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閑話休題
閑話【3】ミスターX―神の降臨
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信者が彼に寄付してきた広大な土地は、繁華街から数十キロの山林だった。
別荘の横に大きな礼拝堂を建てて、月に一度、ミスターXが『宇宙の親友』から受け取ったメッセージを信者に伝えている。
『クルーア=トルース星人教団』代表の彼は、地球代表の教祖様と呼ばれ、信者に崇められていた。
コンコンコン。ガチャリ。
「教祖さま。先日の物件、無事に名義変更が完了いたしました」
「中小企業の社長だったか。男はどうしている?」
「礼拝堂で入信の儀式を待っています」
それはつまり、財産は全て教団へお布施として捧げられたのを意味する。
「よくやった。特別に褒美を与える」
「ありがとうございます」
彼がベルベットの法衣から手を伸ばすと、秘書は嬉々として跪いた。ストッキングが伝染しようが、お構いなし。むっちりとしたタイトスカートが、教祖と呼ばれし男の股間を刺激する。褒美だなんて、嘘も方便。教祖であるが故の利点に他ならない。彼が法衣を捲り上げると、金髪美女が顔を寄せてスラックスのジッパーを下げた。真っ赤なマニキュアの施された指がエレクトした彼のペニスを外気に晒し、女は躊躇うことなく咥えた。ふたつの器官は、まるで剣と鞘のように収まった。充血した肉棒が女の粘膜に包まれ、教祖の仮面を剥いでいく。
「ああ、アリー。その舌で私を喜ばせよ」
返事の代わりに、有能な舌がチロチロと動き始める。彼は女の喉奥へ亀頭を突っ込んで腰を振りまくりたい衝動を抑えた。マスカラで縁取られた碧眼は潤んで、美酒を味わうビーナスよりも妖艶だ。地方競馬場で淡々と馬券を命中させていた彼が教祖に変身したとは、誰も思うまい。
教祖の本名を知る人間は、この教団に誰もいない――。
ミスターXはある日突然、東北の街に降臨して人々を魅了した。迷える子羊に、年齢や年収、性別は関係ない。人々は彼に救いを求め、彼は道しるべとなった。無論、代償は各々が築き上げた全財産。楽園の門をくぐりたければ、相応のお布施を奉納するのは当然だ。
ミスターXの容姿は次期総裁と噂される某男性に面影が似ている。カリスマ性を称えられる三世議員を真似た話術と、『誠実スマイル』で老若男女を魅了した。
『誠実スマイル』とは何ぞや。全くもって馬鹿らしいと、ミスターXは心の中で毒つく。この世に愛だの、誠実だのはドラマの中にしか存在しない。彼は嫌というほど知らされた。彼は舌先から湧き上がる苦い唾液を飲み込んだ。
過去はどうでも良い。人生は短いのだ。迷える子羊をハーメルンの笛吹き男よろしく聖堂へ集め、彼を称える言葉や眼差しを浴びる時間だ――。
彼の持つ『ハーメルンの笛』は歓楽街の裏路地にあるバーで入手した。
「事業が失敗してね。コレは不要になった。あんたが言い値で買ってくれるなんて、有り難い」
「ネットで見つけた時は詐欺かと思いましたよ」
「はははは。詐欺はコレを使わない事には始まらないだろ」
「確かに」
元社長から受け取った商品を確認すると、スマホで指定された口座へ入金を済ませた。
己のスマホで金のなる木が開花したのを見届け、売り主はグラスのウイスキーを満足げに飲み干した……。
テクノロジーの発展は、ミスターXの野望を実現するのに大いに役立った。百年前なら、布教活動で足がマメだらけになっていただろう。
現代はパソコンとスマホ、そして彼にかしずく信者がいれば、うさん臭い宗教だって真の教えになる。彼は電波越しに笛を吹いて、信者を増やした。
ジュポジュポとペニスが抽送される音が部屋に響いた。
渡り廊下の向こうから響くのは、歌手の夢が挫折した女の賛美歌。クルーア=トルース星人が目印にするのは、澄んだ歌声なのだ。
「うう……もうすぐでるぞ」
ドクドクドクドクッ。
赤い唇の中へ、ドロリとした精液をぶちまけた。この女は俺が何をしても喜びやがる。心酔も度が過ぎて怖いくらいだ、と教祖はほくそ笑む。
「教祖様、ありがとうございます……」
うっとりしながら精を飲み干した秘書が立ち上がった。
「さあ、我々の友人を空から迎えなくては」
「はい」
秘書を従えて、彼は執務室の扉を勢いよく開いた。
今宵の泉岳は雲ひとつない快晴。
クルーア=トルース星人はカシオペアの方角から、我々の元へ会いに来るだろう――。
別荘の横に大きな礼拝堂を建てて、月に一度、ミスターXが『宇宙の親友』から受け取ったメッセージを信者に伝えている。
『クルーア=トルース星人教団』代表の彼は、地球代表の教祖様と呼ばれ、信者に崇められていた。
コンコンコン。ガチャリ。
「教祖さま。先日の物件、無事に名義変更が完了いたしました」
「中小企業の社長だったか。男はどうしている?」
「礼拝堂で入信の儀式を待っています」
それはつまり、財産は全て教団へお布施として捧げられたのを意味する。
「よくやった。特別に褒美を与える」
「ありがとうございます」
彼がベルベットの法衣から手を伸ばすと、秘書は嬉々として跪いた。ストッキングが伝染しようが、お構いなし。むっちりとしたタイトスカートが、教祖と呼ばれし男の股間を刺激する。褒美だなんて、嘘も方便。教祖であるが故の利点に他ならない。彼が法衣を捲り上げると、金髪美女が顔を寄せてスラックスのジッパーを下げた。真っ赤なマニキュアの施された指がエレクトした彼のペニスを外気に晒し、女は躊躇うことなく咥えた。ふたつの器官は、まるで剣と鞘のように収まった。充血した肉棒が女の粘膜に包まれ、教祖の仮面を剥いでいく。
「ああ、アリー。その舌で私を喜ばせよ」
返事の代わりに、有能な舌がチロチロと動き始める。彼は女の喉奥へ亀頭を突っ込んで腰を振りまくりたい衝動を抑えた。マスカラで縁取られた碧眼は潤んで、美酒を味わうビーナスよりも妖艶だ。地方競馬場で淡々と馬券を命中させていた彼が教祖に変身したとは、誰も思うまい。
教祖の本名を知る人間は、この教団に誰もいない――。
ミスターXはある日突然、東北の街に降臨して人々を魅了した。迷える子羊に、年齢や年収、性別は関係ない。人々は彼に救いを求め、彼は道しるべとなった。無論、代償は各々が築き上げた全財産。楽園の門をくぐりたければ、相応のお布施を奉納するのは当然だ。
ミスターXの容姿は次期総裁と噂される某男性に面影が似ている。カリスマ性を称えられる三世議員を真似た話術と、『誠実スマイル』で老若男女を魅了した。
『誠実スマイル』とは何ぞや。全くもって馬鹿らしいと、ミスターXは心の中で毒つく。この世に愛だの、誠実だのはドラマの中にしか存在しない。彼は嫌というほど知らされた。彼は舌先から湧き上がる苦い唾液を飲み込んだ。
過去はどうでも良い。人生は短いのだ。迷える子羊をハーメルンの笛吹き男よろしく聖堂へ集め、彼を称える言葉や眼差しを浴びる時間だ――。
彼の持つ『ハーメルンの笛』は歓楽街の裏路地にあるバーで入手した。
「事業が失敗してね。コレは不要になった。あんたが言い値で買ってくれるなんて、有り難い」
「ネットで見つけた時は詐欺かと思いましたよ」
「はははは。詐欺はコレを使わない事には始まらないだろ」
「確かに」
元社長から受け取った商品を確認すると、スマホで指定された口座へ入金を済ませた。
己のスマホで金のなる木が開花したのを見届け、売り主はグラスのウイスキーを満足げに飲み干した……。
テクノロジーの発展は、ミスターXの野望を実現するのに大いに役立った。百年前なら、布教活動で足がマメだらけになっていただろう。
現代はパソコンとスマホ、そして彼にかしずく信者がいれば、うさん臭い宗教だって真の教えになる。彼は電波越しに笛を吹いて、信者を増やした。
ジュポジュポとペニスが抽送される音が部屋に響いた。
渡り廊下の向こうから響くのは、歌手の夢が挫折した女の賛美歌。クルーア=トルース星人が目印にするのは、澄んだ歌声なのだ。
「うう……もうすぐでるぞ」
ドクドクドクドクッ。
赤い唇の中へ、ドロリとした精液をぶちまけた。この女は俺が何をしても喜びやがる。心酔も度が過ぎて怖いくらいだ、と教祖はほくそ笑む。
「教祖様、ありがとうございます……」
うっとりしながら精を飲み干した秘書が立ち上がった。
「さあ、我々の友人を空から迎えなくては」
「はい」
秘書を従えて、彼は執務室の扉を勢いよく開いた。
今宵の泉岳は雲ひとつない快晴。
クルーア=トルース星人はカシオペアの方角から、我々の元へ会いに来るだろう――。
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