イクメンパパの異世界冒険譚〜異世界で育児は無理がある

或真

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第一章

決勝戦

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「ルーキーやるじゃねぇか!」
「見直したぜ!」

 観客席の方から俺を讃える声が止まない。本当なら嬉しいのだが、残念ながら身体中が痛過ぎて喜んでいられない状況なんだよな。

 戦闘中はアドレナリンのせいか、あまり痛みを感じなかったけど、いざ戦闘が終わると急に痛みが襲ってきた。骨十本くらいいかれてる気がするな。

 こんな傷で次戦に挑むなんて自殺行為だ。確か次戦も優勝経験者だったし、そう簡単には行かなさそうだな。

 さて、目標だったベスト3入りも叶ったし、辞退してもいいんだけど……

『ユウマッ!ユウマッ!ユウマッ!ユウマッ!』

 こんな大歓声の中辞退したら、アストレア王国の全国民を敵に回す気がする。雰囲気的に、辞退は許されない。

 とりあえず、控室に戻って身体を癒さないと。次の試合まですぐだし、出来るだけ身体と頭の疲れを取りたい。

 俺は歩きながらスタッフに貰ったポーションを飲み干す。すると、傷はみるみる塞がっていき、痛みも消えていった。

 よし、これなら戦えるな。控室に戻ると、そこにはバンさんとれいちゃんが待ち構えていた。

「ユウマ様、今の戦い、すごかったです!」

「あぅあ!!」

「れいちゃんもずっと大声で応援していましたよ。」

「ありがとうございます。でもまだ一戦残ってるので。」

「いい志ですな!この様子なら優勝も夢じゃないですよ!」

「そうだといいですね。」

 他愛のない会話をしながら、俺は『スライムのムニムニ』をインベントリーから取り出して食べる。うん、うまいな。やっぱり糖分は頭の疲れを癒してくれる。

「あぅー」

 おっと、れいちゃんが物欲しそうにこちらを見つめてる。

「あのー」

 バンさんまでか。まあ別に数がない訳でもないし、おやつはみんなで食べるとより美味しくなるって言うもんな。二人にも振る舞ってあげよう。

 インベントリーから更に二皿取り出し、『スライムのムニムニ』を載せていく。

「バンさんもお腹が空いてるでしょうし、どうぞ」

 そう言うと、二人は目にも留まらぬ速さで皿を平らげていく。その食べ様はまさに獣。相当お腹が空いていたようだ。

「れいちゃん、そんなにバクバク食べると喉を詰まらせるよ?」

「あぅあぅ。」

 いやいや、分かったと言いながらも全然ペース下げてないのよね。

「もぅー」

「ハハッ、れいちゃんは大食いですね。」

「本当そうなんですよー」

 呆れながらも、なぜか肩の荷が降りた気がする。さっきまで抱えていた腹が痛くなるほどの憂鬱は消えていた。

 まず今は、目の前の相手を倒したい。かつてないほど自分は集中していた。

「いい顔になってますね……」

「え、そうですか?」

「そうですよ。集中力がこちらにまで伝わってきますよ。」

「ならいいんですけど。」

「あぅあぅ!」

「ハハッ、れいちゃんも同意見のようですね。」

「じゃあ、俺そろそろ行ってきます。」

「ユウマ様、勝ってくださいよ?」
「あぅ!」

「任せてください!」

 俺はれいちゃんとバンさんに背中を見守られながら、会場に向かう。確か決勝の相手はオーウェンだっけ?ダイヤ冒険者っていう、俺の先輩に当たる人か。

 通算依頼達成数一位らしいし、相当できる相手なのは間違いない。だから、勝てる確率は高くない。でも、戦う前から諦めていたら、勝てるものも勝てなくなる。

「君がユウマかな?」

 俺が会場の入り口で突っ立っていると、後ろから声をかけられた。振り返ると、そこにはガタイのいい四十代半ばの男が立っていた。額の大きな引っ掻き傷が印象的だ。

「そうですけど、もしかしてオーウェンさんですか?」

「ああ、対戦相手のな。よろしく。」

「こちらこそお願いします。」
 軽く握手を交わし、俺たちは会場の中へと歩を進めた。

 会場には大きな歓声が響く中、俺とオーウェンさんは用意されたステージに上がる。そして、中央で向かい合った。

「お互いベストを尽くそうじゃないか。」

「そうですね。負けませんよ?」

「ハハッ、言ってくれるじゃないか!」

 俺の煽りにも余裕で返してくるあたり、さすがダイヤ冒険者と言ったところか。でもその余裕もすぐに無くしてやるよ。

『さて!いよいよ武闘大会も最終戦!やはり優勝候補同士の戦い!一方は不動のダイヤ冒険者、オーウェン!そしてもう一方は期待の新星!ユウマ!ついに今、王国最強の戦士が決まるっ!!』

 司会者の実況で、会場は最高潮に達した。

 さて、オーウェンさんをどうやって倒そうか?普通に考えれば、遠距離で戦うのが最善だろうけど、魔法禁止だし。だからといって俺のような駆け出しが接近戦に持ち込んだところで簡単に負けてしまうだけだろうからなぁ……

「なぁ、ユウマ」

「はい」

「お前すごいよ。ルーキーなのにダンジョンを突破しちゃうし、武王を倒しちゃうし。」

「ありがとうございます?」

「俺なんて、もう40だし、息子もいるし、体は衰えてくし、いいことなんてないのに……」

「オーウェンさん?」

「なのに、俺はダイヤ冒険者だから常に強く在らないといけない!アンフェアじゃないか?」

「オーウェンさん、どういうー」

「だから結局こうするしかないんだよ。」

 オーウェンさんはそう吐き捨てると、茶色い種のような物を飲み込んだ。

「一体なにをー」

「ま、見てろって。」

 オーウェンさんの体は徐々に変化していった。背は伸び、筋肉も膨らんでいく。まるで武王の『剛化』のようだが、決定的に違う点があった。

 オーウェンの肌は紫色に変色し、頭部には立派な角が生えていた。

 その姿はまるで……

「悪魔……」

キャー!!

 会場がオーウェンの禍々しいオーラに発狂する。

「さあ、来いよ。ルーキー。」

「ねぇ、司会さん。」

『は、はい……」

「あれって反則ですよね?」

『え、まあ、そ、そうですね……』

「じゃあ、俺も反則していいってことですよね?」

『は、はい!』

 それなら。インベントリーから魔剣ディアボロスを取り出し、妖刀神威と共に構える。

「まさか、魔剣と妖刀の二刀流とはな。」

「そっちが先に反則したんだから文句ないでしょ?」

「ハッ、ならいざ!勝負!」

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