異世界転移した俺の、美味しい異世界生活

yahagi

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栗の渋皮煮とモンブラン

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 昼食はグレイトボアたっぷりの野菜炒めだった。
 とても美味しかった。

 さて、渋皮煮を作るぞ。
 まず、栗の鬼皮を剥く。
 鍋にたっぷりの湯を沸かし、重曹を入れ、10分程茹でる。
 湯を沸かした違う鍋に栗を移し、10分程茹でる。
 アク抜きのため、煮汁が透き通ったワイン色になるまで茹でこぼしを繰り返す。
 
 栗の繊維を取り除き、竹串で掃除する。
 
 鍋に栗を入れ、ひたひたになるくらい水を入れる。
 砂糖の半量を加えて、火にかける。
 煮立ったら残りの砂糖を加え、アクをすくう。
 落とし蓋をして20分程煮る。
 火から外して冷まし、味をなじませる。

「よし、完成だ。これも瓶に入れて……と。ブランデーをちょっと入れよう」

 栗の渋皮煮は仕上がった。
 次は茹で栗。

 栗は洗って鍋に入れ、たっぷりの水を加える。
 塩を加えて溶かし、中火で10分位かけて沸騰させる。
 湯が沸いたら弱火にして、40分程茹でる。
 あら熱を取って出来上がり。
 栗は半分に切ってスプーンで食べて貰う。

 鐘3つが鳴った。
 俺は栗の甘露煮、渋皮煮、茹で栗を配膳した。

「やあ、美味しそうだ。苦労をかけたね、ハヤト」

「なんとか作ってみたよ。右から茹で栗、栗の甘露煮、栗の渋皮煮だ」

「頂きます。……うん、とっても美味しいね。俺は甘露煮が好きだな」

 アラブレヒトは美味しそうに栗の甘露煮を食べている。

「栗の甘露煮、すっごく美味しいわ。スイーツって感じ」

「栗の渋皮煮もブランデーが効いてて洒落てるな。凄く美味しいぜ」

「茹で栗は安心する味だな。すごく美味い」

 俺も茹で栗を食べてみた。
 うん、秋の味覚って感じ!

「アラブレヒト、栗ご飯っていうレシピもあるけど、夜ご飯に作ろうか?」

「是非お願いするよ。栗農家では栗が余るほど収穫できるそうなんだ。保存食もあるにはあるんだが、そんなに美味しくないんだよ」

 栗がそんなに収穫できるなんて、素晴らしい。
 俺は残りの栗を食いながら、栗ご飯のおにぎりをリカルドに食べさせたいな、と考えていた。

 後片付け済ませて、栗を剥く。
 米を研いで、水を浸水させておく。
 皮を剥いた栗は水にさらす。
 ご飯の釜に塩を溶かし入れ、米の上に栗を並べる。
 ご飯を炊いて、出来上がり。

「よし、後は蒸らすだけだ」

 俺は小間物屋へ行って、マフィン型を12個注文した。
 その帰りにチョコレート屋ピスタチオに寄ってジャムチョコレート3種類を買った。

「アレックス、どうだ、エクレアは出来たか」

 料理長兼店長のアレックスは、難しそうな顔でため息をついた。

「今、エクレアの皮で悪戦苦闘中です。柔らかい薄い皮だとパリパリになっちゃって。失敗作、食べます?」

 俺は長細いそれをひょいと食べてみた。
 ほんとだ、パリパリだ。

「これじゃパイに近いな。もっとふわっとした柔らかい生地が良い。頑張ってくれ」

「わかりました……」

 俺はチョコレート屋ピスタチオを後にして、支店に戻った。

 しばらくして、面接希望の男性二名がやってきた。
 問題なかったので採用し、明日の早朝支店に集まるよう言って解散させる。

 よし、明日はおでんの屋台を稼働させるぞ。

 俺は夕食のおかずに生姜焼きを選んだ。
 グレイトボアの肉を切り、玉ねぎを薄切りにする。
 生姜はすりおろしておく。

 鐘5つ。
 夕飯時だ。

 焼きあがった生姜焼きと栗ご飯、味噌汁を配膳する。
 まず、アラブレヒトから口をつけた。

「ハヤト! この栗ご飯、とっても美味しいよ。毎日食べたいくらいだ」

 アラブレヒトはニコニコして栗ご飯を食べた。

「ほくほくしてて、甘くて、ご飯に合うのね。とっても美味しいわ」

「生姜焼きも美味いぜ! 栗ご飯は絶品だなぁ」

「毎日栗ご飯でも良い!」

 皆にも好評だった。
 俺も自分の分をパクパク食べた。
 すっごく美味しい!

「俺も栗ご飯は大好きなんだ。気に入って貰えて良かったよ」

 楽しい夕食は終わり、家に帰る。
 ゆっくり風呂に浸かり、ジャムチョコレートで晩酌した。
 酒精でふわふわした頭でリカルドを想いながら、淫具で三発抜いた。
 リカルドの道中の無事を祈って、ゆっくり眠りに落ちていった。





 翌日の早朝、おでんの店主2名と一緒に、はんぺんや豆腐、がんもどきを買い込んだ。

 商業ギルドへ行き、屋台を借りて場所代を支払った。
 屋台に荷物を置いて、コロコロと転がす。
 良さそうな場所に止めて、焼き豆腐などの下準備から教えた。

「具材は、茹で卵、焼き豆腐、大根、がんもどき、はんぺん。全部一個ずつ汁も入れてくれ」

「わかりやしたっ」

 そこへ、出汁の匂いに惹かれた男性がやってきた。

「兄ちゃん、そりゃあ何だい?」

「へえ。おでんっちゅう煮物でさあ」

「聞いたことねえな。よし、一杯くれ」

「へいっ、銅貨5枚になりやすっ」

「まいどありっ。どうぞ」

「はふはふっ……こりゃあふわっとしててうめえなあ。大根も味が染みてらあ」

 よしよし、お客さんの反応も良いぞ。

「こっちに二杯くれ」

「お兄さん、1杯頂戴」

「はい、二杯のお兄さんは銀貨1枚、一杯のお客さんは銅貨5枚だよっ」

「まいどありっ。またどうぞ!」

 俺は空いた隙に二人に話し掛けた。

「今日は具材がなくなるまで営業してよ。明日からは3倍仕込んでね。売上は月に一度、支店に持ってきて。屋台は家に持ち帰る事」

「はいっ、わかりやした!」

「あと、暇なときにおでんの試食もしておいて。じゃあ、よろしくね」

 俺は二人に後を託して、小間物屋でマフィンの型を受け取り、支店に戻った。

 さて、モンブランの土台作りだ。
 モンブランの土台は本当はタルトなんだけど、難しそうなのでマフィンにする。

 器に小麦粉、砂糖、溶かしバター、牛乳を全て入れて混ぜ、マフィン型に流し入れて、180℃に予熱したオーブンで10~15分焼いて冷ます。

 渋皮煮を器に入れてつぶし、鍋に入れて牛乳、砂糖を加えて混ぜ、中火で熱して小さな泡が立ってきたら混ぜながら弱火で5~8分加熱し、火からおろして粗熱をとり、ラム酒を加えて混ぜる。

 ミキサーに栗のペーストを入れてなめらかなクリーム状になるまで2分ほど撹拌し、冷蔵室で20分ほど冷やす。

 ボウルの底に氷をあて、生クリーム、砂糖を入れてピンとツノが立つまで泡立てる。
 
 渋皮煮とはちみつ、ラム酒を混ぜて置いておく。
 その汁をマフィンの上に塗り、生クリームを絞り、マロンクリームを丸く絞って中央に渋皮煮を乗せる。

「よし、完成だ。全員分作るぞ」

 俺は全員分作成して冷蔵室に置いた。

 昼食は俺の希望でグレイトボアの角煮と、とろろご飯、味噌汁。

「へえ、とろろご飯って美味しいんだね」

 アラブレヒトがとろろご飯をかっこむ。

「俺はすごく好きなんだよ。このとろろがたまらないね!」

 俺もとろろご飯をかっこんだ。
 凄く美味しかった。

 昼食後は、メリッサさんの手伝いをして過ごした。
 俺、やることないな。
 レストランに栗のレシピを追加しようかな。

 メリッサさんがメニューの草案を書いてくれた。
 うん、季節限定の文字が大きくていいね。
 あっ、ピョートルを見に行こう。
 レストランで食事をしたとき、リカルドがピョートルって魚が秋に出てくるって教えてくれたんだよね。

 俺は早速魚屋を見に行った。

「おっちゃん、ピョートル入ってるかい」

「おうよ。脂の乗ったうめえピョートルがたっぷりだ。何匹入り用だい?」

「24匹おくれよ。ピョートルってどうやって食べてる?」

「香辛料と一緒に炒めて食べるのが一般的だな」

「丸ごと塩焼きにして食べたりしないの?」

「俺ら漁師はそうやって食べたりもするぜ。美味いんだが、客うけはイマイチだ」

「そうなんだ……ありがとう、おっちゃん」

 俺はピョートルを受け取って、支店に戻った。

「メリッサさん、今夜のメニューはピョートルの塩焼きで良い?」

「ええ、いいわよ。香辛料と焼いたことしかないわ」

 香辛料か……。
 実はこの世界、香辛料は豊富にある。
 呼び方は似たり寄ったりだが、ターメリックがあるのは、もう知っている。
 俺は暇だし、とうとう着手するか。カレー。
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