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ヴァイツェルン皇国中央部の皇都・ティカートの東部にある『ティカート学園』。
平民も貴族も王族も関係なく通うことができ、試験にさえ合格すれば誰でも通うことができるが、皇国の中でも最高峰の実力を持たなければ通うことができない。
そんな皇国の中でも最高峰なティカート学園は今日、入学式が行われる。
皇国を将来支えるとされる新たな天才の卵達が入学式に挑む。
青髪碧眼の銀縁メガネを掛けたとてつもなく普通そうな青年・レイク=エイダーもその一人。
周りは入学式で緊張しているのか体が固まっているようでソワソワしている。
レイクは新入生の様子を、と暢気に思っていた。
まもなく入学式は始まり、理事長の話が始まった。
理事長は意外にも女性で、キリッとした表情で話を終わらせる。
在校生代表の話が始まる。
在校生代表...生徒会長は金髪碧眼の背の高い男子生徒。
その容姿と仕草に惚れた女子生徒は多いようで、キラキラとした目で生徒会長の話を聞いている。
そして新入生代表。
新入生代表は黒髪の左目赤、右目青のオッドアイの少女。
レイクは青い目に思わずため息をつきたくなった。
その特徴的な容姿に魅せられている生徒も多い。





そんなこんなで入学式は淡々と終わった。
レイクのクラスはBクラス。
良くもなく悪くもない、普通クラスだった。
レイクは1番に教室に入ったようで、教室には誰もいなかった。
席は自由と黒板に書いており、それに従ってレイクは窓側の後ろから2番目といういい席を取った。
クラスメイトになるであろう子達はまだ来なさそうなのでレイクは窓の外で遊ぶ精霊達を眺めていた。


「隣、いいですか?」


突然話しかけられ、少々驚きながらも返事をする。


「...はい、どうぞ。」
「ありがとうございます。」


隣に座った少年は他の男子よりも少々可愛らしい容姿をしていた。
青髪緑眼で疑ってしまうほど肌が白い。
振り返らぬ者はいないだろう。
レイクは数ある席の中で何故隣を選ぶのかと思案するも無駄だと思い、再び外を眺めた。


「外に何か、いるんですか?」


美少年は聞く。


「...いや、空が綺麗だと思っただけ。」
「そうですね、今日は僕達の入学式を祝ってくれているのかもしれません。」


レイクは素っ気なさそうに返し、美少年は返事を陽気に返す。
それを幾度となく繰り返す。
酷く不釣り合いな会話だが、美少年はそれなりに楽しく話していた。
そのうちに担任の先生と思われる人物が現れ、生徒に話し始めた。


「えー、今日は入学おめでとう。俺はこのBクラスを担任することになったエルザーク=エイダーだ。これからよろしく。で、皆知ってると思うが、この学校では身分は関係ない。この学校内では身分を表に出さず、貴族平民関係なく協力して学ぶこと。これは皇帝陛下がお決めになられた。つまりこれを破れば皇帝陛下のご意向に背くことになる。その意味は聡いお前達なら分かるだろう?とりあえずこれは守っておくこと。他の規則は今から配る生徒手帳に書いてある。では配るぞ。」


『エイダー』という苗字は平民には全員配られ、その苗字を名乗るということは平民である証である。
名前で呼び合うのであまり関係はないが、皇帝がここに通うときに分かりやすくするために制度化した。
そう言って配られたのはタッチパネル式端末。(いわゆるスマホ)
皆使い方が分からず首を傾げていると、今度は取扱説明書のような冊子も配られた。


「えー、これは生徒手帳だ。内部連絡装置としても使える物でもある。何故繋がっているのかは国家機密だ。で、上部のボタンを押してみると生徒手帳として使える。これの全ての情報は学園専用の情報部が管理しているが、別に誰と繋がろうが情報部は関与しないから安心しろ。まぁ後はその取扱説明書見てくれ。じゃあ自己紹介頼むぞ。」


自己紹介は苦手だ、とレイクは内心で舌打ちするのだった。
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