魔王を倒して還ってきたら、ヒャッハ―な世界に変わってました(涙)

梅田遼介

文字の大きさ
5 / 21

5話

しおりを挟む

「なにがおかしいの?」

 バルサに聞かれても答えようがない。
 どこがおかしいのかと言えばどこもおかしい。
 すると突然スマホが震えた。
 画面に表示された名前は……親父だ。
 慌てて電話に出る。

『もしもし、幸平か? 良かった、無事なんだな』

『ああ、でも何が何だか……』

『そっちがだいぶキナ臭い事になってるって新聞で見てな、母さんが心配だからとにかく電話してみろというから掛けたんだ。奇跡的に繋がってよかった』

『親父と母さんは大丈夫なのか?』

『ああ、こっちでもヤツらはそれなりに居るみたいだがな、まあ田舎だから。それよりそっちだ。相当増えているらしいじゃないか』

『その、ヤツらとか増えてるとかって……?』

『まあいい、お前が無事だってわかってよかった。間に地域国境がなければすぐ帰ってこいと言えるんだが、今は仕方ない。とにかく危険な事はするなよ。ヤバいと思ったらすぐ逃げるんだぞ。金は一応送っておいたがこのご時世だ、どれだけ役に立つかはわからん。とにかく命を大切にな。こっちのことは心配するな。電話もあまり長くしてるとマズイからな、もう切るぞ』

『おい、親父、待てよ』

『とにかくなんとか生き延びるんだぞ、命以上に大事な物なんかないんだからな、母さんを悲しませるなよ。何とか無事に帰って来い。じゃあな』

 訳が分からないうちに親父は早口で話して、一方的に電話を切ってしまった。
 慌てて掛け直すが繋がらず、呼び出し音さえしない。

 とにかくなんだかヤバいことになってる、その事だけは何となく分かった。
 でもそれ以外は何が何だかさっぱりだ。
 検索してみようとスマホをいじるが、繋がらない。
 どうやらネットも完全に死んでるようだ。

「外に出てみるか……」

 部屋に居ても何も分からない。
 悩んだ結果、なんだかヤバそうだが外に出てみる事にした。
 部屋着から着替える。
 久しぶりに着る(日付け的には昨日ぶりだけど)現代の服にはなんだか違和感がある。
 ファンタジー世界の服に慣れていたからなあ。
 剣がないのも心許ない。
 この世界であんな剣持って歩いてたら、すぐ銃刀法違反で捕まるだろうけど。

「問題はお前バルサをどうするかだ。ここで留守番してるか?」

「置いてきぼりは嫌だよ?」

 バルサを連れて外に出ると騒ぎになりそうだが、言う事を聞いてくれそうにない。
 コイツは見た目可愛いくせに頑固だから言い出したら聞かない。
 まあ同じ頑固でも見た目可愛い分髭面のオヤジよりはましだけどな。

 無理にこの部屋に置いて行くと、勝手にパタパタと外に出てしまいそうだ。
 そうなったら大騒動間違いない。
 仕方ない、なんとか隠して連れて行こう。
 俺は前に使っていたリュックを引っ張り出した。

「いいか、この中に大人しく入ってるんだ。勝手に外に出ようとしたり、人のいるところで話したりしないと約束しろ」

「ボクはいつでも大人しいよ?」

 別に嫌ではないらしく、バルサは素直にリュックの中に入ってくれる事になった。
 まあ向こうの世界でもバックパックの中に入れたりしていたからな。
 俺はそのリュックに貴重品や懐中電灯、着替えなどとりあえず使いそうなものを入れた。
 その上からバルサを入れて担いで部屋を出る。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん
ファンタジー
いつも現代人を異世界に連れていく女神さまはついに現代の道具を直接異世界に投じて文明の発展を試みるが… 勘違いから生まれる異世界物語を毎日更新ですので隙間時間にどうぞ

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...