お嬢様!それは禁忌魔法です!

紺野想太

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お嬢様は魔法が使えない

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私の名前はブレンダ。
ヴェルタ王国のハマーフェルド公爵家でお嬢様の専属メイドとして雇っていただいております。
そして私の主、エヴェリーナ・フレヤ・ハマーフェルド様は昨日12歳になられました。

「ねぇブレンダ」

椅子に腰掛け、旦那様からのプレゼントとしていただいたくまのぬいぐるみにお顔を埋めながらお嬢様が私を呼ぶ。

「はい、お嬢様。いかがなさいましたか?」
「わたし、もう12歳になったのよね?」
お嬢様の声にはいつものような明るさがない。
「えぇ、大変喜ばしいことです」
「…わたしはどうしてが使えないの?」
「……それはお嬢様が特別な存在だからですよ。」
「特別な存在?どうして?みんな自分の魔法が使えるのに…」
「自分の魔法が使えなくても、お嬢様は沢山の魔法を使用なさるでしょう。それこそ同じくらいの歳の中では突出した才能がありますもの」
「…そうだけど……」
「さぁ、おやすみのお時間です。昨日から多くのバースデーカードやプレゼントを見ていてお疲れでしょうから、ホットミルクをご用意致します」
「……ありがとう、ブレンダ。おやすみなさい」
「失礼致します」

ホットミルクをお渡しして、私は自室に戻った。
お嬢様専属メイドになってから、私には1人用の部屋を用意していただいた。ハマーフェルド家は旦那様も奥様も、使用人までもがあたたかくて素敵な場所です。

私は机に向かい、いつものようにノートを開いた。お嬢様のご様子や日々の出来事を書き記しておくためだ。

「…お嬢様、最近は特に魔法について聞かれるわね……」

この国では、一般的な魔法とは別に、と呼ばれる魔法が存在する。
一般的な魔法は知識や個人の魔力による差はあれど、条件を満たせば誰もが使える魔法のこと。
そしては、生まれながらにして使える神からのギフトのような魔法のことを指す。
この魔法の場合、呼吸と同じような感覚で使用することができるから、魔力の消費もなく行動制限もない。
といっても、それが特別強いということはなく、1部の例外を除きほとんどが「火をつける」「少量の水を出現させる」「物を乾かす」程度のもので、知識と魔力があれば誰でも使える魔法がたまたまはじめから備わっていた、という認識が近いかもしれない。
だから自分の魔法が無くても生活に困ったり酷い扱いをされたりすることはないのだけれど、王族から平民まで皆が当たり前のように自分の魔法を使用するところを見ていたら悲観されてしまうお嬢様のお気持ちも分かる。
それでもお嬢様は熱心に勉学に励まれ、12歳になられたばかりなのに中等部卒業程度の魔法を覚えていらっしゃる。それこそ自分の魔法など必要ないほどに、と思うけれど、それは心の中に留めている。
お嬢様は大変な努力家で、聡明で、心優しく麗しい方なのだ。だから私は、そんな素敵なお嬢様が心穏やかに過ごせる時間を少しでも長くと願いながら仕えさせていただいている。

……ちなみに自分の魔法の1部の例外は、特殊魔法に分類される。
こういった特殊魔法は、名のある魔法士でも再現することができないと言われている。それは一般的に使うとなると膨大な魔力も持ってしても致死量となるからとも、複雑な分析がなされた学術書がもう存在せず解明できないからとも言われている。
そういう私も、実はこの特殊魔法を使うことができる。
私の魔法は『相手の魔法・魔力を分析する』。だから、私自身の出自が高くなくても公爵家のお嬢様のメイドに選ばれたのだ。

……私は、本当は、お嬢様の魔法を知っている。

けれど、それは決して誰にも、それこそお嬢様本人にも言えないの。



だって、お嬢様の魔法は大昔に禁止されたもの。古い言い伝えでしか遺されていないもの。







『死者を甦らせる』なのだから。


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