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スマイル29

双子の兄妹・6

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 キューマに当たらないように気を付けて、俺は奴等の紙の剣を素早く奪い、遠くへ投げ捨てた。

「そんな攻撃、俺様には効かん。キューマ、やれっ」

 またもよろよろと歩くキューマを、ライタとリョウは心配そうに見つめている。キューマはそのまま二人の所まで必死に歩いて行って、捕獲に成功した。

「よし、よくやった! キューマ、そのまま押さえとけ」

 俺はキューマを振り切って逃げようとしている二人を、素早く捕まえた。「俺様に攻撃するなんて、百万年早いっつーの」

 二人まとめてくすぐった。

「王雅にぃ、やめてーっ! きゃぁはははははーっ」

「はははははっ、もう、ごめんなさーいっ、まいったぁ―!」


 今日もイイ感じで、俺様とキューマの勝利になりそうだ。
 こんな風にして遊んでいると、遊戯室に美羽が現れた。

「みんな、今日はごめんね! 急にお客様がいらっしゃったから、お遊戯できなくて。もう帰られたから、今からいっぱいお遊戯しましょう」

 キノコ達はとりあえず帰ったのか。時計を見ると、十時四十五分だった。一時間半位、居たんだな。思い出話に花を咲かせたに違いないが、キノコが美羽にちょっかいかけてないか、心配だ。

 ま、今日の所はもう安心だが、何時やって来るかわかんねーから、安心はできない。
 だからキノコ兄妹は、もう二度と施設には来ないで欲しいと願う。
 
「先生、別にいーよー! 王雅にぃと遊んでるからー」

「きゃあーっ、おーちゃんが来たーぁ」
 
「逃げろーっっ」


 バタバタと走り回っていた俺達に向かって美羽が声をかけたが、誰も聞いちゃいねー状態だ。

「美羽先生を捕まえろ! キューマ、いけっ」

 美羽も巻き込むことにした。
 キューマなら、上手く美羽を捕まえられるだろ。

 今だけはキノコの事考えずに、楽しく笑いたい。
 美羽の笑ってる顔を、ずっと見ておきたい――そう思っても、キノコが俺の目の前をチラついて仕方ない。


 このままノコに、お前を盗られちまうのか?


「捕まえた」



 キューマに捕獲させておいた美羽を、俺はガキ共の目もはばからず、抱きしめた。


 
 
 なあ、美羽。
 お前、俺以外の男に心傾けてしまうつもりなのかよ。


「絶対、離してやんねーからな。他の男のトコなんて、行くなよ?」耳元で囁いた。


 キノコに盗られる前に、このままキスして、全部奪ってやりたい。
 美羽は俺のものだって証を、お前の身体に刻み付けてやりたい。


 お前を、盗られてたまるか!


 お前が居なきゃ、俺はもう生きていけねーんだ。


 幼い頃に結婚の約束したとか、俺には関係ない。そんなの、時効だ。
 キノコの所へ行くなんて言い出しても、絶対赦さねーし、行かせねーぞ!


 美羽を手に入れる為に、俺はキノコと戦うまでだ。
 俺は強いんだ。言うなれば勇者だ。いや、魔王か? そっちの方がしっくりくるな。

 じゃ、魔王でいい。姫(みう)を、手に入れるんだ。
 魔王が姫を手に入れる話だって、あんだろ。
 無かったら、俺が作る。魔王と姫は結ばれて、ハッピーエンドだ。これっきゃねーだろ!


 だからキノコなんて雑魚モンスターは、最強の魔王(おれ)が返り討ちにして、山に追い返してやるからなっ!!
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