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9.なりふり構わない意地悪令嬢に、ニセ嫁タジタジざまぁーす。
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しおりを挟む「花蓮の気持ちは嬉しいが、それは私が兄の様に接していたから、憧れに近いものがあったのだろう。お前は私にとって妹みたいな存在であったから、つい、兄の様に振舞ってしまった事は侘びよう。すまなかった。でも、花蓮は素晴らしいレディ―だ。私なんかよりも、もっとお前に相応しく素晴らしい男性に出会える筈だ。見分を広めるといい。籠の中の鳥である必要は無いのだ」
はあー。普段の一矢を知っているから、笑いを堪えるのに苦労した。
こんな一面もあるのね。おべんちゃらが巧くて、饒舌。まあ、世間を渡り歩かなくてはいけないのだから、このくらいは朝飯前、か。
ご令嬢を深く傷つけないように、しっかりとお断りするそのスマートさ。天晴だわ。
「解りました。一矢様のご結婚、祝福させていただきます。どうか、お幸せに」
花蓮さんが微笑んだ。本物の花の様に美しい。一矢によく似合っている。下品な私よりもずっと、お似合いだ。ニセ嫁を語って申し訳ない。
「一矢様、わたくし、伊織様とお話してみたいわ。よろしくて?」
ゲー。嫌な予感しか無いんだけどぉー。
「伊織、どうだ? 花蓮と少し話してくれるか?」
ひいー。さっき手を思いきり握られて、多分ちょっと赤くなったと思うんだけどぉー。
こんな事やってくる令嬢と話すなんて、イヤダぁー、とは言えず。
「はい、喜んで」
何を話すんだよー。
「花蓮のお部屋にいらして、伊織様。一矢様との思い出の写真が沢山ありますの。アルバム見ながらお喋りしましょう」
いやーぁ。
心の叫びとは裏腹に、速攻で部屋を連れ出されてしまった。跡が残るくらい強い力で腕を掴まれた。ゴテゴテのネイルを施した鋭い爪を立ててるし! 痛いって!!
「こちらが花蓮の部屋ですわ。どうぞ、お入りになって」
失礼致します、とお辞儀をして部屋に入ろうとした私の足を、彼女が引っ掛けた。
思わずつんのめって、派手に転んでしまった。
「あらぁ、ごめんあそばせ」
ちょっと! 全然ごめんって思ってねーだろがああああ!
「いいえ。そそっかしくて、よく一矢に叱られてしまうの。ごめんなさい」
さっと体制を整え、戦闘態勢ならいつでも受けて立つぞ、と身構えた。
「時に貴女、財閥でも無いと先程おっしゃいましたけれど、よくそれで一矢様に釣り合うとお思いになられたのですね。神経を疑いますわ」
こっちこそアンタの性悪神経を疑うわ!
はりきって喧嘩したら、一矢が恥をかいてしまうから、ぐっと堪えた。
これが巷で噂の悪役令嬢というヤツか。初めてお目にかかったぞ。
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