魔王を倒して還ってきたら、ヒャッハ―な世界に変わってました(涙)

梅田遼介

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4話

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 パーン! パーン!

 俺がバルサの餌代に頭を抱え、バルサがそれを不思議そうに眺めていた、その時。
 遠くから乾いた破裂音のようなものが連続して聞こえた。

「何だ……?」

 俺はベッドから立ち上がり、カーテンの閉じられた窓に近づく。
 音はこっちから聞こえた気がする。
 パタパタ浮かぶバルサを見られては大変だ。
 俺はカーテンの端をそっとめくり、その隙間から外を覗いた。

「何なんだよ、これ」

 俺の目に映ったのは……荒れ果てた街の姿。
 いや、おそらくかつて街だったんだろうという廃墟だった。

「どうなってるんだよ」

 一瞬呆然としてしまった。
 マンションの隣に立っていた家は焼け落ちて跡形もない。
 その向こうも、道を挟んだ向かいも瓦礫の山。
 それどころか周囲にまともな建物はなく、立っているのはコンクリートの建物の残骸だけ。
 火事なんだろうか、遠くにいくつか煙が立ち上っているのが見える。

「おいおいおいおい、何がどうなってる。訳分かんないぞこれ」

「コウヘイ、どうかしたの?」

 戦争で爆撃にでもあったというのだろうか。
 俺が異世界に行っている間に、あの国の偉大な首領様がプッツンきたとか。
 もしそうだったら大変だ。
 首をかしげるバルサを放って置いて慌ててテレビをつけるも、砂嵐。
 チャンネルボタンをいろいろ押してみると、国営放送とテレビ大坂だけはなんとか映るみたいだ。
 テレビ大坂は安定の懐かしアニメが流れているので、国営放送にチャンネルを合わせる。

『臨時ニュースをお伝えします。中央政府は先ほど、西日本諸国における非常事態宣言と戒厳令の再延長を決定したと発表いたしました。これにより当該地域では夜間の外出禁止と緊急防衛行為の許可、地域間移動の全面禁止が継続されます。住民の皆さんは各地域政府の指示に従い速やかに身の安全と食料の確保に務め、異界勢力の撃退にご協力ください。繰り返します。臨時ニュースを――』

 スーツ姿の男性アナウンサーがニュースを読んでいたが、そこでプッツリ画像が消えた。
 慌ててリモコンを操作するも反応なし。
 部屋の電灯も扇風機も反応しない所を見ると、停電したようだ。

「おかしいぞ。ここはどこなんだ……」

 スマホの日付は俺が異世界に召喚された日の翌日、ここは間違いなく俺の部屋だ。
 だが外の様子は元の世界とは似ても似つかない。
 ニュースで言ってた中央政府だの非常事態宣言だの戒厳令だの、聞いたこともない。
 どう考えてもここは俺がいた元のままの世界じゃない。
 何がどうなってるのか、さっぱり分からない。
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