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叛逆者処刑
迎え
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今日、魔王は死んだ。長かった戦いは終わる。皆が苦しみから解放される。そんな喜びと達成感を胸に勇者はつい先刻は魔王のいた王の間を目指して駆け登った階段を、今は降っていた。
勇者が今ここに居るという事は、勇者と魔王の戦いで敗れたのは魔王であり、つまり魔族である。
降っている階段の下方から戦闘音は聞こえない。先に行った勇者エイルを追ってくる魔物の影も階段にはない。という事は一階層下の広間で戦っていた。氷の勇者ルークは魔王軍の幹部との戦いに勝利したのだろう。
階段も終わりが近づき、下の広間が見える。ルークに氷漬けにされ砕かたのだろう魔王軍幹部の巨大な氷の残骸がまず目に入った。やはり魔王軍幹部に勝利していたのだ。
次に目に入ったのはなんと、王とその直属の精鋭部隊だった。二十人いる精鋭部隊は勇者程とまではいかないものの非常に卓越した実力の持ち主であり、非常に強力な援軍だった。
彼等がここまで辿り着いているという事は城のさらに下層にいた魔王軍の者達も全員倒されているのだろう。この時もって勇者は戦いを終えた安堵を抱く。もう倒すべき魔王軍は居ない。
だが、すぐに勇者は気づく。この広間の敵を倒したはずである氷の勇者ルークは、その左腕を失い、大量の血を地面に流しながら倒れていた。それだけじゃない、炎の勇者ドーナも風の勇者エリックも雷の勇者レイも土の勇者グリッドも居ない。唯一、一階層に残って戦っていた毒の勇者でありこの国の王子でもある。ピトフーイのみがこの場にいた。
「王様!王子様、ルークへの治癒魔法はどうしたんですか?それに他の勇者達は?」
この場に居ない。という事は凡そ状況は予想出来ていた。もちろん状況を見ればルークの事もわかる。だが信じたくなかった。他の勇者がどんなスキルを持っているか分からないが、自分と同じくらいだとすれば殺されてしまったとは考え難い。
「あぁ、光の勇者エイル君。ルーク君やその他の勇者達は申し訳ないが死んでしまったのだよ。この戦いで生き残った勇者は君と、息子のピトフーイだけど言うわけだ」
王は淡々と、冷静に状況を告げた。ルークとここに居ない勇者達はやはり皆死んでいた。魔王を倒す為に、皆を助ける事が出来なかった。先程抱いた魔王を倒した喜びよりも今は、仲間を失った哀しみの方が大きい。
「それで、エイル君。君がその階段から降りてきてくれたと言う事は魔王を討ち取ってくれたんだね?」
王はまだ魔王を倒した事実を知らない。確かに一刻も早く告げるべきだ。死んでしまった皆も覚悟は出来ていた。実際にエイル自身も、一方的に殺される気は無かったが、刺し違える覚悟は出来ていた。
「はい、上の王の間にて魔王を討ち取りました!人類はこの戦争に勝利しました!」
それを聞いた王はゆっくりと目を瞑り、落ち着いた様子で拍手を始める。
「素晴らしい、ありがとうエイル君。君達のお陰で我々は魔族との戦争に勝利したよ。死んだ者も含めて勇者達はみんなに大いなる栄誉を贈る。直接魔王を討ち取った君は特により多くの富名声を手に入れられるだろうね」
妙な緊張感。エイルがそれに気づかなかった事はないが、今は戦いを終えて楽になりたいと考えるのを放棄する力の方が勝った。元は森でせせらぎが好きな彼にこの十年の重荷は重かった。期待されるがままに強くなって、期待されるがままに戦って。戦いの果てに掴んだ勝利と安息を前に違和感の追求を辞めた。
「まぁ、戦争が終わったのに何時までも剣を持っていたんでは心も休まりはしないだろうし、君がエイル君の光の剣をも持ってあげなさい」
王の精鋭部隊の一人、顔すらも隠されて見えない男がゆっくりとエイルに歩み寄る。全身黒の影の様な装束の男はその両手をエイルに向けて伸ばしている。剣はまるで吸われるようにエイルの手を離れて行く。戦いたくなかったんだ。彼を縛っていた剣が使命がその手から離れていく。
「お疲れ様でしたエイル君。君の役目はもう終わりです。お疲れ様でした」
王はそう告げると冷たく振り返って、魔王城の入口へ向けて歩いて行く。その背中は少しずつ離れていき、暫くして王はその左手を上げた。エイルにはその意味が分からなかった。
その刹那、精鋭部隊のメンバー全員とピトフーイの視線がエイルに集まる。そしてその全員が戦闘態勢。各々の武器を取り出す。流石に直感的に感じ取れる。命を狙われている事を。
飛びかかってきた精鋭部隊の斬撃はしっかりとエイルを捉えた。光加速を使う事も出来ずエイルはその斬撃をまともに受けてしまう。普通の人間ならここで死んでいるだろう。『物理攻撃完全耐性』によりエイルに物理的なダメージは通らない。
流石の精鋭部隊は物理攻撃は効かないと即座に判断して、魔法戦へとシフトチェンジする。エイルは魔法に対する適性は無いため殆ど魔法の知識は無い為、どのような攻撃かは理解していなかったが、最高クラスの炎魔法『ファイアバースト』最高クラス水魔法『ウォーターブレード』最高クラス風魔法『ウィンドテンペスト』最高クラス土魔法『グランドインパクト』による四属性魔法同時攻撃。水と風に切り裂かれ引き裂かれ、炎に焼き尽くされ、大地に押しつぶされる。普通の人間でなくともこれを喰らえば木っ端微塵だろう。
しかし、エイルは 『炎完全耐性』『水完全耐性』『風完全耐性』『土完全耐性』『光完全耐性』『闇完全耐性』『毒完全耐性』も持ち合わせているためありとあらゆる魔法の類も効かない。
エイルに効果があるとすれば精神への攻撃だろう。元々は森が好きな位には温厚だった為、精神的苦痛にはそれ程耐性を持ち合わせていない。
だから信じたくなかった。ルークと戦っていた魔王軍の幹部は武器を持っていなかった。ルークを切り裂く様な技を持ち合わせているのか?それに氷漬けになってどうやったらルークを切り裂けるのか?
鋭利な刃物で切られた様な傷を見て見ぬふりをした。他の勇者もきっと魔王軍幹部と戦って死んだと思いたかった。そりゃそうだろうと、炎の勇者が炎の魔物に負けるのがおかしいと思っていた。
命を狙った本気の攻撃。それが心の奥に隠し続けた疑いを確かな物にする。
特殊スキル『不信』獲得。しかし、改めて確認しなければ獲得したスキルを認知することは無い。その逆も然り。
『光加速』と『思考光加速』。その二つが主にエイルが使用する特殊スキル。最高光の速さまで加速することが出来、それに合わせて思考速度も加速する。このスキルの発動中は身体が受ける抵抗力等を全て『物理攻撃完全耐性』で無理やり押し抜けるため、周囲に対する影響が尋常ではない為、基本的にそこまでの加速はしない。
一番初めの狙いは光の聖剣を持った男。まっ直ぐに飛んでその胸部に強く握った拳を飛ばす。その衝撃は人間に耐えられる訳がなく吹き飛ぶ。その際に聖剣だけはしっかりと掴んで奪い取る。名前も顔も知らない男を殺した。きっと身体の内部は衝撃でぐちゃぐちゃになった事だろう。
スキル『望遠Ⅰ』消失。
今は遠くを見るときでは無い為その消失には気づかない。エイルは呪いでスキルが失われる事を、怒りで完全に忘れている。だから躊躇なく聖剣を鞘から抜き出して、敵の後衛先程魔法を放ってきた四人の首を切り落とす。切られる事を理解するまでもなく剣は四人の頭と胴を切り離した。
スキル『飢餓耐性Ⅲ』『息止めⅡ』『鈍痛Ⅱ』『聴力Ⅲ』消失。
どれも現状必要の無いスキルである為エイルはまだ、魔王の呪いの影響に気づかない。とは言えここで、犠牲をできる限り減らす為に必要なのはこの部隊の指揮を取っている王の首。今王さえ倒せば残党は戦う意味を失う。
エイルが王を見たのを王の方角に立ち塞がる精鋭部隊の男は見逃さなかった。『光加速』で王へ飛んでいくエイルに男は立ち塞がるが『物理攻撃完全耐性』を持たない彼はエイルに轢かれて吹き飛んでいく。
スキル『跳躍力Ⅲ』消失。
「これで終わりだ…」
エイルはその一言だけ王に告げて、間髪入れずにその首を切り飛ばす。その先の国をどうするのか、そんな事も考えずに衝動的だった。
特殊スキル『勇者(光)』消失。それに伴い『勇者(光)』を前提とする『聖剣適性』『身体超強化』『物理攻撃完全耐性』『炎完全耐性』『水完全耐性』『風完全耐性』『雷完全耐性』『土完全耐性』『光完全耐性』『闇完全耐性』『毒完全耐性』『光適性』『光加速』『思考光加速』『対魔特攻』『危険完全探知』も消失。
エイルがその手に持つ聖剣はその『聖剣適性』によって何も持っていないかの如く軽く感じていたが、それも無くなる。更に鞘から抜かれた聖剣はその力を解放している為、魔力の重みが加算されて『聖剣適性』無しではとても持てたものでは無い。
王の死を受けて残された精鋭部隊の者達は皆慌てた様子でざわめいている。しかし、一人。毒の勇者ピトフーイだけはこの状況であっても動揺等はしていなかった。王の死を見届けた後でピトフーイは毒球を飛ばす。
勇者としての力を失ったエイルは『光加速』で避ける事も『毒完全耐性』で無効化する事も出来ない。エイルも何のスキルが消えたかは分からない物の、スキルが消えた事については気づいてはいるが、もう高速で飛んでくる毒球を躱す事も出来ない。
毒の効果は即座に身体中に拡がり、エイルはその場に動けなくなって倒れる。身体が動かない事で、今まで感じた事のない量の恐怖を抱きながら、後ろからこちらに向かってくる一つの足音を聞いていた。
「エイルお前完璧だな…。お前はこれで完全に王国への反逆者になったわけだな。貴様を裁く正義の勇者改め、王国の次なる王が反逆者を直々に迎えに来てやったぞ!喜べ。お前は俺の名誉の為に死ねるんだ」
悔しい。だが何かを話す事すら出来ない。
「まぁ、今のは強力な麻痺毒だ。とは言え捕縛用の毒だから死ぬ事はないから安心してくれ。お前にはまだ死んでもらったら困るからなぁ。はっはっは!とりあえず続きは王都で聞いてやるから、今は眠れ」
そしてピトフーイは毒霧の魔法をエイルへと浴びせる。エイルは可能な限り呼吸を止めたが、限界を迎えてとうとう毒霧を吸い込んでしまう。
全身の力が抜けて、意識が遠のいて行く。そしてエイルが毒霧を吸ってから数秒後にはその意識は無かった。彼は悔し涙を浮かべながら眠りに落ちる。
勇者が今ここに居るという事は、勇者と魔王の戦いで敗れたのは魔王であり、つまり魔族である。
降っている階段の下方から戦闘音は聞こえない。先に行った勇者エイルを追ってくる魔物の影も階段にはない。という事は一階層下の広間で戦っていた。氷の勇者ルークは魔王軍の幹部との戦いに勝利したのだろう。
階段も終わりが近づき、下の広間が見える。ルークに氷漬けにされ砕かたのだろう魔王軍幹部の巨大な氷の残骸がまず目に入った。やはり魔王軍幹部に勝利していたのだ。
次に目に入ったのはなんと、王とその直属の精鋭部隊だった。二十人いる精鋭部隊は勇者程とまではいかないものの非常に卓越した実力の持ち主であり、非常に強力な援軍だった。
彼等がここまで辿り着いているという事は城のさらに下層にいた魔王軍の者達も全員倒されているのだろう。この時もって勇者は戦いを終えた安堵を抱く。もう倒すべき魔王軍は居ない。
だが、すぐに勇者は気づく。この広間の敵を倒したはずである氷の勇者ルークは、その左腕を失い、大量の血を地面に流しながら倒れていた。それだけじゃない、炎の勇者ドーナも風の勇者エリックも雷の勇者レイも土の勇者グリッドも居ない。唯一、一階層に残って戦っていた毒の勇者でありこの国の王子でもある。ピトフーイのみがこの場にいた。
「王様!王子様、ルークへの治癒魔法はどうしたんですか?それに他の勇者達は?」
この場に居ない。という事は凡そ状況は予想出来ていた。もちろん状況を見ればルークの事もわかる。だが信じたくなかった。他の勇者がどんなスキルを持っているか分からないが、自分と同じくらいだとすれば殺されてしまったとは考え難い。
「あぁ、光の勇者エイル君。ルーク君やその他の勇者達は申し訳ないが死んでしまったのだよ。この戦いで生き残った勇者は君と、息子のピトフーイだけど言うわけだ」
王は淡々と、冷静に状況を告げた。ルークとここに居ない勇者達はやはり皆死んでいた。魔王を倒す為に、皆を助ける事が出来なかった。先程抱いた魔王を倒した喜びよりも今は、仲間を失った哀しみの方が大きい。
「それで、エイル君。君がその階段から降りてきてくれたと言う事は魔王を討ち取ってくれたんだね?」
王はまだ魔王を倒した事実を知らない。確かに一刻も早く告げるべきだ。死んでしまった皆も覚悟は出来ていた。実際にエイル自身も、一方的に殺される気は無かったが、刺し違える覚悟は出来ていた。
「はい、上の王の間にて魔王を討ち取りました!人類はこの戦争に勝利しました!」
それを聞いた王はゆっくりと目を瞑り、落ち着いた様子で拍手を始める。
「素晴らしい、ありがとうエイル君。君達のお陰で我々は魔族との戦争に勝利したよ。死んだ者も含めて勇者達はみんなに大いなる栄誉を贈る。直接魔王を討ち取った君は特により多くの富名声を手に入れられるだろうね」
妙な緊張感。エイルがそれに気づかなかった事はないが、今は戦いを終えて楽になりたいと考えるのを放棄する力の方が勝った。元は森でせせらぎが好きな彼にこの十年の重荷は重かった。期待されるがままに強くなって、期待されるがままに戦って。戦いの果てに掴んだ勝利と安息を前に違和感の追求を辞めた。
「まぁ、戦争が終わったのに何時までも剣を持っていたんでは心も休まりはしないだろうし、君がエイル君の光の剣をも持ってあげなさい」
王の精鋭部隊の一人、顔すらも隠されて見えない男がゆっくりとエイルに歩み寄る。全身黒の影の様な装束の男はその両手をエイルに向けて伸ばしている。剣はまるで吸われるようにエイルの手を離れて行く。戦いたくなかったんだ。彼を縛っていた剣が使命がその手から離れていく。
「お疲れ様でしたエイル君。君の役目はもう終わりです。お疲れ様でした」
王はそう告げると冷たく振り返って、魔王城の入口へ向けて歩いて行く。その背中は少しずつ離れていき、暫くして王はその左手を上げた。エイルにはその意味が分からなかった。
その刹那、精鋭部隊のメンバー全員とピトフーイの視線がエイルに集まる。そしてその全員が戦闘態勢。各々の武器を取り出す。流石に直感的に感じ取れる。命を狙われている事を。
飛びかかってきた精鋭部隊の斬撃はしっかりとエイルを捉えた。光加速を使う事も出来ずエイルはその斬撃をまともに受けてしまう。普通の人間ならここで死んでいるだろう。『物理攻撃完全耐性』によりエイルに物理的なダメージは通らない。
流石の精鋭部隊は物理攻撃は効かないと即座に判断して、魔法戦へとシフトチェンジする。エイルは魔法に対する適性は無いため殆ど魔法の知識は無い為、どのような攻撃かは理解していなかったが、最高クラスの炎魔法『ファイアバースト』最高クラス水魔法『ウォーターブレード』最高クラス風魔法『ウィンドテンペスト』最高クラス土魔法『グランドインパクト』による四属性魔法同時攻撃。水と風に切り裂かれ引き裂かれ、炎に焼き尽くされ、大地に押しつぶされる。普通の人間でなくともこれを喰らえば木っ端微塵だろう。
しかし、エイルは 『炎完全耐性』『水完全耐性』『風完全耐性』『土完全耐性』『光完全耐性』『闇完全耐性』『毒完全耐性』も持ち合わせているためありとあらゆる魔法の類も効かない。
エイルに効果があるとすれば精神への攻撃だろう。元々は森が好きな位には温厚だった為、精神的苦痛にはそれ程耐性を持ち合わせていない。
だから信じたくなかった。ルークと戦っていた魔王軍の幹部は武器を持っていなかった。ルークを切り裂く様な技を持ち合わせているのか?それに氷漬けになってどうやったらルークを切り裂けるのか?
鋭利な刃物で切られた様な傷を見て見ぬふりをした。他の勇者もきっと魔王軍幹部と戦って死んだと思いたかった。そりゃそうだろうと、炎の勇者が炎の魔物に負けるのがおかしいと思っていた。
命を狙った本気の攻撃。それが心の奥に隠し続けた疑いを確かな物にする。
特殊スキル『不信』獲得。しかし、改めて確認しなければ獲得したスキルを認知することは無い。その逆も然り。
『光加速』と『思考光加速』。その二つが主にエイルが使用する特殊スキル。最高光の速さまで加速することが出来、それに合わせて思考速度も加速する。このスキルの発動中は身体が受ける抵抗力等を全て『物理攻撃完全耐性』で無理やり押し抜けるため、周囲に対する影響が尋常ではない為、基本的にそこまでの加速はしない。
一番初めの狙いは光の聖剣を持った男。まっ直ぐに飛んでその胸部に強く握った拳を飛ばす。その衝撃は人間に耐えられる訳がなく吹き飛ぶ。その際に聖剣だけはしっかりと掴んで奪い取る。名前も顔も知らない男を殺した。きっと身体の内部は衝撃でぐちゃぐちゃになった事だろう。
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エイルが王を見たのを王の方角に立ち塞がる精鋭部隊の男は見逃さなかった。『光加速』で王へ飛んでいくエイルに男は立ち塞がるが『物理攻撃完全耐性』を持たない彼はエイルに轢かれて吹き飛んでいく。
スキル『跳躍力Ⅲ』消失。
「これで終わりだ…」
エイルはその一言だけ王に告げて、間髪入れずにその首を切り飛ばす。その先の国をどうするのか、そんな事も考えずに衝動的だった。
特殊スキル『勇者(光)』消失。それに伴い『勇者(光)』を前提とする『聖剣適性』『身体超強化』『物理攻撃完全耐性』『炎完全耐性』『水完全耐性』『風完全耐性』『雷完全耐性』『土完全耐性』『光完全耐性』『闇完全耐性』『毒完全耐性』『光適性』『光加速』『思考光加速』『対魔特攻』『危険完全探知』も消失。
エイルがその手に持つ聖剣はその『聖剣適性』によって何も持っていないかの如く軽く感じていたが、それも無くなる。更に鞘から抜かれた聖剣はその力を解放している為、魔力の重みが加算されて『聖剣適性』無しではとても持てたものでは無い。
王の死を受けて残された精鋭部隊の者達は皆慌てた様子でざわめいている。しかし、一人。毒の勇者ピトフーイだけはこの状況であっても動揺等はしていなかった。王の死を見届けた後でピトフーイは毒球を飛ばす。
勇者としての力を失ったエイルは『光加速』で避ける事も『毒完全耐性』で無効化する事も出来ない。エイルも何のスキルが消えたかは分からない物の、スキルが消えた事については気づいてはいるが、もう高速で飛んでくる毒球を躱す事も出来ない。
毒の効果は即座に身体中に拡がり、エイルはその場に動けなくなって倒れる。身体が動かない事で、今まで感じた事のない量の恐怖を抱きながら、後ろからこちらに向かってくる一つの足音を聞いていた。
「エイルお前完璧だな…。お前はこれで完全に王国への反逆者になったわけだな。貴様を裁く正義の勇者改め、王国の次なる王が反逆者を直々に迎えに来てやったぞ!喜べ。お前は俺の名誉の為に死ねるんだ」
悔しい。だが何かを話す事すら出来ない。
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そしてピトフーイは毒霧の魔法をエイルへと浴びせる。エイルは可能な限り呼吸を止めたが、限界を迎えてとうとう毒霧を吸い込んでしまう。
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