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7.自分の気持ちを再確認(今更どうにもできない)
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普段と変わらぬ意識で仕事を終え、実家(スギウラ)に帰った。
さあ。神原と結婚する事を決めたって、両親に伝えなきゃ。
とりあえずお父さんから言おうかな。
家の中を探すと、父はまだ工場で働いていた。秋からどんどん忙しくなるから、何時も遅くまで頑張ってくれている。私は働き者の父を、誇りに思う。
だからこの場所を、フクシごと神原に潰される訳にはいかない。
フクシも、スギウラも、私が守る。
「ただいま」
「おう、紗那。帰ったか。お帰り」
「お父さんに少し話があるの。ここでいいから、聞いてくれる?」
「ああ、どうした?」
「実は――」今日、神原の家に行く事になった経緯、彼に言われた事や、縁談を受けようと考えている事を父に話した。「――という訳なの」
父は私の話を聞いているうちに、みるみる険しい顔になっていった。
「私、フクシを守りたい。私が断れば、神原は姑息な手でフクシを訴えると思う。彼が一連の事に関して、繋がっている証拠みたいなものがあれば、裁判を起こされても勝てると思うのだけれど、でも、やっぱり裁判なんかダメ。フクシのイメージが悪くなっちゃうし、銀行の融資も牛耳られているのよ。きっと他行を当たっても・・・・資金繰りは難しいと思う。資金がなくちゃ、あの一万足の材料を使って新商品を開発できない」
「福士社長には相談しないのか?」
「あの人には、言いたくない。言ったら・・・・私の為にフクシを追い込ませてしまうもの。下手をすれば、倒産の危機もあるのよ。高丸さんを口説いて新商品開発にようやく全力を注げるようになったのに・・・・私、彼に恩返しがしたいの。一年前、スギウラ(わたしたち)を救ってくれたでしょう。資金繰りにゆとりがなかったから、随分無理な借り入れをさせてしまったのも、フクシの決算書や帳簿を見て後から知ったの。今度は私が、苦しいフクシの為に出来る事をしたい」
「フクシの為ったって、お前に出来ることが、あのいけすかねえ神原との結婚か? 他にもっと手はあるだろう。考え直せ、紗那。お前の幸せはどうなるんだ!」
父が怒り出した。
「落ち着いて、お父さん。私は、フクシやスギウラがきちんと稼働して、浅草のシューズ業界を盛り立ててくれることが一番の幸せなの。お父さんの背中を見て育ってきたんだから、そう思うのは当然でしょ。神原に嫁いでも、私一人だったら何とでもできるわ。でも、会社単位となると、私一人の小さな力じゃどうにもできないもの。だから、ね?」
「紗那・・・・」父は珍しく弱気に肩を落とした。「なにもできねえ、情けない父親ですまん」
さあ。神原と結婚する事を決めたって、両親に伝えなきゃ。
とりあえずお父さんから言おうかな。
家の中を探すと、父はまだ工場で働いていた。秋からどんどん忙しくなるから、何時も遅くまで頑張ってくれている。私は働き者の父を、誇りに思う。
だからこの場所を、フクシごと神原に潰される訳にはいかない。
フクシも、スギウラも、私が守る。
「ただいま」
「おう、紗那。帰ったか。お帰り」
「お父さんに少し話があるの。ここでいいから、聞いてくれる?」
「ああ、どうした?」
「実は――」今日、神原の家に行く事になった経緯、彼に言われた事や、縁談を受けようと考えている事を父に話した。「――という訳なの」
父は私の話を聞いているうちに、みるみる険しい顔になっていった。
「私、フクシを守りたい。私が断れば、神原は姑息な手でフクシを訴えると思う。彼が一連の事に関して、繋がっている証拠みたいなものがあれば、裁判を起こされても勝てると思うのだけれど、でも、やっぱり裁判なんかダメ。フクシのイメージが悪くなっちゃうし、銀行の融資も牛耳られているのよ。きっと他行を当たっても・・・・資金繰りは難しいと思う。資金がなくちゃ、あの一万足の材料を使って新商品を開発できない」
「福士社長には相談しないのか?」
「あの人には、言いたくない。言ったら・・・・私の為にフクシを追い込ませてしまうもの。下手をすれば、倒産の危機もあるのよ。高丸さんを口説いて新商品開発にようやく全力を注げるようになったのに・・・・私、彼に恩返しがしたいの。一年前、スギウラ(わたしたち)を救ってくれたでしょう。資金繰りにゆとりがなかったから、随分無理な借り入れをさせてしまったのも、フクシの決算書や帳簿を見て後から知ったの。今度は私が、苦しいフクシの為に出来る事をしたい」
「フクシの為ったって、お前に出来ることが、あのいけすかねえ神原との結婚か? 他にもっと手はあるだろう。考え直せ、紗那。お前の幸せはどうなるんだ!」
父が怒り出した。
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