無題

しょうちゃましん

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ロボットのように終わる毎日

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この歳になって、自分の人生について考えることが多くなってきた。

佐藤勝利35歳、独身

自分の夢は世界中の人々を笑顔にすること。

なーんて事を考えて、コンベアから流れるパンの切れ目に一個ずつウィンナーを入れるこれが自分の仕事だ。
傍から見たら、人生終わっているとか負け組だとかよく言われる
年収は350万いくかいかないか、そんな俺にも夢を追いかけ、汗水ながして働いてる時期もありました。

どこで人生の進む道を間違ってしまったのか

「おい!勝利!ウィンナー1個見逃してるぞ、ボケっとしてないでしっかり仕事しろよ!」
と声をかけてきたのは工場長だ。

「すみません、気合入れてウィンナー入れまーす」

ふと名前を呼ばれたときに自分の母がつけてくれた名前の由来を思い出した。
勝利と言う名前は父と母がどんな事にも負けず勝ち組になって欲しいと願いつけたらしいが名前負けもはだはだしいと自分が少し恥ずかしくなる。

ジー!と大きい音が工場の中に響き始め多くの人が大きく安堵の息を出した。
休憩の時間になったのだ、この仕事は朝7時に始まり、ぶっとうしでお昼前まで休憩がない。ただでさえパンの切れ目にウィンナーを入れるという単純作業みんな頭がおかしいのか、慣れているのか本当にすごいと思う。

「勝利さんを休憩ですよ、今日は皆さんにお菓子を持ってきたんです」
と声をかけてくれたのは

溝口優子さん、バツイチ年齢は非公開らしい
母子家庭で息子さんが中学生になって部活を初めて生活的にキツいらしい
なんで自分が知っているのかはこの前の職場の飲み会で聞いたからだ

「優子さん、ありがとうございます。いつも美味しいお菓子を持ってきていただいて、そんなにお菓子を持ってきてもらって生活の方は大丈夫なのでしょうか?」

  
「勝利さん、敬語はやめてこの前の飲み会で言ったじゃない」

「すみません、敬語の方が楽で」
と自分に出来る精一杯の笑顔で返した。
優子さん息子も成長期でご飯をいっぱい食べると言うのに本当に大丈夫なのだろうか?
自分の質問はかき消された。ツッコミを入れて欲しくなかったのか、なんなのか分からないが休憩の時間も短い、またの機会にしよう

休憩場所はこの工場の外にある、歩いて1分もかからないが外は雪がチラついてきていた

「今日は雪が降らない予報だったのに、家に帰ったら雪かきだなー」
独り言のように呟いた言葉は、優子さんの耳に入ってしまったようだ。

「本当ですね、私も帰ったら雪かきだなー勝利さん私の家の雪かきもしてくださいよ」
冗談交じりに呟いた優子さんはニッコリと笑った

「いやいや、勘弁してください。自分もおじさんなもので自分の家で精一杯ですよ」
「冗談ですよ、あのーしょう・・・」
そんなたわいもない話をしていると
「お前らー早く来い優子のお菓子がたべられないだろ!」
食い気味に休憩所から工場長の叫び声が聞こえた。
「今行きますよー」
と優子さんは大きな声で返した。
工場長は優子さんに好意があるようだ。顔もそれなりに可愛い優子さんは、この工場の中でかなり好意を持っている人がいるみたいでいつもみんなは隙を狙っている。

自分もその中の1人だ。

小走りで休憩所に向かっていく優子さんを眺めながら、自分は何も出来ない事を後悔しながらあとから休憩に向かっていった。

休憩が終わり、午後の仕事が始まった。
またこの仕事をする事にため息が出てしまった。こんな誰でも出来るような仕事を続けていて何があるのか、自分のためになるのか仕事をしていると嫌な事ばかり思い浮かんでしまう。
自分の仕事場からは実は優子さんが見える。ある意味、特等席だ。
息子のため生活のために働いている優子さんはとても生き生きと仕事をしている。
それがとてつもなく自分は好きだ。と仕事をしながら時々優子さんの姿を見てはどんどんと時間が過ぎていった。

ジー!っと2回目の音がなり、みんなは生き生きとした顔をしている。

今日の仕事が終わったのだ

もう1日が終わり、この日はもう2度と戻ってこない。
帰りになんのコンビニ弁当を買って帰ろうかと悩みながら歩いて休憩所に向かっていると後から優子さんが

「勝利さん、今日の仕事終わりましたねー夜ご飯は何を食べるんですか?」
「今日はカレーライスでも作って食べようと思いるんですよ」
自分は嘘をついた。優子さんの前では見栄を張り嘘で塗り固めた自分でいることがとてもいいと思っている。
「そうなんですかー今日は自炊されるんですね!」
「コンビニ弁当だけだと体が重くて年ですねー」
と笑った、みんなとたわいもない話をして嘘嘘嘘嘘をついて仕事場をあとにし、帰りにコンビニによって弁当を買い、いつもと同じ道同じ景色を眺め家に着いた。
「ただいまー」
声に出した自分の音は部屋に虚しく響く、誰もいない家に帰ってくるというのは少し悲し気持ちになる、同年代の人達は結婚して帰ってきたら嫁さんがおかえりと返してくれるかもしれない、子供がいればパパと呼ばれ帰ってきたことを喜んでくれるかもしれない、そんなことに思いを馳せて部屋の電気をつけた。

お弁当を食べてお腹いっぱいになると幸福感が込み上げてくる。テレビを付けて見ているのか見ていないのか分からないような感覚で見ていた。時計を見てみると時間はもう十時頃
「さーお風呂にでも入って寝るか」
勝利の家のお風呂は縦に長く足は伸ばせない、体育座りをして肩まで浸かる。1日の疲れが取れているような感覚だ。
「ふぅー生き返るな、仕事終わりは熱いお湯が体に染み渡る」
十秒ほど湯船に浸かり、頭を洗い体を洗いもう一度湯船に浸かるいつも決まった行動だ。
そしてお風呂から出て体を拭いてドライヤーで髪を乾かす。また決まった行動をして寝る準備をし布団に入る。
「今日もロボットのように終わる毎日だったな、何も起こらない何も始まらない、いつもと同じこんな生活はいつまで続くのか」
ボヤいても誰も答えてくれない当たり前であって悲しい現実
少し気分が落ちてしまったので優子さんのことを考えながら眠りに落ちた。
眠ってしまえばまた新しい朝が始まる。パンの切れ目にウィンナーをいれ、優子さんの美味しいお菓子を食べて仕事が終わる。これを毎日続けていくのだ。

佐藤勝利35歳、独身

夢は世界中の人々を笑顔にすること







                 被験体 佐藤勝利の毎日
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