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最終・旦那様(本物)に愛された嫁(本物)のお話は、大団円を迎えます。
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相当な準備の後、私はバージンロードを歩くべく、重厚で大きな木製扉の前でお父さんと待機していた。新郎の一矢は既に中へ入場している。
私は、中松チョイスのお洒落な一矢好みの純白のウェディングドレスに身を包み、しゃんと姿勢を正して今、開かれようとしている未来の前に立っている。
お父さんの方が緊張していて、ガチガチだ。
「い、伊織・・・・あ、あー・・・・う、うー」
謎の発声練習をしながら、深呼吸を何度も繰り返している。庶民がこんな大舞台に立つには、ちょっとやそっとの気合じゃ無理なのかもしれない。
というのも、今日の挙式は大きな教会で行う。参列者が相当多く、一矢の会社関係の人や著名人、様々いらっしゃるのだ。とりあえずこちら(新婦側)は親戚や友人が多いから人数的には新郎側にそこまで引けは取らないけれど、参加者の内容は、普通<有名人という絵面。
「と、父さんさ、変じゃないか? ネクタイ曲がってないか?」
「もう、大丈夫だって言っているでしょ」
「そ、そそそそうか。だい、大丈夫か」
あまりにガチガチのお父さんの背中を、ばーん、と一発叩いた。「今日は娘の晴れ舞台なのよ。しっかりして! お父さんでしょっ!」
「お前はしっかり者だなぁ」
多少の緊張がほぐれたのか、お父さんが苦笑いした。「ついこの間、産まれたばかりと思っていたのに。もう嫁に行くんだもんなぁ・・・・」
「お父さんにはお母さんがついているから、娘の一人や二人いなくなったところで、平気でしょ」
「そんなことはないぞ! 伊織がいなくなった分、淋しいと思っているよ」
「お父さん・・・・」
そうだったんだ。グリーンバンブーで会う時も、離すときも、普段通りだったのに。
そんな風に何も感じなかったのは、私が気にしないように振舞っていてくれたのね。
「緑竹様、そろそろご入場のお時間でございます」
スタッフの方が小声で合図をくださった。頷いて答える。
「新婦、ご入場です」
重厚な扉が開かれ、私はまさにお父さんと共にバージンロードを歩くつもりで一歩踏み出したのに、開かれた扉の前には、騎士のように跪き、私の登場を待ってくれている人物がそこにいた。
一矢、だ。
私は、中松チョイスのお洒落な一矢好みの純白のウェディングドレスに身を包み、しゃんと姿勢を正して今、開かれようとしている未来の前に立っている。
お父さんの方が緊張していて、ガチガチだ。
「い、伊織・・・・あ、あー・・・・う、うー」
謎の発声練習をしながら、深呼吸を何度も繰り返している。庶民がこんな大舞台に立つには、ちょっとやそっとの気合じゃ無理なのかもしれない。
というのも、今日の挙式は大きな教会で行う。参列者が相当多く、一矢の会社関係の人や著名人、様々いらっしゃるのだ。とりあえずこちら(新婦側)は親戚や友人が多いから人数的には新郎側にそこまで引けは取らないけれど、参加者の内容は、普通<有名人という絵面。
「と、父さんさ、変じゃないか? ネクタイ曲がってないか?」
「もう、大丈夫だって言っているでしょ」
「そ、そそそそうか。だい、大丈夫か」
あまりにガチガチのお父さんの背中を、ばーん、と一発叩いた。「今日は娘の晴れ舞台なのよ。しっかりして! お父さんでしょっ!」
「お前はしっかり者だなぁ」
多少の緊張がほぐれたのか、お父さんが苦笑いした。「ついこの間、産まれたばかりと思っていたのに。もう嫁に行くんだもんなぁ・・・・」
「お父さんにはお母さんがついているから、娘の一人や二人いなくなったところで、平気でしょ」
「そんなことはないぞ! 伊織がいなくなった分、淋しいと思っているよ」
「お父さん・・・・」
そうだったんだ。グリーンバンブーで会う時も、離すときも、普段通りだったのに。
そんな風に何も感じなかったのは、私が気にしないように振舞っていてくれたのね。
「緑竹様、そろそろご入場のお時間でございます」
スタッフの方が小声で合図をくださった。頷いて答える。
「新婦、ご入場です」
重厚な扉が開かれ、私はまさにお父さんと共にバージンロードを歩くつもりで一歩踏み出したのに、開かれた扉の前には、騎士のように跪き、私の登場を待ってくれている人物がそこにいた。
一矢、だ。
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