異世界転移した俺の、美味しい異世界生活

yahagi

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お揚げのうどんとあんこう鍋

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「揚げ物屋……ですか……。聞いたことがありません」

「うん、今までにないと思うよ。今、良ければトンカツを揚げてくるけど、食べられるかな?」

 男性二人は問題なかったので採用した。
 二人とも食べられるそうなので、二枚トンカツを揚げる。
 ザクザクっと切って、ソースをかけて、二人にフォークと共に差し出した。

「これはグレイトボアの肉を揚げたトンカツ。これの他にも数種類、揚げ物を置いて貰う。店は持ち帰り専門だ。揚げたての注文も受ける」

「実に美味しいですね。これは冷えても美味しいんですか?」

「一応食べられるけれど、玉ねぎを炒めて、カツをあっためて、出汁を入れて卵を流し込む。それで煮て食べるともっと美味しい」

「へええ。やっぱり揚げたてが美味しいんですね」

「3軒隣のパン屋が毎朝4種類の揚げ物を50個ずつ買ってくれる。だから休まず営業して欲しい。休みは週休二日制だから、交互に休んで貰う」

「わかりました。仕事を覚えたら交互に休みます」

「商品は揚げ物4種類だけですか?」

「いや、豆腐っていう大豆から作る食べ物を作って貰う。それを原料にした油揚げ、がんもどきも作って貰う。煮ても焼いても美味しいし、栄養もたっぷりだ」

「わかりました。頑張って覚えます」

「店は明後日出来上がるから、この住所に三日後の早朝に来て欲しい」

 二人は快諾して帰って行った。

 俺は魔道具屋サンラクに来ていた。

「サンラクさん~。居ませんか~?」

「なんじゃ、ハヤトか。何か入り用か?」

「この間作って貰ったミキサーを、もう一台作って欲しくて、来ました。お店で必要になりまして……」

「わかった。ちゃちゃっと作るから茶を飲んで待っていろ」

 俺はお茶を出して貰い、30分ほどゆっくり過ごした。

「よし、完成じゃ。これを持って行け」

「ありがとうございました。これ、お代です」

 俺は真新しいミキサーを手に、支店に戻った。

 俺は浸けておいた大豆で豆腐を作った。
 そして、水切りする。

 今日の昼食はペペロンチーノだった。
 とっても美味しかった。

「乾燥麺が出来てとっても助かってるわ。社長、一般家庭には広まってないわよね?」

「うん。まだ3、4店舗で扱い始めたばっかりだからね。もうちょっと一般的になれば売れそうなんだけど」

「いっそ、乾燥麺屋を作っちゃったらどう? 今はアラブレヒト商会が仲介しているでしょう」

「考えておくよ。ごちそうさま。今日も美味しかったよ、メリッサ」

 アラブレヒトは仕事に戻った。
 俺は暇なので、メリッサさんの手伝いをして過ごした。
 鐘2つが鳴った。
 そろそろ豆腐の水切りも良いだろう。
 俺は油を熱し、油揚げを揚げた。

 鍋に出汁を引き、スープを作る。
 もう一つの鍋で、乾燥うどんを茹でる。
 油揚げを出汁でしっかり煮る。
 よし、出来上がりだ。

 丁度鐘3つが鳴ったので、アラブレヒトから配膳していく。
 皆に配膳し、俺も自分の席に着く。

「ああ、お揚げのうどんだね。うん、美味い。このじゅわっと味の染みたお揚げがいいよね」

 アラブレヒトはニコニコしている。

「来月、うどんの屋台をやるんだけどさ。肉うどんを出そうか、お揚げのうどんを出そうか、迷ってるんだよね」

「せっかく店で出すんだから、お揚げのうどんが良いんじゃないか? 凄く美味しいし、お勧めだよ」

「食べて貰えれば、良さが伝わるのよね。じゅわっとしてて、他にない食べ物だから、情報通な冒険者なんか、食べにくるかもしれないわ」

「ありがとう、アラブレヒト、メリッサさん。お揚げのうどんにしてみるよ。そうと決まったら、油揚げをたくさん作らせないとね」

「丁度揚げ物屋があって良かったね。ハヤトは何かと忙しいからさ」

「ありがとう、アラブレヒト。頑張ってみるよ」

 俺はうどんをすすり、ごくりと汁を飲んだ。

 後片付けをして、皿を拭く。
 その後、まず鍋を探したが、見つからない。
 仕方なくメリッサさんに聞いた。

「まずその、鍋を皆で囲むのってしたことないわ。ぐつぐつ煮るなら鍋の下にも火元が欲しいわよね?」

「ガーン。ということは、調理用の鍋を使うしかないか……」

「ふふふ、ウチは大きな商会なのよ。普段使わないような鍋だってあるわ。倉庫に行きましょう」

「えっ、でも、売り物なんですよね?」

「社長ならそのあんこう鍋を食べる為に、売るのを諦めるわ。さあ、この辺よ。あまり売れない鍋が置いてあるわ」

「あっ、この鍋、深さもあるし取っ手もあって、いい感じです。金色の装飾が入ってますけど」

「見つかって良かったわ! 火元は魔道具屋ねえ」

「ありがとうございます、メリッサさん。サンラクさんの所へ行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 俺はメリッサさんに見送られ、魔道具屋サンラクにやってきた。
 店先にいたサンラクさんに歩み寄る。

「サンラクさん、こんにちは」

「おう、ハヤト。何か入り用か?」

 俺は卓上コンロのようなものが欲しい。
 出来ればすぐに欲しいことを伝えた。

「魔石で似たようなもんが作れる。ちょっくら待っていろ。そんなには長持ちしねえが良いか?」

「はい、構いません」

 今日使えればいいしね。
 サンラクさんは20分程で卓上コンロを作成してくれた。

「スイッチはこれだ。消すときはこっち。魔石は一カ月くれえ持つ。これでいいか?」

「炎の強弱はこのレバーですね。完璧です! ありがとうございました。これ、お代です」

 俺は作って貰った卓上コンロを抱えて、支店に戻った。

 まずはあん肝の下処理から行う。
 あん肝は、余分な薄皮と血管がある場合は取り除き、水で洗って汚れを落とす。
 器に酒、水、塩を入れてよく混ぜ、あん肝を加えて5分ほどおく。
 取り出して水気を布で拭き取り、包丁で叩く。
 
 鍋にたっぷりの湯を沸かし、あん肝以外のあんこうをすべて入れる。
 すぐに鍋から取り出し、冷水にとる。
 流水で切り身を洗い、汚れを取り除く。

 あん肝入りのスープを作る。
 フライパンに油を敷き、あん肝を入れ、中火で炒める。
 2~3分炒めて少しあん肝から脂が出てきたら味噌を加えて、さらに炒める。
 あん肝と味噌が全体的に混ざったら酒、みりん、おろし生姜、水を順に加え、その都度混ぜながらスープを作る。

 全体が混ざったらスープを鍋に移す。
 スープが温まってきたら豆腐、白菜、椎茸、長ねぎを加えて煮る。
 火が通ったら水菜を加え、さっと煮る。

「ふう、完成だ。凄く美味しそうだ」

 俺はセットしておいた卓上コンロに火を灯し、鍋を乗せた。
 取り皿と箸、お玉を用意して配膳する。

 丁度鐘5つが鳴った。
 アラブレヒトが二階から降りてきた。

「それがあんこう鍋かい。匂いは凄く良いね」

「今、取り分けるから、食べてみてくれよ。俺の故郷じゃ、高級品だったんだ」

 アラブレヒトは俺から器を受け取り、慎重にスープをすすった。

「これは……すごく美味しいね。濃厚かと思ったらあっさり飲めるね」

「肝と味噌を炒めた特別製のスープだよ。身も美味しいと思うよ」

「うむ……プルプルで美味しい。色んな部位が入っているんだね。どれも美味しいよ」

 アラブレヒトに好評を貰い、俺もスープをごくりと飲む。
 ああ……味わい深いスープだ。
 スーパーであんこう鍋セットしか買ったことないけど、上手くいって良かった。
 身もプリプリで凄く美味しい。
 
 俺は〆にうどんを煮て皆に配膳した。
 みんなぺろりと平らげていた。
 また鍋をやろう。

 楽しい食事が終わり、後片付けを済ませる。
 お皿を拭いた後、自宅に帰った。
 まだ生温い風が全身に纏わりつく。
 夏も終わりだけど、まだまだ暑いな。

 家に入り、ゆっくりとお風呂に浸かった。
 リカルドとお風呂に入りたいなぁ。
 俺は寂しさを持て余しながら、リカルドの道中の無事を祈った。
 お風呂から上がったら、ベッドルームで淫具を使ってすっきり。
 俺はすやすやと眠った。
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