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亡国の王子
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その後、シュターゼン達とも合流した俺達は、ライラの店で休ませてもらう事となった。
俺としては、互いに助け合ったので貸し借り無しと言ったのだが、ライラの方が一泊くらいして行けというのでお願いする事になった。
「で、シュターゼン達は初めてだったな。今日奇妙な縁でお世話になったライラだ。あっちの強面がシュターゼン、そっちの童顔がローランだ」
「これは、若がお世話になったそうでありがとうございます。私シュターゼンと申します」
「……初めまして、ローランです」
「あ、いや、こちらこそ初めまして。ライラです」
なんともぎこちない雰囲気で挨拶が始まったが、まぁ仕方ない。
とりあえず、俺はシュターゼンに話をふった。
「ところで、シュターゼン。例の件、話に行けそうか?」
「とりあえず、ですね。約束だけは取り付けられました。相手はアーバンという男です」
俺達がそんな話をしていると、ライラはギョッとした顔をして聞き返してきた。
「え? アーバンってあの議会議員のアーバン?」
「ん? そうなのか? シュターゼン」
「えぇ、私の昔の知り合いで、アーバン・ロックという商人ですね」
シュターゼンがこともなげにそう言うと、ライラは突然大声を出してきた。
まぁ、驚くのも無理はない。
一隊商の娘からしたら雲上人なのだろう。
「えぇぇぇぇ! あ、アーバンって言ったら会うのに1年近くかかるって言うのに!? それを今日来て明日会うって、あんた達なにもんなん!?」
彼女の驚きに対して、シュターゼンは少し驚きつつも、俺の方を見てきた。
いや、まぁその、言いたい事は分かる。
俺が少し視線を逸らすと、彼は少しため息を吐いてから話を合わせ始めた。
「まぁ、アリューゼ様ですからね。これでも一応すごい人なんですよ。ライラさん」
「え、いや、貴族ってのは聞いていたけど、そんな大貴族だったのか?」
ライラのその一言で、シュターゼンは俺の方をじっと見つめながら「貴族ね~」とだけ言っていた。
「まぁ、確かにそうですね。大貴族ですし、良いと思いますよ」
「で、明日の件行けそうか?」
このまま話していては俺の分が悪いと思い、思い切って明日の勝算を訊いてみた。
あからさまな話題の方向転換にシュターゼンだけでなく、周りのみんなが苦笑するが、気にしていられない。
「まぁ、現状7対3で分が悪いですね。まだどっちにでも転ぶでしょうが、正直良い状況とは言えません」
「明日の交渉次第、という訳か……」
俺達が考え込んでいると、何かを察したのかライラが急に立ち上がってきた。
「ん? ライラどうかしたの?」
「あ、いや、その、ウチ邪魔になりそうやからね。ちょっと席外すわ」
「あ……、申し訳ない。こちらこそ気が付かないで」
「いや、ええんよ。ゆっくり話して。ウチは自分の部屋で寝るさかい」
彼女は「おやすみなさい」と言うと、階段を降りていった。
ちょっと悪い事をしてしまったかもしれない。
「察しの良い子ですな。で、今後の方針ですが――――」
いよいよ明日、アーバンとの交渉が始まる。
ラルフ商店 ライラ
なんとなく困ってそうやったから連れてきてしもうた。
ただ、これは商機でもある。
なんせ大貴族! しかもアーバン商会に面会申し込んで、次の日に会う約束を取り付けるなんて普通やない!
「絶対に、この機会を逃したらあかん……」
じゃぁ、どないすれば良えのか?
彼ら、特にアーちゃんはどうも人が好過ぎる感じだ。
余程の温室育ちだったのだろう。
ボーマン、バイスは忠実な部下って感じで、どっちかって言うと犬。
問題は……。
「シュターゼンとかいう強面のおっちゃん。あれはどう見ても怖い感じの人や……、あれをどないかせなあかん」
ローランとか言うのは……、まぁ放っといて大丈夫やろ。
そういや、バイスとか言うのがシュターゼンの事「参謀」とか言ってたな……。
確か参謀って軍人さんやんな?
ボーマンとバイスは、鎧着こんどるから多分お付きの騎士やろうけど。
ほな、シュターゼンは頭使うんが仕事なんやろか?
「そうなると、シュターゼン出し抜くのは難しいか……。となるとアーちゃんを誘惑して話を……、ってあの子ニブチンなんか、純情なんかようわからんからな」
手を握っても特段気づく様子もなく、けどウチが顔近づけたら焦って赤くなったりしてたし。
ん~、ようわからんけど、顔が近づくのに慣れとらんのかな?
「……よし、ほなその辺利用したるか」
私は、自分の考えた作戦に1人ほくそ笑むのだった。
アーバン商会 アーバン・ロック
さて、困った。
昼頃に来たのは、シュターゼンで間違いないのだが、あいつ確か王国軍を辞任していたはず。
それが今頃王国軍を名乗って出てくるなんて、一体何を考えているのだろう?
そして、もう一つ困ったのは、オルレンシアの王子が居る可能性があるという事だ。
街中で大声を出して2人の騎士が「アリューゼ」の名前を叫んでいた。
「……やはり、考えられるのは王国の件で王子を連れて来たという線か……、なら儂に何を言ってくるか、だな」
今の所手に入っている情報では、オルレンシアの王都イグナシオが陥落したということ。
王子は所在不明であるという事。
まぁこの国に居る可能性が高いのだが。
そして、突然やってきた旧友のシュターゼン。
あまりにもきな臭い。
というよりは、シュターゼンが「会わせたい」と言っていたのは王子で間違いないだろう。
そして、この時期に会わせたいという事は……。
「目的は我らの財貨と兵力……、いや兵力なんて我らには」
そう、この国は商業国家、いや商人国家であって軍人など一人も居ない。
一体どういうつもりだ? 冒険者なんて雇っても逃げ出すのが落ちなのだが……。
私には、奴らの考えが読めない。
いや、もしかしたら最も考えたくない事を奴らはしようとしているのではないだろうか?
「そうなると、絶対に……」
私は1人堅く心に誓うのだった。
俺としては、互いに助け合ったので貸し借り無しと言ったのだが、ライラの方が一泊くらいして行けというのでお願いする事になった。
「で、シュターゼン達は初めてだったな。今日奇妙な縁でお世話になったライラだ。あっちの強面がシュターゼン、そっちの童顔がローランだ」
「これは、若がお世話になったそうでありがとうございます。私シュターゼンと申します」
「……初めまして、ローランです」
「あ、いや、こちらこそ初めまして。ライラです」
なんともぎこちない雰囲気で挨拶が始まったが、まぁ仕方ない。
とりあえず、俺はシュターゼンに話をふった。
「ところで、シュターゼン。例の件、話に行けそうか?」
「とりあえず、ですね。約束だけは取り付けられました。相手はアーバンという男です」
俺達がそんな話をしていると、ライラはギョッとした顔をして聞き返してきた。
「え? アーバンってあの議会議員のアーバン?」
「ん? そうなのか? シュターゼン」
「えぇ、私の昔の知り合いで、アーバン・ロックという商人ですね」
シュターゼンがこともなげにそう言うと、ライラは突然大声を出してきた。
まぁ、驚くのも無理はない。
一隊商の娘からしたら雲上人なのだろう。
「えぇぇぇぇ! あ、アーバンって言ったら会うのに1年近くかかるって言うのに!? それを今日来て明日会うって、あんた達なにもんなん!?」
彼女の驚きに対して、シュターゼンは少し驚きつつも、俺の方を見てきた。
いや、まぁその、言いたい事は分かる。
俺が少し視線を逸らすと、彼は少しため息を吐いてから話を合わせ始めた。
「まぁ、アリューゼ様ですからね。これでも一応すごい人なんですよ。ライラさん」
「え、いや、貴族ってのは聞いていたけど、そんな大貴族だったのか?」
ライラのその一言で、シュターゼンは俺の方をじっと見つめながら「貴族ね~」とだけ言っていた。
「まぁ、確かにそうですね。大貴族ですし、良いと思いますよ」
「で、明日の件行けそうか?」
このまま話していては俺の分が悪いと思い、思い切って明日の勝算を訊いてみた。
あからさまな話題の方向転換にシュターゼンだけでなく、周りのみんなが苦笑するが、気にしていられない。
「まぁ、現状7対3で分が悪いですね。まだどっちにでも転ぶでしょうが、正直良い状況とは言えません」
「明日の交渉次第、という訳か……」
俺達が考え込んでいると、何かを察したのかライラが急に立ち上がってきた。
「ん? ライラどうかしたの?」
「あ、いや、その、ウチ邪魔になりそうやからね。ちょっと席外すわ」
「あ……、申し訳ない。こちらこそ気が付かないで」
「いや、ええんよ。ゆっくり話して。ウチは自分の部屋で寝るさかい」
彼女は「おやすみなさい」と言うと、階段を降りていった。
ちょっと悪い事をしてしまったかもしれない。
「察しの良い子ですな。で、今後の方針ですが――――」
いよいよ明日、アーバンとの交渉が始まる。
ラルフ商店 ライラ
なんとなく困ってそうやったから連れてきてしもうた。
ただ、これは商機でもある。
なんせ大貴族! しかもアーバン商会に面会申し込んで、次の日に会う約束を取り付けるなんて普通やない!
「絶対に、この機会を逃したらあかん……」
じゃぁ、どないすれば良えのか?
彼ら、特にアーちゃんはどうも人が好過ぎる感じだ。
余程の温室育ちだったのだろう。
ボーマン、バイスは忠実な部下って感じで、どっちかって言うと犬。
問題は……。
「シュターゼンとかいう強面のおっちゃん。あれはどう見ても怖い感じの人や……、あれをどないかせなあかん」
ローランとか言うのは……、まぁ放っといて大丈夫やろ。
そういや、バイスとか言うのがシュターゼンの事「参謀」とか言ってたな……。
確か参謀って軍人さんやんな?
ボーマンとバイスは、鎧着こんどるから多分お付きの騎士やろうけど。
ほな、シュターゼンは頭使うんが仕事なんやろか?
「そうなると、シュターゼン出し抜くのは難しいか……。となるとアーちゃんを誘惑して話を……、ってあの子ニブチンなんか、純情なんかようわからんからな」
手を握っても特段気づく様子もなく、けどウチが顔近づけたら焦って赤くなったりしてたし。
ん~、ようわからんけど、顔が近づくのに慣れとらんのかな?
「……よし、ほなその辺利用したるか」
私は、自分の考えた作戦に1人ほくそ笑むのだった。
アーバン商会 アーバン・ロック
さて、困った。
昼頃に来たのは、シュターゼンで間違いないのだが、あいつ確か王国軍を辞任していたはず。
それが今頃王国軍を名乗って出てくるなんて、一体何を考えているのだろう?
そして、もう一つ困ったのは、オルレンシアの王子が居る可能性があるという事だ。
街中で大声を出して2人の騎士が「アリューゼ」の名前を叫んでいた。
「……やはり、考えられるのは王国の件で王子を連れて来たという線か……、なら儂に何を言ってくるか、だな」
今の所手に入っている情報では、オルレンシアの王都イグナシオが陥落したということ。
王子は所在不明であるという事。
まぁこの国に居る可能性が高いのだが。
そして、突然やってきた旧友のシュターゼン。
あまりにもきな臭い。
というよりは、シュターゼンが「会わせたい」と言っていたのは王子で間違いないだろう。
そして、この時期に会わせたいという事は……。
「目的は我らの財貨と兵力……、いや兵力なんて我らには」
そう、この国は商業国家、いや商人国家であって軍人など一人も居ない。
一体どういうつもりだ? 冒険者なんて雇っても逃げ出すのが落ちなのだが……。
私には、奴らの考えが読めない。
いや、もしかしたら最も考えたくない事を奴らはしようとしているのではないだろうか?
「そうなると、絶対に……」
私は1人堅く心に誓うのだった。
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