イクメンパパの異世界冒険譚〜異世界で育児は無理がある

或真

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第一章

冒険者デビュー

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 俺たちはバンさんに案内されて、冒険者ギルドにやってきた。夜だからかギルドは人でごった返していて、いかつい冒険者たちが各々酒を飲んでいる。

 そんないかつい面々に混じって子連れの男がいるんだから、場違いとはまさにこのことだ。その証拠に何人かの冒険者に既にギョッとされた。

「では登録を済ましてしまいましょうか。」

「そうですね。」

 異世界ものをよく読んでいた俺にとって、ギルドは憧れそのものだった。主人公が冒険者としてメキメキと頭角を現していく姿はとにかく格好良く、スカッとした。「いつかは俺も」と厨二病を拗らせていた俺はこの瞬間にたまらなく興奮していた。

 日本に帰れないという焦りよりも異世界で活躍するという興奮の方が上回ったのか、日本のことが別に恋しいとは思わない。ただ恵が待っていると考えると少し胸が痛むのは事実だな。

 ともかくだ、日本に帰るためにもギルドで超有名冒険者になるのはとっても重要なことなのだ。

「こんばんは、冒険者ギルドへようこそ!今日はどんなご用件で?」

 受付嬢のお姉さんの笑顔はとても眩しかった。これはなかなか人気が出るだろうなあ……

「えーっと、登録をしに来たんですけど。」

「あぅ!」

「こら、れいちゃん。今はパパが話してるの!」

「ウフフ、可愛いお子さんですね。」

「ありがとうございます。」

「では、こちらの登録用紙に必要事項を記入していただいてよろしいでしょうか?」

「はい、わかりました。」

 まずは名前と生年月日っと。そしてそのすぐ下にステータスを書く欄があるんだけど、細かいステータスは分からないんだよな。

「すみません、このステータスを書く欄ってレベルだけでもいいですか?」

「はい、レベルだけで結構です。」

 少し恥ずかしいけれどもレベル1と記入する。どうやらこれで記入すべき欄は全て埋められたみたいだな。

 記入し終えた登録用紙を受付のお姉さんに渡す。

「ユウマ様ですね。お子様の方はどうされますか?もし一緒に行動するならば一応冒険者として登録しておくのがよろしいと思うのですが」

 れいちゃんを冒険者にするのは正直言って嫌だが、どうやら冒険者登録しないとギルドのサービスが何歳であれ受けられないらしい。

 しょうがないかられいちゃんの分も冒険者登録してもらおう。

「じゃあれいちゃんの分の登録もお願いします。」

「了解しました。」

 手渡された登録用紙をさっきと同様に埋めていく。ただ、ステータスの欄で一度ペンが止まる。残念ながられいちゃんのステータスはまだ測定してないんだ。

「あのっ、実はれいちゃんのステータスが分からないんですけど……」

「そうですか……ここのギルドではステータスの測定はやっていないので、どうしようもないですね。」

「ステータスの欄を空白にしといてもいいですか?」

「申し訳ありませんが、ステータスは必須事項になっておりまして……」

 どうやらステータスが分からないままで冒険者登録するのは不可能らしい。こうなると諦めるしかないか。

「あぅ!あぅ!」

 れいちゃんが俺に何かを訴える様子で喚いている。ん?鑑定スキル持ってるだろ?あ、そっか!俺鑑定スキル持ってたわ!

 早速使ってみる。「鑑定」と念じると、ステータスがホログラムに表示される。

個体名:れいちゃん
職業:勇者
レベル:100

体力:3012
攻撃力:1423
魔力:1342
防御力:1987
俊敏性:198

スキル:鑑定・インベントリー・言語理解
 どれどれ、レベル100!?俺の百倍!?しかもHPとか魔力など軒並み4桁を突破している。ユニークスキルはないみたいだけど、俺の数十倍、いや数百倍強いことは確かなようだ。

 子は親を抜かすと言われてるけど、いくらなんでも早すぎはしないか?誇らしいのか悲しいのかよく分からないな。

 それはともかく、ステータスの欄を記入できるから良かったな。ステータスの欄にレベル100と記入して、受付のお姉さんに渡す。

「レ、レベル100?これは間違いではなく?」

「本当です」
「あぅ!」

「え、赤ん坊がレベル100越えですか、」

 受付のお姉さんは明らかに混乱している様子だ。赤ん坊がレベル100っていうのはやっぱりおかしいみたいだな。

「お話中失礼します、王室に勤めている者なんですが、このお二人方は勇者でして……」

「あっ、そういうことでしたか!」

 どうやら勇者と聞いて納得した様子だな。バンさんありがとうございます!

「では、冒険者になる上での規約などをご説明させて頂きます。」

 そう言って受付のお姉さんに説明された内容はこうだ。

1.ギルドはあくまでも仲介役であって、冒険者間や依頼主との争いごとへは加担しない。
2.ギルド内での暴力行為は許可されない。
3.冒険者は各国に跨るギルドのサービスを平等に受けることができる。

「何か不透明な部分がありますでしょうか?」

「あ、特にないので大丈夫です。」
「あぅ!」

「では、次は冒険者ランクについての説明です。」

「冒険者ランクとは要するに冒険者としての実力を示す、階級のことです。」

 受付のお姉さんの話によると、冒険者ランクの等級は下の方から鉄、銅、銀、金、白銀、ダイヤの六つの階級に分けられるそうで、実力の有無関係なしで鉄冒険者からのスタートだそうだ。

 ギルドのサービスを平等に受けられるっていうのはこういうところにも影響しているみたいだな。

 どちらにせよ、実績を積まないと一流冒険者にはなれないということか。

「ということは、俺たちは鉄ランク冒険者からの登録ということですか?」

「そうなりますね。」

「えっと、鉄ランク冒険者から白銀ランク冒険者になるにはどれくらいかかりますかね?」

「平均的に十年程度ですかね。早いと二年、遅ければ十五年くらいでしょうね。」

 早ければ二年か。どんだけれいちゃんが強くてもきちんと実績がないと意味ない、か。こうなったらがむしゃらに実績を積んでいくしかないな。

「そういえば冒険者ランクの昇格に具体的な水準とかはあるんですか?」

「具体的な水準はありませんね。ギルドが定期的に更新していく感じでしょうかね。」

「私の場合でしたが、依頼を100件ほどこなした頃に金ランク冒険者になっていましたね。」とバンさん。

 というか、バンさんって冒険者だったのか。

「差し支えないなら伺いたいんですけど、バンさんってどの冒険者ランクなんですか?」

「私は一応白銀ランクですね。もう引退した身ではありますけど、ハハッ」

「あぅ!?」

 いや、「ハハッ」じゃなくて。バンさんってただのおっさんかと思っていたら案外すごい人だったわ。れいちゃんもそりゃ驚きだわな。

「何か困ったことがあればいつでも私に聞いてくださいね、ユウマ様。」

 おー!なんて頼もしい言葉。今後は遠慮なく頼らせてもらうとしよう。

「あとは登録費をお支払い頂いたら登録完了となります。お会計は二名様初回登録料で銀貨6枚、年会費で銀貨2枚の、合計銀貨8枚となります。」

 え?登録費?銀貨?俺の財布には日本円しか入ってないんだが。

「バ、バンさん……俺たちお金ないです……」
「あぅー」

「む、そうでした!こちらに女王陛下からユウマ様宛のお金を頂いてます。」

 手渡された麻袋の中を覗いて見ると、金色に輝く硬貨、おそらく金貨が大量に入っていた。

 これって多分結構な金額だよな。

「すみません、この麻袋の中にどれくらい入ってますか……」

「確か金貨60枚だったと思います。」

「それってどのくらいの金額なんでしょうか?」

「ああ、十年くらいの間生活には困らないー」
「グフェ!!!」

 金額に驚いて変な声が出てしまった。

「す、すみません。話を続けてください。」

「で、ではー」

 その後のバンさんの話をまとめてみると、まず硬貨は3種類、金銀銅があるらしく、

金貨一枚→銀貨十枚
銀貨一枚→銅貨十枚
銅貨一枚→鉄貨十枚
 
 で交換できるそうだ。バンさんの話から推測すると、

金貨一枚=十万円
銀貨一枚=一万円
銅貨一枚=千円
鉄貨一枚=百円

 というような感覚のようだ。要するに俺は600万円という大金を一気に受け取った訳か。

「お金は盗まれないようにどこかに隠しとくのがいいと思います。」

「あ、はい。そうしときます。」

 はっ、そうだな。思わず大金に呆然としてしまってたよ。盗まれる前にインベントリーにしまっておこう。

 麻袋から金貨一枚だけ抜き出して、登録費を支払う。他はインベントリーに封印だ。

「確かに金貨一枚受け取りました。お釣りの銀貨二枚とギルドカードです。」

「ギルドカードですか?」

「あ、ギルドカードの説明を忘れてました。このカードは身分証明書として用いますので、無くさないようにしてください。」

「はい。」

 銀色に輝くギルドカードを見てみると、きちんと鉄ランク冒険者と刻まれている。

「では、これで冒険者登録は完了です。良い冒険をお祈りしております。」

 どうやらこれでちゃんと冒険者になったみたいだな。さあ、このあとはどうするか。

「ユウマ様、今日はもう遅いですし、よかったら私の家に泊まっていきませんか?」

 確かに今から依頼を受けるには遅すぎるし、宿も知らないからな。バンさんの家に泊まらせてもらうのはいいのかもしれない。

「れいちゃんいいかな?」

「あぅ!」

「れいちゃんも賛成みたいなのでよろしくお願いします。」

「じゃあ決まりですな。早速案内しますぞ!」

「あぅ!」

 こうして俺たちはバンさんの家で一泊をすることになったのだった。
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