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プロローグ
魔王の最期
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光の力を纏った勇者の聖剣が、魔王の心臓を貫いた。今日この時をもって人類と魔族による十五年の戦争に幕が引かれるのだと、光の勇者エイルは信じていた。
勇者はそこで安心からか物思いにふけるのだった。
『勇者』の特殊スキルに目覚めてからの十年は本当にあっという間だった。もし勇者にならなければきっと今も王国の最果てにある辺境の森で黙々と木を切っては加工する。そんな職人にでもなっていたのだろう。
これまでに多くの者が死んできた。死んでくるのを見てきた。強くない自分が死神とも思えた頃もあった。もしかすると今もどこかで誰かが、下層に残して来た他の勇者達が戦いの果てに命を落としているのかもしれない。
だが、みんな覚悟はしている。そしてその覚悟の先にある悲願は魔王を討ち取り世界を平和にする事だった。だから、今まで死んできた多くの盟友に、きっと今日は手向けになるだろう。
魔王を倒したと王都へ凱旋すれば多くの人々が喜び、戦争の恐怖に晒されてきた人々はようやく安心して眠りにつく事ができるだろう。
直接魔王を討ち取った自分にはさらに多くの褒美や名声がもたらされるだろう。だが、それらは皆のおかげであり、勇者になる迄自分を育ててきてくれた両親へと恩返しをする為に、以降の人生を決めていた。
勇者は非常に満たされていた。
魔王を初めとする一部の魔族はその身体の構造が人間とは根本から違う。心臓によって送られるのは血液では無く魔力であり、心臓が潰されたとしても残存する魔力で暫くは生き長らえる。
だから、決して油断をして物思いにふける等するべきではない。
魔王が最後の力を振り絞り、その魔力で勇者の胸に魔刻印を刻む。勇者には物理攻撃はもちろんの事、炎も水も風も雷も土も光も闇も毒も効かない。だがその魔刻印が刻まれているという事はそれらに該当しない未知の属性の攻撃を受けたという事になる。
「勇者、我に残る最後の力でお前に呪いをかけた。これ以上我が愛する者達を殺されないための呪いだ。今ので我はもう長くは無い。最期に話をしようじゃないか」
呪い。魔王は呪いと言っていた。確かに勇者には悪影響を及ぼす様な呪いの類に関する耐性は無かった。
「勇者、お前は何の為に戦っていた?この我にもお前の過去は分からない。我は何のために討たれたのか、せめてそれを知ってから逝きたい。そして、お前にも我が何の為に戦って散ったのか知っておいてほしい」
意外だった。王国で勇者になる為に鍛錬を重ねていた頃には魔王はその悪逆非道さ故に配下に人々を襲わせ、人間の街を支配した。話し合いに応じる気もなく仕方なく人類は戦いに踏み切ったと聞いていた。そんな魔王が最期に望む事が会話であるとは。
「俺は戦争に苦しむ者の為に、その根源を断ち切る為戦ってきた。お前を倒した今この戦いも終わる。やっと平和が来るんだ」
「我も同じだ。この戦争に苦しむ者が沢山いる。その者達に耐え忍べと、そう強いる事は出来なかった。だから我が前に立ち、戦ってきた」
人類を苦しめて来た側である魔族が何を言っているのか、どんな立場からの物言いか勇者には分からなかった。人類を苦しめてきた魔族にはこれから、然るべき制裁が下る。人類を苦しめて来たのだからこれから魔族が苦しむのは当然の事だろう。そうならない為に戦い続けてきた。ならばそもそも侵略などしなければ良かったものを、先に仕掛けて来たのに負けたら被害者ぶる。流石魔族、本当にどうしようもない。
「そろそろ、時間みたいだな。おそらく『魔王の呪い』と称されているそれが何か、教えておく。同胞を殺されないため、お前には誰かを……。誰かを殺すと………その…力を失う。……だから…お前…は…迂闊に誰も……殺せない。そ…して………」
そして魔王は動かなくなった。
「魔族を殺せば、俺は力を失うのか。詳しくは分からないが、厄介な呪いをかけられてしまったのだろう。だが魔王!俺には仲間がいる。俺が倒せなくても仲間が悪しき魔族を倒してくれる。残念だったな」
広大な魔王城の頂上、王の間で宿敵である魔王は今死んだ。これで十五年の戦争に終止符が打たれて世界は平和になるんだ。勇者は魔王に突き刺さった聖剣を引き抜き、魔王の遺体をその場へ捨ておき、剣を鞘へと納めた。
まだ下層でほかの勇者が戦っているかもしれない。足早に、大扉を開き王の間を駆け出し、一階層下の広間へと階段を降っていく。
勇者はそこで安心からか物思いにふけるのだった。
『勇者』の特殊スキルに目覚めてからの十年は本当にあっという間だった。もし勇者にならなければきっと今も王国の最果てにある辺境の森で黙々と木を切っては加工する。そんな職人にでもなっていたのだろう。
これまでに多くの者が死んできた。死んでくるのを見てきた。強くない自分が死神とも思えた頃もあった。もしかすると今もどこかで誰かが、下層に残して来た他の勇者達が戦いの果てに命を落としているのかもしれない。
だが、みんな覚悟はしている。そしてその覚悟の先にある悲願は魔王を討ち取り世界を平和にする事だった。だから、今まで死んできた多くの盟友に、きっと今日は手向けになるだろう。
魔王を倒したと王都へ凱旋すれば多くの人々が喜び、戦争の恐怖に晒されてきた人々はようやく安心して眠りにつく事ができるだろう。
直接魔王を討ち取った自分にはさらに多くの褒美や名声がもたらされるだろう。だが、それらは皆のおかげであり、勇者になる迄自分を育ててきてくれた両親へと恩返しをする為に、以降の人生を決めていた。
勇者は非常に満たされていた。
魔王を初めとする一部の魔族はその身体の構造が人間とは根本から違う。心臓によって送られるのは血液では無く魔力であり、心臓が潰されたとしても残存する魔力で暫くは生き長らえる。
だから、決して油断をして物思いにふける等するべきではない。
魔王が最後の力を振り絞り、その魔力で勇者の胸に魔刻印を刻む。勇者には物理攻撃はもちろんの事、炎も水も風も雷も土も光も闇も毒も効かない。だがその魔刻印が刻まれているという事はそれらに該当しない未知の属性の攻撃を受けたという事になる。
「勇者、我に残る最後の力でお前に呪いをかけた。これ以上我が愛する者達を殺されないための呪いだ。今ので我はもう長くは無い。最期に話をしようじゃないか」
呪い。魔王は呪いと言っていた。確かに勇者には悪影響を及ぼす様な呪いの類に関する耐性は無かった。
「勇者、お前は何の為に戦っていた?この我にもお前の過去は分からない。我は何のために討たれたのか、せめてそれを知ってから逝きたい。そして、お前にも我が何の為に戦って散ったのか知っておいてほしい」
意外だった。王国で勇者になる為に鍛錬を重ねていた頃には魔王はその悪逆非道さ故に配下に人々を襲わせ、人間の街を支配した。話し合いに応じる気もなく仕方なく人類は戦いに踏み切ったと聞いていた。そんな魔王が最期に望む事が会話であるとは。
「俺は戦争に苦しむ者の為に、その根源を断ち切る為戦ってきた。お前を倒した今この戦いも終わる。やっと平和が来るんだ」
「我も同じだ。この戦争に苦しむ者が沢山いる。その者達に耐え忍べと、そう強いる事は出来なかった。だから我が前に立ち、戦ってきた」
人類を苦しめて来た側である魔族が何を言っているのか、どんな立場からの物言いか勇者には分からなかった。人類を苦しめてきた魔族にはこれから、然るべき制裁が下る。人類を苦しめて来たのだからこれから魔族が苦しむのは当然の事だろう。そうならない為に戦い続けてきた。ならばそもそも侵略などしなければ良かったものを、先に仕掛けて来たのに負けたら被害者ぶる。流石魔族、本当にどうしようもない。
「そろそろ、時間みたいだな。おそらく『魔王の呪い』と称されているそれが何か、教えておく。同胞を殺されないため、お前には誰かを……。誰かを殺すと………その…力を失う。……だから…お前…は…迂闊に誰も……殺せない。そ…して………」
そして魔王は動かなくなった。
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まだ下層でほかの勇者が戦っているかもしれない。足早に、大扉を開き王の間を駆け出し、一階層下の広間へと階段を降っていく。
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