異世界転移した俺の、美味しい異世界生活

yahagi

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カキ氷の屋台、始動

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 俺は残ったチョコレートを湯煎で溶かして、ホットチョコレートにした。
 甘い香りがあたりに広がるが、小さなカップに三人分しかない。

「今日はお試しなので、アラブレヒトと俺と、誰か女性に飲んでみて貰えますか?」

「やったわ!」

「じゃあ、頂くよ。ふむ、凄く甘くて濃厚だ。苦味もあるが、全体的に甘くて美味しいよ」

 アラブレヒトが笑顔で好評してくれた。
 女性従業員もこくりこくりと飲み、顔を輝かせた。

「これ、甘くてとっても美味しいわ。ハヤトは心配そうだけど、自信持って良いわよ」

「ありがとうございます」

 俺も残りのホットチョコレートを飲み、苦くて甘い美味しさを堪能した。
 やっぱりチョコレートは美味いな。
 でも、誰かショコラティエになって、チョコレートを作ってくれないかなぁ。

「チョコレートの職人をショコラティエって呼んでるんだけど、ショコラティエを募集して作って貰うのってアリかな?」

「職人に依頼してもっと美味しさを追求したいんだね。勿論アリだと思うよ。ただし、初めはハヤトが教える必要があるけどね」

「そうか……! じゃあ、もう少し試作を重ねてから、職人を募集するよ。それと、どこで作って貰ったらいいと思う?」

「商品を作り出して、お店にするのが手っ取り早いね。俺はナッツチョコレートもホットチョコレートも商品になると思うよ?」

「なる程。持ち帰り用と店内用で分ければいいか。パンケーキのチョコレートがけとか、色々作れば良さそうだな」

「ハヤト? 勿論試作は食べさせてくれるんだろう?」

「食べてくれるなら喜んで。ただ、チョコレートを練る魔道具をサンラクさんに依頼するから、出来上がり次第になるけど、いい?」

「いいとも。明日の予定はどうなってるんだい?」

「朝はカキ氷の屋台を始動させてくる。あと、午後に釣りギルドから魚が届くんだ。それで夕食を作らせてくれないか?」

「カキ氷の屋台がとうとう始まるんだね。夕食はお願いするよ。おやつは作れそうかい?」

「じゃあ、ドーナツを作ろうか。あと、鐘5つの後デートに出かけるから」

「わかったよ。じゃあ、楽しみにしているね」

 アラブレヒトはキラキラとした目で俺を見ていた。
 チョコレートがけのドーナツも食べたいけど、ぐっと我慢だ。
 もっと滑らかなチョコレートが作れる筈だ。
 サンラクさんに期待しよう。

 俺は自室に下がり、シャワーを浴びてベッドに入った。
 隣にリカルドがいないことが寂しい。
 あの引き締まった身体に抱き締められたい。
 俺はそんな事を考えながら、眠りに落ちていった。




 早朝、キッチンはヤコブ達が使っているので、支店前に集合して貰った。
 エリカとイリル、カトリーヌさんが挨拶を済ませるのを待って、話し出す。

「じゃあ、今日からカキ氷の屋台を始めて貰います。初めは作って見せるので、覚えて下さい」

「わかったわ!」

「頑張りますぅ~」

「私は氷を作って溶けたらまた作ればいいのね?」

「はい。カキ氷は氷を削って作るので、作ってなくなった時も補充お願いします」

「わかったわ」

「じゃあ、エリカとイリルでこの屋台押していって。大通り沿いの良さそうな場所に止めてくれ」

「はーい!」

 二人が屋台を押す後ろで、カトリーヌさんと二人で歩く。
 カトリーヌさんがぽつりと漏らした。

「……日差しが強いわね。今日も暑くなりそう」

「そうですね。絶好のカキ氷日和ですよ」

 俺とカトリーヌさんはにっこり笑い合った。

 やがて屋台が止まった。
 いい場所を取れたようである。

「じゃあ、シロップの作り方を教えるぞ。どっちが作るんだ?」

「ええと、私です。調理担当になりました」

「じゃあ、イリル。よく見ていてくれ。まずは砂糖に水をこれくらい加える。そして火をつけて弱火で煮詰める」

「はい」

「これくらいに煮詰まったら、葡萄を絞って、絞り汁を入れる。大体これくらいだ。そして食紅を入れて混ぜ合わせる。うん、味を見てみよう」

「甘いですね。美味しいです」

「ちょっと濃いめに作るのがポイントだ。さて、このシロップは冷やしておく」

「はい」

「カトリーヌさん、氷をここにお願いします」

「任せて。アイス・エイジ!」

 カトリーヌさん作成の氷はちょうど良いサイズだった。

「ばっちりです。今後も宜しくお願いします」

「いいわ。任せておいて」

「カキ氷の作り方いくぞ。この魔道具を使う。ボタンを押して、山盛り盛っていく。うん、これぐらいだ。そしてシロップをたっぷりかける」

 出来上がったものを食べてみる。
 うん、美味い。

「さあ、作ってみてくれ」

「はいっ」

 イリルは綺麗に氷を盛り、シロップをかけた。
 うん、上出来だ。

「合格。それはイリルが食べていいぞ」

「頂きますっ」

「あ、急いで食べると頭がキーンとするから注意な。エリカも覚えておいて」

「はーい!」

 そこにチラチラ見ていた男性が声をかけてきた。

「その白いフワフワのもんはなんだい?」

「これは氷ですよ。氷を削って作ったカキ氷っていう甘いおやつです」

「一ついくらだ?」

「銅貨4枚です」

「やっぱりたけえなぁ。けど、気になっちまったからしょうがねえ。一つくんな!」

「毎度あり。今お作りしますのでお待ちください」

 エリカがお会計をしている間にイリルがカキ氷を作っていく。
 うん、良いコンビネーションだ。

「お待たせしました」

「おう! こりゃあ……うめえじゃねえか。甘くて冷たくって、葡萄が爽やかだ」

 男性がにこやかに食べている横から、女性二人が顔を出す。

「それ、二つ頂戴」

「ありがとうございます!」

 エリカがお会計をし、イリルが作っていく。
 うん、大丈夫そうだな。

「俺は商業ギルドで場所代払ってくるね。頑張って」

 俺は商業ギルドへ行って、場所代を1ヶ月分支払った。
 戻ってみると、二人がうまくお客さんをさばいている。

「カトリーヌさん、氷お願いします!」

「はぁい。アイス・エイジ!」

「ありがとうございます。お待たせしました」

 うん、連携も上手くいってる。
 俺は邪魔にならない場所でしばらく眺めていたが、問題ないようなのでカトリーヌさんに挨拶して、支店に戻った。

「あら、ハヤト。もうすぐ昼食なんだけど、食べていく?」

「食べます!」

「夜は魚料理を作ってくれるんでしょ? 楽しみにしているから」

「はい。頑張ります」

 居間でお茶を飲んでいると、アラブレヒトがやってきた。

「お疲れ様、ハヤト。カキ氷、上手くいったんだね」

「うん。何とかね。午後にもう一度様子を見てくるよ」

「日差しが強いから、熱中症に気を付けてね」

「うん。ありがとう」

 アラブレヒトと会話をしているうちに、皆が揃っていた。

「お待ちどうさま。鳥肉とナスの炒め物と白米にお味噌汁よ」

「うわあ、美味しそう」

 まず、アラブレヒトから食べ始めた。

「うん、美味しいよ。鳥肉があっさりしてて食べやすい。ナスと合うね」

 俺も配膳されたのでフォークで食べる。

「美味しいです。鳥肉が柔らかくて、旬のナスとぴったりですね」

「自分で作ったけど美味しいわ。ご飯と味噌汁の作り方はハヤトから教わったものよ。上達したんだから」

「はい。ご飯もじゃがいもの味噌汁も美味しいです」

 皆も口々に美味いと言いながら食べている。
 俺は食べ終わったので食器を下げ、屋台を見に行った。
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