婚約破棄された悪役令嬢に辺境大公(私の婚約者)を寝取られました

転定妙用

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交渉決裂

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 ところで、侍女達の半分以上は部屋で、席やお菓子、飲み物、飾りの準備をしていたから、大公様や護衛達は人数を把握はしていなかったと思うわ。まあ、彼らの目を見ると、私達の侍女達を戦力とはみていないようだったけど。普段なら怒りたいところだけど、今回は好都合というところ。もちろん、私もサムロもそれぞれの家の軍人としての礼服だし、秘書官達も。侍女の服装だって、動きやすさは段違い。

 私達4人は、2組の夫婦、対面でテーブルを挟んで席についたわ。
 大公様は、いつものように見事な金髪の人を魅力する容姿であり、そのオーラを放っていたわ。ゼハンプリュ夫人は、見事な赤みがかった金髪で、いたくなるような厳しさをもった美しさだった。大公様はパパイ大公家の優雅な紫色を主とした礼服を、ゼハンプリュ夫人は本来私が着るはずだった大公家正妻のやはり紫を中心とした豪華なドレスを着ていた。

「これは、ピール領のお茶だね。実に良い香りだ。」
「コリアンダー公爵家秘蔵のお茶です。」
 大公様の言葉に、私の侍女が答えた、少しムスッとして。大公様は実に不愉快な顔になったけど、そのままお茶を飲まれて、
「領主がどうであろうと、自然も領民も褒めないといけないな。」
 カチン、とことさら大きな音を立ててカップを皿に置いた大公様は、
「コリアンダー公爵。私とピール公爵閣下から、この際だから言っておこう。」
「お待ちください。パパイ大公閣下。私、ことピール公爵デュナから言わせていたただきます。夫、コリアンダー公爵の分まで、お話申し上げます。」
と私は大公様の言葉を遮った。ゼハンプリュは、全く動じることなくお茶を飲み続けていたわ、流石だわ。サムロは、じっと大公様の方を見つめていた。
「パパイ大公閣下に申し上げます。コリアンダー公爵家とピール公爵家は、閣下の思いはどうであれ、国家、政府も、王家に大公閣下が弓を向けるのであれば、国、王家の近衛の家として、立ちはだかります。軍を進めるなら、私達、我が家の将兵、領民の屍を踏み越えていくことを覚悟して下さい。ですから、反乱など思いとどまってください。今、思いとどまるなら、我々は閣下を。パパイ大公家が処罰されないよう、全力を尽くすことを誓います。そして、ゼハンプリュ大公妃閣下。国王陛下や王妃殿下への復讐はお忘れください。あなたは、復讐に走る方ではない、ご自分の幸福を見つけられる方であり、心優しい方であることを、それが本当のあなたであることを知っております。どうか大公閣下の過ちを、復讐心で包まないで下さい。お二人の幸せ、国の幸せをお考え下さい。」 
 私は、一気にまくしたてた。
 ゼハンプリュは、少しも動揺しなかった。ただ、サムロと目が合った時、ちょっと、ほんのちょっとだけ氷が解ける感じがしたわ。大公様というと、怒り狂った顔に、少しの間だけ、なったけど、厳しいけど冷静な表情になったわ。そして、ことさら大きな音をたてて立ち上がり、

「コリアンダー公爵。君という男には、今度と言う今度は、失望したよ。なんと謀反を考えているとは。ピール公爵を君の下に送って、君を監視させたことは正解だった。君の本心は分かった。早急に、国王陛下に、君の処罰を要求する。さあ、デュナ、行こう。君の役割は終わった、ご苦労だった。辛い思いをさせたが、もういい。私の元に戻ってきていい。さあ。全員、彼女をコリアンダー公爵から守り、無事にお連れしろ、私達とともに。」
 交渉決裂。

 大公閣下の護衛は余裕の顔で向かってきた。侍女三人は動かなかった。自分達が出るまでもないと思ったのでしょうね、状況把握が間違っているわよ、闘いのプロとして失格よ。
 大公様の伸ばした手を払いのけた私の手を、大公様の秘書官、秘書官としては有能なんだけど、小柄で小太り、は私の手をつかんだわ。有無を言わさず投げ飛ばしてやったわ。
 大公様の護衛達は、私には向かってこなかったわ、残念無念。サムロには、遠慮なく殴りかかったわ。ぼこぼこにしていい、いえぼこぼこにしろと命じられていたのよね、きっと。でも、一人はたちまちサムロに押さえつけられて、あとは私達の護衛、秘書官、侍女達に瞬く間にのされてしまったわ。ざまーみろ。
 それを見て、大公様の侍女達が動き出したわ。我慢できなかったから、私も闘いに積極参加。流石に暗殺のプロと自称している戦闘メイド。あれだけ調べられていても、小さいけどナイフを隠し持っていたわ。でもこっちも、テーブルのフォークやスプーン、皿等を手にしていた。ナイフをフォークで受けて、即座に足蹴り、ひじうち、水平チョップ、脳天唐竹割り、最後は当身でぶっ飛ばしてやったわ。彼女も蹴りや拳を繰り出そうとしたけど、私の方が格段に速かった。暗殺術は不意をつくから有効なのであって、正面から戦った場合は不利なのよ。それよりも、ピール公爵家の女である私を倒せるなど、侮るんじゃないわよ。倒れた彼女は侍女が3人がかりで袋叩きで敢え無く沈没。他の二人も同様。
「パパイ大公閣下。最早、お話することはありません。どうぞ、お引き取り下さい。気分が悪くなり倒れてしまわれた御供の方々は後程、私達が責任をもってお連れ致します。」
 扉が開かれ、サムロが深々と頭を下げた。
 ゼハンプリュの手をとり、部屋の外に出た大公様、あくまでも落ち着いている風、ゼハンプリュも、だったわ。流石だわ。

「大公殿下。大丈夫ですか。」
 大公様の、外に残していた護衛達が駆け付けてきたわ。その後ろに衛兵達も。
「コリアンダー公爵が。ピール公爵閣下に、私のデュナに乱暴狼藉を働いている。止めさせようとしたが、私達に襲い掛かり、私の部下達が怪我をさせられたのだよ。無抵抗な彼らをだ。ピール公爵を助けてほしい。コリアンダー公爵を取り押さえてくれたまえ。」
と大公様。
 さっそくと、色めき立つ衛兵達。でも、すかさず、どこから現れたの?イチジーク書記官が、こちらも衛兵を連れていた、
「コリアンダー公爵サムロ閣下とピール公爵デュナ閣下ご夫妻とパパイ大公閣下の供の方々の間にトラブルがあったようですが、もう終わっていることに、我々が介入することは許されません。」
とぶち上げちゃった。さすがにその言葉と威厳に、パパイ大公閣下派の衛兵達は足がすくんで、躊躇してしまったわ。
 これを見て、形勢不利と見た大公様は、ゼハンプリュを連れて、残りの護衛達を引き連れて行ってしまったわ。その素早さに、その背を見ながら私は心に痛いものを感じたわ。でも、もうどうすることもできないのよね、私自身が決めたことなのだから。
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