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④角も鱗もないけれど/完結
第4章:婚姻儀式
しおりを挟む――ある日。
「は?」
私、ハルカは耳を疑った。
「だから、儀式だ」
「いや、聞こえてますけど!? なんで私と隊長が結婚する流れになってるんですか!?」
宿舎の食堂で、私は叫んだ。
だって、ガルド隊長は真顔(通常運転)でそう言うんだもん!
「お前を保護している立場だ。婚姻契約を結ばねば、周囲に怪しまれる」
「なんですかその制度!? 保護と結婚がワンセット!?」
周りの隊員たちがゲラゲラ笑う。
「隊長もようやく身を固めるんすね!」
「嬢ちゃん、うちの姐さんか! めでてぇ!」
「式はいつだ? 今夜か?」
「今夜!?」
「今夜!?」
私とガルドの声がシンクロした。
* * *
というわけで。
あれよあれよという間に、婚姻儀式の準備が進められてしまった。
「ねぇ、ちょっと待って! 私、心の準備が!」
「安心しろ。儀式は形式的なものだ」
「その“形式”が怖いんですよ!!」
案内されたのは、大広間みたいな場所。壁に松明が灯され、床には赤黒い模様が描かれている。
「……なにこれ、召喚陣?」
「婚姻紋様だ」
ガルドはさらっと答える。
いやこれ、絶対なんか呼び出せるやつでしょ!? 乙女ゲームならここで魔王出てくるやつでしょ!?
* * *
そうこうしているうちに式は始まった。
まず、新郎(=ガルド)が巨大な斧を掲げる。
「斧!?」
「妻を守る決意を示す象徴だ」
次に、新婦(=私)が生きた魚を持つ。
「魚!?」
「命を分かち合う象徴だ」
最後に、二人で酒を飲み交わす。
まあ、これはわかる。和風ファンタジーの三三九度みたいなやつだ。
――と思ったら。
「……えっと、なんで盃に赤い液体が? まさか……?」
「俺の血だ」
「ちょおおおおおっと待って!?」
隊員たちが拍手して盛り上がる中、私は盃を持ったまま固まった。ガルドは涼しい顔で(いや、いつも涼しい顔だけど)、こちらを見ている。
「飲めないなら、飲ませてやろうか」
「いやいやいや! そこは止めてくれません!?」
でも、みんなの視線が「やれやれ!」って空気だし、断ったら隊長が恥をかく気がするし……。
「~~~っ、ええいままよ!!」
私は目をつぶって、盃を一気にあおった。
「……あれ? 意外と甘い?」
拍子抜けした。血だと思ったら、ただの果実酒だった。
周囲は大爆笑。ガルドはわずかに口の端を上げ――。
「……よく飲んだな」
その一言で、私は心臓が爆発するかと思った。
* * *
こうして式は無事(?)に終わり、私はガルドの「形式上の妻」になってしまった。
夜、部屋でひとりベッドに転がって、私は叫ぶ。
「な、なんでこうなるのーーーっ!!」
でも――
ガルドの言葉と、あの小さな笑みを思い出すと。
「……まあ、悪くないかも」
頬が勝手に緩んで、枕に顔をうずめる私だった。
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