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生い立ち・1

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 施設に着いた。株価をチェックすると、たった数分で見事に悲惨な底値の金額まで値下がりしていた。
 これじゃあ、売ることもできねー。ま、架空会社のこの株が今後上昇を見せる事は無い。
 借金、決定だな。
 随分貯めこんだお前の資産も、これでパーだ。

 施設の土地も、偽造して俺から奪い取ったモンだって証明するから、これもすぐに手元に戻る。
 ま、どっちみち借金抱えたんじゃ、この土地だって差し押さえされんだろーけどな。そうなった時の手配も、既に整えてある。俺が押さえた。



 この土地はもう、絶対に誰にも渡さねえ。



 美羽。ようやくお前を取り返す事ができるんだな。
 お前の生い立ち、横山に聞いて驚いた。お前がこの土地、施設そのものに拘ったのは――きっと、俺の想像もできないような、辛い理由なんだろーな。

 でも、そんなの俺には関係ねー。

 俺は、お前を絶対に取り返して、手に入れるんだ!!


 久々の施設。二か月近く来なかったんだ。ボロ門は相変わらずだし、何も変わっちゃいねー。

 俺の、大切な、大切な場所。


 もう二度と、誰にも汚させない。踏み荒らさせない!!


 横山と一緒に施設に入った。玄関と門は真秀に開けさせておいたから、難なく入れた。
 コトが済んだら花井を警察へ連行してもらえるよう、SPも施設の外に待機させてある。
 美羽の仕事部屋に、花井と真秀は居るハズだ。だから、俺は先に遊戯室へ向かった。

 ガキ共がいた。
 一、二、三・・・・数を数えたら全員、変わらず居た。誰一人、減っちゃいない。

 嬉しくて、叫びたくなった。
 ガキ共の姿を見ただけで、涙が溢れそうになった。



「お前等っ、元気だったか!」



 遊戯室に足を踏み入れ、声をかけた。


「おっ・・・・お兄さんっ!」

「おーっ!!」

「王雅にぃっ!?」

「おーちゃん!」

「お兄さんっ!!」


 俺は傍に駆け寄って来てくれたガキ共を、めいっぱい抱きしめた。


「ただいまっ! 待たせて悪かったな! 悪者を倒す準備ができたんだ! だから、帰ってきた!!」


「おかえりーっ!!」


 口々にお帰りって言ってもらって、マジ泣きしそうになった。
 あぁ、幸せだ。やっぱり俺は、マサキ施設が、お前等が大好きだ!!
 
「お前等、悪者を倒して、美羽先生を取り返すんだ! 俺様についてこいっ」

「おーっ!!」

 全員、ウルトライダーの剣を持ち出した。これはライタの誕生日パーティー後、俺が円プロに高額な謝礼を送ったお返しに、全員分送ってくれたモンだ。
 ただ、届いたものはそれだけじゃねーんだ。他の玩具も大量に届いたんだけど、美羽が他の施設のガキ共に分けたんだ。


 沢山あるものは、みんなで分けましょう――美羽は、そんな風にガキ共に言ったんだ。


 俺は何でも独り占めだったから、みんなで分けたりすることの大切さが良く解らなかったけど、スゲー優しい気持ちになれたんだ。
 だからケンカにならないよう、ライタが一番欲しかったこの剣だけを人数分施設に残し、他は全部別の施設にやっちまったんだ。

 他の施設のガキ共が、マサキ施設宛にお礼の手紙を送ってくれたのを見た時、ガキ共も喜んでいたし、俺も嬉しくなったんだ。


「いくぜっ!! ついてこいっ!!」


 そんな優しさの詰まった大切なウルトライダーの剣を握りしめ、俺と横山とガキ共のパーティー全員で、悪者が待つ仕事部屋へ向かった。



 これで花井、お前を倒してやる!!


 
 俺と横山とガキ共パーティーで仕事部屋に向かうと、美羽と花井の声が聞こえて来た。


――美羽さん、さあ、行きましょう。

――触らなくても、自分で行けるわっ。

――反抗的な態度も、もう終わりですよ。貴女は今日から、私の妻になるんだ。



「そこまでだっ!!」


 バーン、と思い切り派手な音を立てて扉を開け、全員で中になだれ込んだ。
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