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第一章
対武王
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武王。本名不詳。
十五歳の頃大会に初出場ながら優勝。フラッシュ相手に戦闘時間僅か三十秒でのKO勝ちをして、圧勝した逸話は大会屈指の一戦として語り継がれている。
その翌年も出場、そして圧勝。同時にダンジョンにも進出し、初挑戦ながらもダンジョン制覇目前まで辿り着いた。
そんな圧倒的な力を見せつけ続けた後、いつしかついたあだ名こそが『武王』。
だがそんな圧倒的な武王は常に飢えていた。自分と対等に渡り合える存在を欲していた。
そしてついに武王は見つけた。自分と対等もしくはそれ以上の存在に。
「この姿を見せるのは、お前が二人目だ。」
剛化。武王最大の奥義。圧縮された筋肉を解放することで武王の体は、兵器と化す。並の武器やら魔法では武王の体を傷つけることは不可能。
まさに難攻不落の要塞。
「なんだ、筋肉が増えただけじゃないか。」
「フッ、痩せ我慢もいい加減にしたらどうだ?」
「生憎子供が見てるんでね。」
武王がメイスを振りかぶる。武王の『剛化』によって強化されるのは硬度だけではない。速度、パワーなど様々なステータスが軒並み強化される。
更に速くなった武王の攻撃を必死で受け流す。刀がメイスと接触するたび、青い火花が散る。
くっ、痛ぇ。メイスの力に徐々に押されている。手も痺れてきたし、一度距離を取らないと。
一度連撃の間を見て距離を取る。メイスの射程圏内から外れたはずーかと思いきや。武王の腕が伸縮し、俺の腹に直撃した。
流石のクリーンヒットに蹲ってしまう。
「おっと?これで終わりか?」
「な訳あるか……」
腹を抱えながら、やっとの思いで立ち上がる。しかし今なぜ攻撃が俺に届いた?十分な距離をとったはずなんだが。
「なぜ当たった、と言いたげな顔だな。」
「んっ……なんで当たったんだ?」
「この腕を見れば分かるだろ?」
武王の腕を凝視する。ん?なんか伸びてないか?
「勘の悪い野郎だな。外したんだよ、わざと。」
「何を?」
武王が本当にそこまでいわせる気かと言わんばかりの素振りを見せる。呆れられたみたいだな。
「肩をわざと脱臼させて距離を伸ばしたんだよ。」
げっ、肩をわざと外した?そんなことしたら威力が出ないだろ。
『おい馬鹿者。お主はどこまで阿呆なんだ。』
神威からも喝が飛んでくる。そんなこと言われても、戦闘なんて転移するまでまともにしたことないんですよね。
『まあいい。あいつは今剛化してるだろ?剛化の影響で肩を外しても威力が落ちないのだよ。』
なるほど、ようやく分かったよ。で、これにどうやったら勝てるの?
さっきまでは見栄張って豪語してたけど、本当は緊張やら不安でちびりそうなんだよな。
『まあ案ずるな。我に策がある。とりあえず刀を握れ。』
俺は神威に言われるがまま刀を握る。で?次はどうすればいいのかな。
『じゃあ、突っ込め。』
はっ?
『突っ込め。』
意味分かんねぇ。でも俺に策がある訳でもないし、騙されたと思って乗ってやるよ!俺は全速力で武王へと突っ込む。
『じゃあ次は刀を鞘にしまえ。』
え?
『いいから。』
くそっ、失敗したら恨むぞ!刀を鞘へと仕舞う。
『俺が合図したら刀を鞘から出せ。』
合図って、いつ!
『いいから突っ込め!』
こんな念話をしてる間も、武王との距離は着実に縮まっている。もう二、三メートルしか離れてない。いよいよメイスの射程圏内に入る。
もうどうすればいいの!
武王はメイスを振りかぶる。万事休すかぁ……
『今だ!飛べ!』
「くそっ!」
俺は地面を蹴り、宙に浮く。武王のメイスが俺のすぐ下の空気を切り裂く。
『ここだ!鞘から出せ!』
鞘から刀を勢いよく出すと、見えない斬撃が鎧もろとも武王の体を切り裂く。
「ぐっ!」
武王の口から苦しそうな吐息が漏れる。予想外のダメージに怯んだ武王は一度メイスを振って牽制を行う。
「やるじゃないか!」
武王が愉しそうに叫ぶ。ついに現れた好敵手に興奮している。
てか、一体どうやって『剛化』したあいつにダメージを与えたんだ?
『俺の不可視の斬撃の威力は何に影響されると思う?』
そりゃ溜めの時間じゃないの?
『大正解だ。じゃあ一番早い斬撃を放てるのは?』
抜刀時ってことか?
『その通り。あの鞘の中で威力を溜めて、最速の不可視の斬撃を放ったんだ。』
じゃあわざわざ仁王立ちして斬撃を溜める必要は?
『ない。』
…………
『ほら、追撃だ。戦闘に集中しろ!』
はいはい!いまいち状況を理解していない武王を仕留めに攻める。再び鞘に刀をしまい、威力を溜める。
「負けてたまるかぁ!」
武王も割り切って攻めへと切り替える。
いよいよ武王が斬撃の射程圏内に入った。ついに抜刀をしようとしたその瞬間ー
ドガァ。
武王のメイスが俺の顔に直撃した。
くそっ、意識が朦朧とする。どうにか致命傷は避けられたけど、ダメージは依然デカい。どうやら、武王はメイスを俺に投げつけたみたいだ。
まさに捨て身の攻撃。
その攻撃が功を成し、互いに失神一歩前というところ。お互い、次の衝突で全てが決まると理解していた。
「さて、そろそろフィナーレかな。」
「うむ。お前と戦えたこと、誠に光栄だった。」
俺は刀、武王は拳を構える。メイスを捨てたことによって身軽になった武王のスピードは最高潮を迎えていた。
一方で俺は満身創痍ながらも、一撃分の余力を残していた。どちらが勝ってもおかしくない勝負。
刀を鞘に仕舞い、俺は蛇行しながら武王の元へと向かう。武王はカウンター狙いか、不動だ。
ついにお互いがお互いの射程距離に入った。俺は刀を強く握り、可能な限りの速度で抜刀する。そして同時に武王も拳を握りしめ、腕を大きく振る。
ついに俺は刀を抜いたがー不可視の斬撃は放たれなかった。呆気に取られた武王の拳を刀で受け流す。
その衝突の威力で刀が吹き飛ぶ。
「もらった!」
刀を手放した俺にトドメを刺そうと武王がもう片方の拳を振りかぶる。武王はこの時、油断していた。刀を手放した剣士など怖くない。
その驕りが動きを一瞬鈍らせていた。
「それはこっちの台詞だー『心情創造者』ッ!」
武王は無意識のうちに、ユウマのことを剣士だと決めつけていた。刀以外に武器はないと思っていたーそれ故に武王は致命的な過ちを犯す。
スキルを発動させ、俺は小さなナイフ(税込362円)を生成する。そして、既に負傷している肩を狙って不可視の斬撃を放つ。
その斬撃は隙だらけの武王を捉える。
ブシュッー
武王の肩から鮮血が滝のように噴き出す。己の肩が真紅に染まる様子を見て、武王は自身の負けを悟る。
初めての敗北は彼にとって、もはや清々しい物であった。
「くっ、一本取られた……どうやら俺の負けのよう……だー」
そう言い残すと、武王は力無く地面に倒れた。武王の肉体は壮絶な戦いからか、蒸気を纏っていた。
それほどまでに紙一重な戦い。
『しょ、勝者!ユウマァ!!!』
実況がそう宣言すると、会場が爆発する。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
「すごいぞぉ!!」
歓声が会場を埋め尽した。
十五歳の頃大会に初出場ながら優勝。フラッシュ相手に戦闘時間僅か三十秒でのKO勝ちをして、圧勝した逸話は大会屈指の一戦として語り継がれている。
その翌年も出場、そして圧勝。同時にダンジョンにも進出し、初挑戦ながらもダンジョン制覇目前まで辿り着いた。
そんな圧倒的な力を見せつけ続けた後、いつしかついたあだ名こそが『武王』。
だがそんな圧倒的な武王は常に飢えていた。自分と対等に渡り合える存在を欲していた。
そしてついに武王は見つけた。自分と対等もしくはそれ以上の存在に。
「この姿を見せるのは、お前が二人目だ。」
剛化。武王最大の奥義。圧縮された筋肉を解放することで武王の体は、兵器と化す。並の武器やら魔法では武王の体を傷つけることは不可能。
まさに難攻不落の要塞。
「なんだ、筋肉が増えただけじゃないか。」
「フッ、痩せ我慢もいい加減にしたらどうだ?」
「生憎子供が見てるんでね。」
武王がメイスを振りかぶる。武王の『剛化』によって強化されるのは硬度だけではない。速度、パワーなど様々なステータスが軒並み強化される。
更に速くなった武王の攻撃を必死で受け流す。刀がメイスと接触するたび、青い火花が散る。
くっ、痛ぇ。メイスの力に徐々に押されている。手も痺れてきたし、一度距離を取らないと。
一度連撃の間を見て距離を取る。メイスの射程圏内から外れたはずーかと思いきや。武王の腕が伸縮し、俺の腹に直撃した。
流石のクリーンヒットに蹲ってしまう。
「おっと?これで終わりか?」
「な訳あるか……」
腹を抱えながら、やっとの思いで立ち上がる。しかし今なぜ攻撃が俺に届いた?十分な距離をとったはずなんだが。
「なぜ当たった、と言いたげな顔だな。」
「んっ……なんで当たったんだ?」
「この腕を見れば分かるだろ?」
武王の腕を凝視する。ん?なんか伸びてないか?
「勘の悪い野郎だな。外したんだよ、わざと。」
「何を?」
武王が本当にそこまでいわせる気かと言わんばかりの素振りを見せる。呆れられたみたいだな。
「肩をわざと脱臼させて距離を伸ばしたんだよ。」
げっ、肩をわざと外した?そんなことしたら威力が出ないだろ。
『おい馬鹿者。お主はどこまで阿呆なんだ。』
神威からも喝が飛んでくる。そんなこと言われても、戦闘なんて転移するまでまともにしたことないんですよね。
『まあいい。あいつは今剛化してるだろ?剛化の影響で肩を外しても威力が落ちないのだよ。』
なるほど、ようやく分かったよ。で、これにどうやったら勝てるの?
さっきまでは見栄張って豪語してたけど、本当は緊張やら不安でちびりそうなんだよな。
『まあ案ずるな。我に策がある。とりあえず刀を握れ。』
俺は神威に言われるがまま刀を握る。で?次はどうすればいいのかな。
『じゃあ、突っ込め。』
はっ?
『突っ込め。』
意味分かんねぇ。でも俺に策がある訳でもないし、騙されたと思って乗ってやるよ!俺は全速力で武王へと突っ込む。
『じゃあ次は刀を鞘にしまえ。』
え?
『いいから。』
くそっ、失敗したら恨むぞ!刀を鞘へと仕舞う。
『俺が合図したら刀を鞘から出せ。』
合図って、いつ!
『いいから突っ込め!』
こんな念話をしてる間も、武王との距離は着実に縮まっている。もう二、三メートルしか離れてない。いよいよメイスの射程圏内に入る。
もうどうすればいいの!
武王はメイスを振りかぶる。万事休すかぁ……
『今だ!飛べ!』
「くそっ!」
俺は地面を蹴り、宙に浮く。武王のメイスが俺のすぐ下の空気を切り裂く。
『ここだ!鞘から出せ!』
鞘から刀を勢いよく出すと、見えない斬撃が鎧もろとも武王の体を切り裂く。
「ぐっ!」
武王の口から苦しそうな吐息が漏れる。予想外のダメージに怯んだ武王は一度メイスを振って牽制を行う。
「やるじゃないか!」
武王が愉しそうに叫ぶ。ついに現れた好敵手に興奮している。
てか、一体どうやって『剛化』したあいつにダメージを与えたんだ?
『俺の不可視の斬撃の威力は何に影響されると思う?』
そりゃ溜めの時間じゃないの?
『大正解だ。じゃあ一番早い斬撃を放てるのは?』
抜刀時ってことか?
『その通り。あの鞘の中で威力を溜めて、最速の不可視の斬撃を放ったんだ。』
じゃあわざわざ仁王立ちして斬撃を溜める必要は?
『ない。』
…………
『ほら、追撃だ。戦闘に集中しろ!』
はいはい!いまいち状況を理解していない武王を仕留めに攻める。再び鞘に刀をしまい、威力を溜める。
「負けてたまるかぁ!」
武王も割り切って攻めへと切り替える。
いよいよ武王が斬撃の射程圏内に入った。ついに抜刀をしようとしたその瞬間ー
ドガァ。
武王のメイスが俺の顔に直撃した。
くそっ、意識が朦朧とする。どうにか致命傷は避けられたけど、ダメージは依然デカい。どうやら、武王はメイスを俺に投げつけたみたいだ。
まさに捨て身の攻撃。
その攻撃が功を成し、互いに失神一歩前というところ。お互い、次の衝突で全てが決まると理解していた。
「さて、そろそろフィナーレかな。」
「うむ。お前と戦えたこと、誠に光栄だった。」
俺は刀、武王は拳を構える。メイスを捨てたことによって身軽になった武王のスピードは最高潮を迎えていた。
一方で俺は満身創痍ながらも、一撃分の余力を残していた。どちらが勝ってもおかしくない勝負。
刀を鞘に仕舞い、俺は蛇行しながら武王の元へと向かう。武王はカウンター狙いか、不動だ。
ついにお互いがお互いの射程距離に入った。俺は刀を強く握り、可能な限りの速度で抜刀する。そして同時に武王も拳を握りしめ、腕を大きく振る。
ついに俺は刀を抜いたがー不可視の斬撃は放たれなかった。呆気に取られた武王の拳を刀で受け流す。
その衝突の威力で刀が吹き飛ぶ。
「もらった!」
刀を手放した俺にトドメを刺そうと武王がもう片方の拳を振りかぶる。武王はこの時、油断していた。刀を手放した剣士など怖くない。
その驕りが動きを一瞬鈍らせていた。
「それはこっちの台詞だー『心情創造者』ッ!」
武王は無意識のうちに、ユウマのことを剣士だと決めつけていた。刀以外に武器はないと思っていたーそれ故に武王は致命的な過ちを犯す。
スキルを発動させ、俺は小さなナイフ(税込362円)を生成する。そして、既に負傷している肩を狙って不可視の斬撃を放つ。
その斬撃は隙だらけの武王を捉える。
ブシュッー
武王の肩から鮮血が滝のように噴き出す。己の肩が真紅に染まる様子を見て、武王は自身の負けを悟る。
初めての敗北は彼にとって、もはや清々しい物であった。
「くっ、一本取られた……どうやら俺の負けのよう……だー」
そう言い残すと、武王は力無く地面に倒れた。武王の肉体は壮絶な戦いからか、蒸気を纏っていた。
それほどまでに紙一重な戦い。
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