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11.ニセ嫁の大ピンチに駆けつける執事が、実は本物の鬼だった件。
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「それはさておき、伊織。これは提案だが、今ならまだ辞める事は可能だ」
「えっ?」
「シナリオは俺が描いてやる。混乱に乗じ、一矢様の義姉が様々仕立て、お前にした非道を暴き、パーティーだけでなく、婚約そのものの中止を一矢様に申し伝えることは出来る。こんな事があったとなれば、花嫁側としては当然の申し出だ。一矢様に非はないように配慮するし、俺がうまくやる。任せてくれないか」
一矢と、婚約・・・・破棄するって事。
つまり、ニセ嫁を止めるって事、よね。
そんな選択肢があるんだ――頭が真っ白になった。
「醜い世界に触れ、どれだけ一矢様の生きている世界が過酷で苦しいものだという事が伊織にも解っただろ。あの女の詰めが甘かったからまだこの程度で助かったものの、俺ならもっとうまくやる。敵の裏の裏までかく計画を練る。そうなれば、お前は今頃――・・・・まあ、不吉な『たられば』の話はもういい。伊織が受けた屈辱を【この程度】と表現して悪いが、この程度で済んで良かったと言われるのは本当の事だ。一矢様と婚約を発表すれば、今日以上にもっと酷い目に遭う可能性もある。大事な伊織を、これ以上危険な目に遭わせたくない」
中松が真剣な顔で私を見てくれた。
「偽でも、一矢様の嫁になるのは、もう止めてくれないか。伊織。俺はお前を――・・・・・・・・」
キスされそうな至近距離で中松に言われた。
ふぁあああ――! 反則じゃない、そんなの!
聞いてないし!
お前を――の続きは、遠慮がちに私の中に踏み込もうとしている中松の行動を制するべく、彼が話を始める前に私が台詞を取り上げた。
「私、ニセ嫁辞めないから!」
中松の話の続きは、聞いちゃいけない気がした。
そんな事言われても、私は応える事ができない。聞いたら絶対動揺する。今、心を乱したりしたくない。
一矢と何も決着が付いていない心のまま、前に進む事なんてできない。
だって二十年だよ?
彼を守りたいと思っていた気持ちは、幼い頃から変わっていない。好きなのは、一矢だけ。
一時の感情で、流されるわけにはいかないの。
「私は、一矢が好きなの。こんな事になってしまったのは、覚悟が足りなかった私のミスよ。中松の言う通り、【この程度】の事で泣いていられない。強くならなきゃ、一矢を守れない。さっきのは・・・・その、初めての事だったから、ちょっと怖かっただけ。でも、もう大丈夫。だって、私に何かあったら、貴方が命に代えても守ってくれるんでしょっ。また、助けに来てくれるわよね?」
真剣な眼差しで私を見つめ返し、中松が強く頷いてくれた。
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