魔王を倒して還ってきたら、ヒャッハ―な世界に変わってました(涙)

梅田遼介

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12話

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 高木さんに連れられて学内を歩く途中、大学で顔見知りだった奴を何人か見かけた。
 だが彼らが俺の顔を見ても全く反応が無い。
 向こうは俺の事を全く知らないようだ。
 やっぱりここは俺がいた元の世界じゃないらしいと改めて思う。


「……と言う訳で、あの人は俺が声を掛けたせいでアイツらにやられたんです。すいません」

「いや、いかにも田辺さんらしいわ。君のせいやない、気にしたらアカンで」

「ああ、田辺さんやったら困った人を放っておくようなことはできへんもんな。ホンマええ人やった」

 俺は通された部屋で、高木さんと数人の仲間たちにおじさんが殺された時の話をして謝った。
 田辺さんというあのおじさんはやはりここのメンバーだった。
 食糧確保と地域の警戒の為に見回りをしていて俺と出会ったらしい。
 みんなおじさんが死んだ事を知ってとても悲しんだが、俺のせいだと非難するどころか慰めてくれた。
 いい人たちだな。



 おじさんの話でしばらくしんみりした後、今度は俺の話になった。

「せやけど君、あの小鬼に初めて会ってよう勝てたな。君はゴブリンって呼んでたっけ」

「ああ、ゴブリン言うたらファンタジーに出てくる奴やな。確かにイメージ似てるわ」

「それなりに格闘技の経験がありましたんで」

 本当は格闘技じゃなくてバリバリ実戦経験なんだけどね。
 でも異世界召喚とか勇者とか、とても言えないから適当に話を作っておく。
 ありがたいことにバルサも空気を読んで大人しくしてくれてる。

「ふーん、格闘技やってるようには見えへんけど。人は見かけによらへんもんやねえ」

 ちょっと気の強そうな女の子が俺を見ながら言う。
 確かに俺の体つきからは格闘技はイメージ出来ないだろうな。
 でもこっちに帰って来る前の俺はもっと鍛えてたし、実戦経験では誰にも負けないんだ。

 実は俺はこの女の子の事をよく知ってる。
 彼女の名前は神崎奈保子カンザキナオコ、18歳。
 俺の大学での一般教養のクラスメイトだった。
 神崎――俺は奈保子と呼んでたが――はクラスの女子の中でも良く話していた方だ。
 顔は可愛いけどハッキリ物を言うから時々カチンとくる。
 でもやっぱり奈保子も俺の事は知らないみたいだな。
 実家が大学のすぐそばだから、ここのスタッフとして働いているらしい。

「でも調子に乗らん方がええよ。田辺さんも剣道やってはったけどあんな事になってしもたんやから」
 一瞬馬鹿にされたのかと思ったが、どうやら俺のことを心配してくれているらしい。
 コイツ話し方はストレートだけど、根は世話好きで悪い奴じゃないんだよな。
 俺が風邪ひいて2日ほど寝込んだときはNYAINで「洗濯しに行ったげよか?」とか送ってきて驚いた。
 もちろん断ったけどさ……ヘタレとか言うな。
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