魔王を倒して還ってきたら、ヒャッハ―な世界に変わってました(涙)

梅田遼介

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1話

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「……大丈夫かっ?!」

「これしき、なんともないわい」

 魔王の宮殿、玉座の間。
 俺たちは魔王ベリフィスと最後の戦いをしている最中だ。
 部屋中をもうもうと覆っていた土煙が次第に晴れてくる。
 俺の声に髭面で頑強なドワーフのジムドが応えた。
 相変わらずの頑固そうな声に安心する。


対魔法障壁アンチマジックシールドが間に合いました。あと一息です」

 顔立ちが美しく美脚な女エルフのミレイナも返事を返す。
 クールでそっけないが、実は心の奥底に熱い思いを秘めていることを知っている。
 ミレイナのお陰で魔王が放った爆炎魔法にみんな耐えることが出来たようだ。
 俺たちも傷ついているが魔王も満身創痍、もはや体力も残っていないはず。
 決着がつくまであと少しだ。

「フェリシア、行けるな?」

「はい、コウヘイ」

 俺は背後のフェリシア姫に声を掛け、フェリシアはそれに頷いた。
 パーティーで回復魔法を担当する大人しげで爆乳な彼女はこの国の麗しき王女。
 穏やかな性格で高貴な身分にかかわらず、ここまでよく耐えてくれている。

「ボクも大丈夫だよ?」

 俺の横でパタパタと羽を動かして浮かんでいる小さなドラゴンのバルサもいる。
 そうだ、みんなで力を合わせて魔王を倒すぞ!

「よし、止めを刺す。みんな、時間を稼いでくれ!」

「おうさ」「はい」「いいよ?」「お任せください」

 フェリシアが『聖加護ホーリー』の呪文で皆を包む。
 ジムドが大槌で『地響き』のスキルを発動して魔王の移動を阻害する。
 ミレイナは『精霊の戒め』で攻撃を封じ、バルサは灼熱のブレスを放った。

『魔破斬』――

 俺は聖剣を天に掲げて究極スキルを発動する。
 周囲から大量のエーテルが流れ込んでくるのを感じる。
 全身にみなぎるパワーを聖剣に流し込む。
 その力が最大限に高まったところで、俺は身動きを封じられている魔王の懐へ一直線に飛び込んだ。

 ――ザバアッ!!

 俺の剣は見事に魔王を捉え、魔力の乗った聖剣が魔王を袈裟懸けに斬り捨てる。

「おのれ、おのれ……勇者め。あと一歩で……我が野望……だが……このままで……憶えていろ……いつか……必ず……」

 魔王ベリフィスは苦しみ、倒れた。
 俺たちは魔王を倒し、今まさにこの国に平和が訪れたのだ。




 
「……行ってしまうのですね、コウヘイ」

「ごめん、俺には帰る世界があるんだ」

「そうですね、分かっていた事です。でも……」

 王女のフェリシアは涙を隠すように顔を伏せた。
 俺はそれに気付いていながら敢えて何も言わなかった。
 王女の後ろでドワーフのジムドは仏頂面でそっぽを向いている。
 その横で女エルフのミレイナは静かに俺を見つめていた。

「そろそろ時間だ。さよなら、フェリシア、みんな。アレを上手く使ってくれたら嬉しい」

「コウヘイ、ありがとう。アナタのお陰でこの世界は救われました。私はアナタを――」

 フェリシアは顔を上げ、俺に向かって手を伸ばす。
 俺は光に包まれた。

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