婚約破棄された悪役令嬢に辺境大公(私の婚約者)を寝取られました

転定妙用

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その夜は一人だったが・・・(サムロは回想する)

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「閣下。探しましたよ。」
 俺が、ガマリアとの思い出の噴水と東屋のところでぼんやりして、ベンチに座っていると、その俺を探していた、我が家の兵や侍女達が声をかけてきた。
「もう夜も遅いですから・・・。」
「ぼ、坊ちゃま。だ、大丈夫ですか?」
 心配するみんなの顔を見て、
「すまなかったな。もう大丈夫だ。行こうか。帰ろうか。」
と俺は言って立ち上がった。そのまま、その夜は自分の屋敷に戻った。風呂に入り、軽く夜食と酒を呑んで、ベットに入った。誰も、何も言おうとはしなかった。眠れないと思ったが、すぐ眠れてしまった。ガマリアとの楽しい思い出と、それが崩れる、人々から嘲笑される等のいい夢とも悪夢とも言えない、結局は悪夢としか言えない夢にうなされ続けた。

「サムロ殿、大丈夫か?」
 翌日、ぼ~と過ごしていた、考えることができないでいる俺の元に現れたのが、イチジーク会長、もといイチジーク書記官だった。その時は、もう夜もかなり遅かった
「見事に、婚約者を寝取られてしまいましたよ。」
 力なく俺が無理やり笑顔を作ると、
「君は、元婚約者に怒りを感じないのか?奪った相手を恨まないのか?」
「愛した婚約者ですよ、幸せになってくれないかと思わざるを得ないではないですか?」
と私が答えると、彼女は呆れたという顔をして
「君という男は・・・相変わらずだな。君らしいと言えば、君らしいが、本当に。」
と言ったが、次の瞬間気が付くと、俺は彼女に抱きしめられていた。
「君は、本当にいい奴なんだな。」

「君は、私を支えてくれた。今度は、私に支えさせてくれないか?やはり、私ではだめか?」
 彼女は、じっと熱い視線を向けた。見事な、燃えるような赤髪の、理知的で、強い意志を感じさせる美しい彼女の顔を、そして息遣いを、初めて近くで感じた。彼女は全力で抱きしめてきていた。振りほどくのは難しいくらいだったが、そんな気持ちは起こらなかった。気が付くと、彼女の唇が少し開いているのが目に入った。もう抵抗できなかった。そのまま引き寄せられるように、唇を重ねてしまった。二人して強く押し付けあって、舌を差し入れあって・・・。そのまま、お互いに相手を押し倒そうとして、ソファーの上で・・・・。その後、寝室へ入ってベッドの上で・・・争い、闘うように体をぶつけ合うように激しく動き、互いの肉体を感じ合い、快感を止めどもなく感じ合った。

「こんな大女、良くなかったんじゃないの?全く私の気持ちも知らないで、自治会時代は、私に関心なんてひとかけらもいだかなかったわよね?」
 互いに生き絶え絶えでぐったりして抱き合っていたが、あの会長がと思える、すねるような顔と声で言った。
「会長は、実に美しい女性だと思いましたよ、思っていましたよ。でも、私には婚約者がいましたから。婚約者をないがしろにして、会長に色目を使ったらどうしていました?」
「そんなことをしたら、思いっきりぶん殴っていたわ。ところで、会長ではなく、アルミサエルと呼んで、・・・・さ、サムロ。それで、やっぱりあの可愛い婚約者のほうが、こんな大女よりいいのでしょう?」
「そんなことはないよ・・・あ、アルミサエル。すごくよかったよ。」
「あなたもすごく良かった。」
と痛いくらいに強く抱きしめてきた、会長、イチジーク書記官、アルミサエルは。

 その後が大変だった。まだ、ベッドインしているところに叔母達や妹達が押し入ってきて、
「身分が違い過ぎるわよ。」
「と、年増・・・すぎます。」
とわなわな震えながら、抗議した。身分などは、あまり言わないのが我が家の家風なのだが、流石に庶民そのもののイチジークには、ついそんな言葉が出てきてしまったのだ。妹達よ、俺と同学年、月日でいえば半年後に生まれた会長を年増呼ばわりはひどいだろう、さすがに。
 しかし、落ち着きはらって、起き上がり、衣服を着てあいさつし、彼女らの武術試験を快諾して、かつ、立ち会って、快勝して、その後のほんの僅かな会話で、
「我が家の嫁として、理想の嫁よ。絶対に嫁にしなさい、結婚しなさい。」
「絶対、お義姉様になってください。お兄様、して下さい。」
と言わしめてしまうのは、流石に彼女だった。

 彼女とはすぐに結婚、二人とも再洗礼派教会だったから、問題なかった。彼女は、しばらくして後継者を育て上げて退職した。野に放たれた後の彼女の活躍はすさまじく、進歩派の市民を完全にまとめてしまった、パパイ大公に期待する市民勢力は皆無になってしまった。
 それでも、ゼハンプリュの、カーキ公爵家の力もあって保守派貴族の多くがパパイ大公を支持し、我が家に準じる軍事貴族であるピール公爵家はデュナがしっかりまとめ、周辺の貴族や進歩派貴族の一部の支持を固めていた。
 その二人についてパパイ大公は、どちらとも夫婦仲に悪い噂はたたせなかった。が、最近は二人を一緒に、四つん這いで並ばせて、あるいは見事な両脚を上げて並ばせて、またある時は重ねてというか抱き合った状態で、同時に、交互に愛しているという噂が流れてきている。二人は競い合うように、腰を振り、喘ぎ、性技を尽くしていると、誰が見て、流しているのだ、と思えるような話が流れてもいた。
 二人は王都でも、競うようにサロンを開いていた。ゼハンプリュは正統派の洗練さに北方の風を取り入れた感じで、デュナは進歩的なところも感じさせるものとピール家の質実さを組み合わせ、北方文化も紹介する感じのサロンを開いていた。どちらにも共通なのは、パパイ大公が気に入るものだけしかない、気に入る者しかいないというものだった。

 王家は、ガマリア王妃がアルミサエルの積極的支持者で、ミカエル国王を引っ張っていっていた。まあ、彼女には当面は、ある程度までは認めるという本音があり、アルミサエルと時には火花を散らしていた。元婚約者は、なかなかやる、結構怖い奴だったなと思いつつ、彼女でなければミカエル様は支えられないなとも改めて思ったものだ。
 国はこうやって、はっきりと二つの勢力での対決の様相となっていた。

「あなたのおかげよ。謙遜にも程があるわ、学生時代からそうだったけど。」
 彼女は、後ろから俺に抱かれ、俺の上で動き、喘ぎながら言った。
「あなたの助けが有って、あなたの導きがあって、あなたが勇気づけてくれたから、私はやっていけたのよ、ここまで世の中が動いたのよ。」
「君に従っただけだよ。」
「夢は私はさきまで見たけど、あなたは現実を私より先を見て、私より正しかったのよ。」
 ほめ過ぎ、過大評価だよ。でも、俺はこのまま彼女とともに進もうと思っていた。
「一緒よ。一緒に行くの。」
「ああ、勿論だよ。」
 次の瞬間、その夜、何度目になるか分からないが、彼女はのけぞった・・・。一緒にいく、というのは社会改革をともに進めていくということだった、もちろん。

 俺は、アルミサエル・イチジーク、会長とともに進むことを決意していたと思っていた。が、俺は不安が有ったのかも、恐れていたのかもむしれない、怖かったのかもしれない。内乱を、国破れて山河在りとなることを、見たくなかったのかもしれない。その心があったのかもしれない。

 また、あの日に戻ったのだ。そこで、おれは、何とかして、その場をごまかして、ゼハンプリュ嬢と、ミカエル王太子とガマリアを説得し、婚約破棄劇を止めさせた。これで、俺はとろけるようなガマリアとの生活を色々な意味で味わい、全ては・・・結局はうまくいかなかった。
 結局、ミカエル王太子はゼハンプリュと離婚、ガマリアはミカエル様に走った。そして、一度目はパパイ大公がゼハンプリュを見事に自分の物にし、アルミサエルと俺は結ばれることになり、二度目は何とかゼハンプリュを自分のものとできたが、あの時同様の苦しみを味わった。そして三度目、どうしようもなくゼハンプリュはパパイ大公のものとなったが、デュナが離婚して、俺と結婚することになった。それも結局は一度目と同様なことになった。
「こうなるなら、きれいなままの体であなたのところにくるんだった。」
と涙する彼女を抱きしめた、俺は。

 そして・・・、二度目ではなく、三度目なのか、最初の道を選んで、あの時にいた。いや、一度目に戻ったのか、何度も別の道を体験した後に?いや、
「どうせ苦しむなら。」
と思った記憶、あの晩抱き合って二人で言いあった記憶がある…三度目なのか。全てが定かでなくなってきてしまった。だが、とにかく、俺達は、俺とデュナは共犯者となる道に、今いることは確かだった。もうこれしかないと、確信して。




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