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スマイル26

頼れる場所・5

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「なあ、美羽。困ってんなら、櫻井グループが経営してるホテルでも使うか? とりあえず別の場所に移るだけなら、今すぐにでも手を貸せるぜ。勿論、金なんて取らねーよ」

 俺の言葉に、美羽は顔を上げた。

「ありがとう。でも、ホテルじゃ一時しのぎでしょう? 結局落ち着ける先がなくっちゃ、一緒なのよ。自立して、生活できる支援が無いと・・・・何の解決にもならない」

「でも、そうも言ってらんねーだろ。あの親父の様子じゃ、何しでかすかわかんねーぞ。いつでも俺が傍にいてやれりゃいーけどよ、それは無理だし、受け入れ先が決まんなくて、チイをこのままマサキ施設に残しておくのかよ。それこそ解決になんねーだろ。落ち着ける先なら、ホテル住まいしながらでも探せんだろ。俺に頼ること遠慮してんなら、そんなもんは不要だ。お前だけじゃなくて、ガキ共が困ってんなら、俺が何時でも助けてやるっつーの! 俺だって、ガキ共の事、メチャクチャ大事に思ってんだ。だから、ガキ共が困ってんなら、俺にも守らせてくれ。力貸してやりてーんだ」

 
「王雅・・・・」

「できるだけ遠くの方がいいか? それとも、近県の方がいいか? 今すぐ手配してやる」

「じゃあ・・・・できるだけ遠くに」

「ラジャー。っとその前に。礼は貰うぞ、お前から」

「お礼? えっ、――っ、んっ・・・・」


 美羽との間合いを素早く詰めた。俺はそのまま美羽の唇を塞いで、舌を押し入れた。
 あまりに突然の事で、目を見開いて驚いて、抵抗するのも忘れてるようだった。


「んっ、うんっ・・・・んんっ、ふぅっ、っぁ、はっ・・・・!」

 
 舌を噛みつかれる覚悟だったんだけど、不意打ちが良かったようで、美羽は俺のされるがままだ。

 久々の美羽とのキス、スゲー気持ちいい。

 もうこのまま、ここで抱いてしまいてーなって思う。でも、それは同意取らなきゃ進めないのは、もうちゃんと解ってるからそれはしないけど。
 だから、同意は今日取るぞ。あんな妄想まで見た――週末のビジネスマンなんだ、俺は。いつまでも指咥えて黙って見てるだけの男だと思ったら、大間違いだぜ。


 散々口内を貪った後、唇を離して、ニヤリと笑ってやった。
 ああ、やっと俺らしい雰囲気を取り戻した。
 もう、遠慮しねーぞ。俺は何時までも淋しい子供じゃねーからな。大人のエロくて危険な男だってこと、お前に解らせてやる。


※挿絵・紗藏蒼様
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