんな俺を見て奈津は笑った。
「そんな腑抜けた顔をして斗真君らしくないですね。」
「確かに貴方は怠惰で世話を焼きましたけど色んな任務の時に助けてもらいました。」
奈津は薄々、勘づいていたのだろう。俺が力を隠し行動していたことに。
喋るのも辛そうだったが奈津は話を続けた。
「その不器用なくせに優しい貴方に惚れたんです。」
「・・・でも俺はお前を救えなかったんだぞ?」
俺は下を向きながら、か細い声で言った。
大切な人を救えなかった俺に奈津の愛を受け取る資格はあるのだろうか?
その様なことを考えていると奈津は予想外の一言を告げた。
「充分、救われましたよ。」
その言葉を聞き俺は奈津の顔を見る。
「パートナー選別の時や任務の時など色んなところで救われました。」
「人は日々を生きていくだけでも誰かを救い幸せにしてあげられるんですよ。」
その言葉に俺は涙を流した。止めようとしても絶え間なく目尻から溢れてきた。
頰を伝う涙を奈津は手で拭い言った。
「別れの時は涙ではなく笑顔ですよ。笑いましょう。泣いてばかりでは前は切り拓けませんから。」
「確かにそうだな。」
俺は涙を止め満面の笑みを作り別れの言葉を言った。
「俺のこれからの戦いを天国で見届けてくれ。それとお前との生活は楽しかったぞ。」
その言葉を聞いた奈津は声が出ないのか笑いながら唇をかすかに動かし一文字ずつ告げた。
「あ・り・が・と・う」
この五文字が奈津の最後の言葉だった。
言い終わった瞬間、今まで持っていた奈津の手が重力に従って下に沈んだ。
とても安らかな顔で眠っている奈津を俺はさらに強く抱きしめる。
その瞬間、あの夜と同様に俺の中で変化があった。
過去を乗り越えたことが原因なのか俺には分からない。だけど俺はその変化を瞬時に理解した。
そうこれは能力が覚醒したのだと・・・。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる