最弱な奴が実は最強?

レン

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悪寒

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 ネメシスはまるで剣に重量なんてものはないと思わせるかのように軽々しく二つの剣を扱ってくる。
 本当にないのではないかと錯覚してしまいそうになるほどに。
 なるほど能力が強いのはもちろんのことだがネメシスやロキの場合はそもそもの身体能力も高いのだ。
 能力者というのは基本的に能力に頼りすぎるが故に戦闘の素人だったりする。
 痛みに耐性がないし少し攻撃を受けたぐらいで泣き喚いたりもする。
 例外はいるがほとんどの場合、自身の能力を過信し自らの肉体の鍛錬をしない。
 学校の能力者の連中は逃走犯の確保などはしているが死と隣り合わせである実践での戦闘をした事がない。
 だからこそあの時、学校を襲撃された時だって対処ができなかったのだ。
 そんな事を考えている間にもネメシスの猛攻撃は続いた。
「『雷剣山』と『炎剣山』。そして『水槍』。」
 何もない空間から先程とは比べ物にならないほど夥しいほどの数の剣が飛び出てくる。
 そしてネメシスの周りには水で形成された鋭い槍が何本も出現する。
 なるほど攻守ともに完璧と言いたいわけだ。並の能力者なら避けられず死ぬことはまず間違いないだろう。
 だけど俺はそんな攻撃をいとも容易く避けネメシスとの距離を一気に詰め横腹めがけて蹴りを放った。
「なッ・・・・!?」
 ネメシスはそれをもろに喰らって地面に叩きつけられていた。苦しそうに立ち上がり声を上げる。
「何なんですか!?貴方のその力は?」
 その問いに対して俺は言った。
「お前たちとは鍛え方が違うんだよ。」
 ネメシスは苦悶の表情をしつつ呟いている。
「認めない!私が負けるなどと!認めないわ!」
 ネメシスは立ち上がりいきなり俺を襲ってきた。
 それを俺は避けネメシスの首に手刀を叩き込む。
「お前たちの負けだ。もう眠れ。」
 ネメシスは呻き声をあげその場に倒れ込んだ。
 ネメシスが気絶している事を確認した俺は後のことは学校の連中に任せようとその場を去ろうとした。
 その直後、気絶しているはずのネメシスからとんでもない殺気を感じた。
 俺は急いでネメシスのいる方向に向き直り見るがそこにはもうネメシスは居なかった。
「隙だらけだぜ~。」
 俺の後ろから声がした。腕を振りなぎ払おうとしたが目の前にはおらず奴は俺の横を通り過ぎた。
 瞬間、目に写るのは鮮血。切られたと理解するのに数秒の時間を要した。
 たちまち血が溢れ地面を真っ赤に染める。
 後ろを振り向くと目の前にはネメシスと少し似ている美形の男が立っていた。
「クッ・・・。ネメシスは何処に行った?」
 口に溜まった血を吐き出しながらあたりを見渡す。だがネメシスの姿はない。
 そこでようやく男は口を開いた。
「解離性同一性障害。またの名を多重人格障害。そこまで言ったら分かるだろ?」
 その言葉を聞いた瞬間に理解した。つまり目の前の男はネメシスであってネメシスではない。
 ——多重人格障害と肉体の関係性は意外にも深かったりする。
 人格が変わるとその人格に合わせ肉体も変化するという話もあったりするほどだ。
 だとしたら姿が変わったのも納得がいく。
「お初にお目に掛かる。俺の名はクレアーレ。ネメシスのもう一つの人格だ。気軽にクレアと呼んでくれ。」
「と言っても俺が最初に生まれた人格なのだが・・。」
「まぁそんなことはどうでも良い。そんなことより・・・。さてここからが本番だ。井口 斗真。」
 不敵に笑うその顔に俺は悪寒が走ったのであった。
 
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