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しおりを挟む「では、こちらでお過ごしください」
その言葉と共に鉄格子の扉が閉じられる。
かろうじて用を足すようのチャンバーポットだけが隅に置かれたそこは、家具も窓もない薄暗い牢屋であった。
ステラフィアラはペタリと床に座り、大きなため息をつく。
「あーあ。頑張ったんだけどなぁ」
魔瘴石を体に取り込み浄化するという前代未聞の方法で沢山の魔瘴石を浄化し、国に貢献してきた。
食べたくもないそれを食べて食べて食べ続け、体に不調をきたしても求められるままに食べたのだ。
何年もそうしているうちに体が限界を迎えたのか、食べる度に体調を崩し寝込むようになってしまった。
数ヶ月前までは一つ食べて一日寝込むだけだったのが、今や一つ食べたら一週間は動けなくなってしまう始末である。
変化はそれだけではない。
魔瘴石に含まれる魔力を体に取り込んでいるためか、ステラフィアラの魔力はぐんぐんと増えていったのだ。
初めは至って平均的な魔力量であった。
それが、聖女になって浄化を始めてから伸びに伸びて、今や国一番の魔力量を保持しているのである。
そして、突然魔力が暴走した。
それは城下に現れた魔獣の討伐の時であったため、被害が大きく出てしまったのだ。
建物を壊し市民を下敷きにし、周りにいた騎士達にも魔法をぶつけて傷付けてしまった。
大きな被害は出しつつも、幸いなことに死者は出なかった。
しかし、ステラフィアラの近くにいた騎士数名には重篤な怪我を負わせてしまった。
騎士を辞めざるを得ないほどの怪我を。
(私なりに頑張ってきたけど、きっと色んな人に憎まれてるんだろうなぁ。だってその結果がこれだもの)
シルヴェリオに愛されようと必死に努力をして頑張って、得られた物は何であったのか。
「もうどうでもいいや。どうせ死ぬんだもの。あーあ、愛されたかったなぁ……」
涙などとうの昔に枯れ果てた目を閉じて、過去の記憶を思い出す。
シルヴェリオがステラフィアラに向かって微笑む顔と、ジュリエットに向かって微笑む顔。
明らかに違っていたのにそれに目を瞑ってしまっていた。
(だって、そうでもしなければ耐えられなかったから……。私がシルヴェリオ様のために必死に努力をしたのが無駄であったのなら、私の全てが無駄になっちゃう……)
「……ただ、愛されたかっただけなのになぁ」
牢屋の片隅で呟いたその言葉は誰の耳にも届かなかった。
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