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カラスと共に、郊外の民家にやってきた。
勧誘。
彼と同じく、人と共存している鳥を仲間にするために。
マスクと帽子とサングラスという完全に不審者の姿で、家に近付く。
かなり怪しいが、仕方が無い。
というのも、今回の事件後、全ての鳥が、人の顔を識別し、覚えていることが判明したからだ。
カラスだけの特徴とされていた能力。
それは襲われた人間に話を聞くことで明らかになった。
無差別に襲撃される中で、特に執拗に追いかけられ、
ひどい怪我を負わされる人間がいることがわかった。
話を聞いていると、最初は何故自分が、と怒りを露にしているが、
ふと何か思い出したように、顔を真っ青にして震え始めるのだ。
追求すると、昔、鳥を殺したことがあるという。
他の人間も、雛を殺した、巣を壊した等、
恨みを買って当然のことをしていた。
正に因果応報。自業自得だった。
私のような研究者が言えることではないが。
それがなくとも、これから彼らと真っ向から敵対することになる。
任務中は姿を隠したほうが良いだろう。
「大丈夫ですか?」
カラスがこちらを覗き込む。
一昔前のパイロットのような服、そして顔半分を覆う、鳥を模した仮面。
まるでファンタジー小説から抜け出してきたかのような格好だ。
「・・・今さらですが、それは目立つのでは?」
「大丈夫です。今近くに人はいませんし、この姿になるのは、任務中のみ。パフォーマンスの一種ですよ。人となったカラスが、自分達の敵を蹴散らしてくれる。そういった姿を見せておけば、全てが終わった後も、多少は私達に寛容になってくれるかもしれませんからね」
「なるほど・・・」
カラスの調べで、この時間帯の近隣の家々はいつも留守らしく、辺りに人気は無かった。
「では教授、よろしくお願いします」
そう言ってカラスは私から距離を取った。
「・・・人の姿になっていても、駄目なのでしょうか?」
「そうでしょうね。彼らにとって、私は天敵ですから。私がいては、進むものも進まない」
カラスから離れ、玄関に行き、新しい仲間を勧誘すべく上を見上げた。
ツバメの巣。巣立ち間近の子供と、近くで見守っている親が、こちらをじっと見つめている。
私はカラスを振り返った。
「顔を出しても良いでしょうか」
カラスは片眉を上げる。
「このままでは、不誠実だと思うので」
彼は目を見開いた。
だがすぐに口を上げて見せると、見張らせていた仲間に目配せした。
「・・・大丈夫ですよ」
頷きあって、表情がわかる位に顔を晒すと、彼らを見る。
「こんにちは。初めまして」
返事はない。
「あの、今日はツバメさん達にお願いがあってきたのですが・・・」
返事はない。
カラスの笑い声が聞こえてきて、私の体は一気に熱くなる。
「失礼」
「ほ、本当に大丈夫なんですよね!?」
思わず声を荒げてしまう。
「ええ。おとぎ話ではありませんから、可愛く鳴いて肩に止まる、なんてことはないでしょう。ですが返事はなくとも、伝わっているはずです」
続けて。
促され、気を取り直し、誠意が伝わるように、優しく、丁寧に要件を伝えていく。
周りからどんな風に見られているかと思うと、居たたまれない。
そうしてなんとか初任務を果たし、ホッと息をつくと、
ツバメ達は一斉に飛び立ち、どこかへ飛んでいった。
「これから相談するのでしょう」
「・・・だと良いんですが」
「返事を待ちましょう」
お疲れ様でした。
カラスは微笑んだ。
勧誘。
彼と同じく、人と共存している鳥を仲間にするために。
マスクと帽子とサングラスという完全に不審者の姿で、家に近付く。
かなり怪しいが、仕方が無い。
というのも、今回の事件後、全ての鳥が、人の顔を識別し、覚えていることが判明したからだ。
カラスだけの特徴とされていた能力。
それは襲われた人間に話を聞くことで明らかになった。
無差別に襲撃される中で、特に執拗に追いかけられ、
ひどい怪我を負わされる人間がいることがわかった。
話を聞いていると、最初は何故自分が、と怒りを露にしているが、
ふと何か思い出したように、顔を真っ青にして震え始めるのだ。
追求すると、昔、鳥を殺したことがあるという。
他の人間も、雛を殺した、巣を壊した等、
恨みを買って当然のことをしていた。
正に因果応報。自業自得だった。
私のような研究者が言えることではないが。
それがなくとも、これから彼らと真っ向から敵対することになる。
任務中は姿を隠したほうが良いだろう。
「大丈夫ですか?」
カラスがこちらを覗き込む。
一昔前のパイロットのような服、そして顔半分を覆う、鳥を模した仮面。
まるでファンタジー小説から抜け出してきたかのような格好だ。
「・・・今さらですが、それは目立つのでは?」
「大丈夫です。今近くに人はいませんし、この姿になるのは、任務中のみ。パフォーマンスの一種ですよ。人となったカラスが、自分達の敵を蹴散らしてくれる。そういった姿を見せておけば、全てが終わった後も、多少は私達に寛容になってくれるかもしれませんからね」
「なるほど・・・」
カラスの調べで、この時間帯の近隣の家々はいつも留守らしく、辺りに人気は無かった。
「では教授、よろしくお願いします」
そう言ってカラスは私から距離を取った。
「・・・人の姿になっていても、駄目なのでしょうか?」
「そうでしょうね。彼らにとって、私は天敵ですから。私がいては、進むものも進まない」
カラスから離れ、玄関に行き、新しい仲間を勧誘すべく上を見上げた。
ツバメの巣。巣立ち間近の子供と、近くで見守っている親が、こちらをじっと見つめている。
私はカラスを振り返った。
「顔を出しても良いでしょうか」
カラスは片眉を上げる。
「このままでは、不誠実だと思うので」
彼は目を見開いた。
だがすぐに口を上げて見せると、見張らせていた仲間に目配せした。
「・・・大丈夫ですよ」
頷きあって、表情がわかる位に顔を晒すと、彼らを見る。
「こんにちは。初めまして」
返事はない。
「あの、今日はツバメさん達にお願いがあってきたのですが・・・」
返事はない。
カラスの笑い声が聞こえてきて、私の体は一気に熱くなる。
「失礼」
「ほ、本当に大丈夫なんですよね!?」
思わず声を荒げてしまう。
「ええ。おとぎ話ではありませんから、可愛く鳴いて肩に止まる、なんてことはないでしょう。ですが返事はなくとも、伝わっているはずです」
続けて。
促され、気を取り直し、誠意が伝わるように、優しく、丁寧に要件を伝えていく。
周りからどんな風に見られているかと思うと、居たたまれない。
そうしてなんとか初任務を果たし、ホッと息をつくと、
ツバメ達は一斉に飛び立ち、どこかへ飛んでいった。
「これから相談するのでしょう」
「・・・だと良いんですが」
「返事を待ちましょう」
お疲れ様でした。
カラスは微笑んだ。
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