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ラストスマイル

世界一の男・1

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 あれから暫く月日は流れた。
 季節は、もうすぐ春になろうとしていた。

 今日は、美羽との結婚式を行う日だ。
 本当はもっと早く式を挙げたかったんだけど、キングフェザーが驚異的な忙しさを発揮してしまい、ゆっくり休みを取ることが出来なかったんだ。
 新婚旅行もまだ行けていない。だから、結婚式が終わったら、明日から全員で新婚旅行に出発するんだ。


 そうそう。ガックンやリカは、この春でマサキ施設から巣立って別の施設へ行くことになっていたが、俺の猛反対に合い、結局サトルと同じく学童扱いにすることになり、学校へ行ったらマサキ施設に帰って来るという流れになった。

 俺が美羽に懇願したのが効いたのか、マサキ施設には春から人手を増やすとかで、現状そのままガキ共が施設を出ない限り、ずっと預かれるようにするんだとか。

 何時かは別れが来ると思う。でも、それはできるだけ先がいい。

 二人には、入学祝いにスーツとランドセルをプレゼントした。
 ガックンは本革のカッコイイ黒色のランドセルを、リカには同じく本革の洒落た赤色のランドセルを贈った。二人のリクエストの色だ。きっと似合うだろう。

 二人はもう、俺様の子供みたいなモンだ。入学式は絶対ビデオカメラ持って行って、保護者として参列しようと思ってる。来年は内藤と一緒に、サトルの入学式にも行くつもりだ。勿論他のガキ共の入学式にも行くぞ。全員の入学式に参列するからな。


 仕事は入れない。何が何でも、絶対に休む。
 ウエスティンのタヌキ社長が、合同経営発表の仕事より娘の食事優先させた気持ち、スゲーよく解る。子供との時間は大切だからな。

 俺は美羽と出逢って、血のつながりというのは本物の親には敵わないけど、大切な子供を、本物の親以上に愛情をかけて育てる事はできるという事を知った。


 だって、美羽がそうだから。


 真崎夫婦が育てた美羽は、世界一立派な娘だと思う。
 そんな世界一の女と、俺は今日、結婚式を挙げるんだ。
 サイコーに幸せだ。


 そうそう。施設での生活は、とても充実している。
 仕事がメチャクチャ忙しいから、施設に帰るのは午前様になる事が多いけど、美羽は必ず起きて待っていてくれるから、どんなに仕事が遅くなっても、俺も必ず美羽の元に帰っている。
 朝はガキ共と一緒に美羽の美味い飯食って、全員のいってらっしゃいで送り出してもらえるんだ。

 こんな幸せな事ってねーぞ。

 俺は一生、この幸せな生活を続けるんだ。


 ああ、でも、思い起こせば美羽とは、クラブ雅で水ぶっかけられて、ビンタされたトコから始まったんだよな。
 あん時美羽に出逢ってなけりゃ、今俺はここに居ないんだな。
 うすら寒いあの城みたいな自分の家だった場所に、今でもまだ住んでいたんだろーな。
 適当に侍らせた女も飽きたらポイ捨てして、きっと最低な男街道を進んでいたと思う。


 美羽が俺を、まともな人間に矯正してくれたんだな。


 
 最近思うんだ。
 俺のオヤジやオフクロは、もしかしたらこんな温かい世界を知らないのかもなって。
 たっぷりの愛情で包んで貰った事、一度も無いのかもなって。


 誰か教えてやれるヤツがいたら、二人も変わるのかもしんねーなって。


 まあ、親のコトは別にもういいんだ。
 櫻井家は、本当に俺の中でどーでもいい存在だし。
 家は出たけど、給料欲しいからとりあえず櫻井グループの取締役として君臨はしているけど、そのうち手を引きたいな。

 あんなクソオヤジでも、あそこまでの会社を経営できてんだ。その上を行く会社を、俺はこれから作っていきたい。
 まあ、人間としてはどうかと思うが、経営手腕は流石に素晴らしい。だからこそ、こんなに資産を築けたんだ。


 ま、櫻井グループが飛躍的に伸びたのは、俺の功績もデカイと思うけどな。俺が抜けた穴はそうそう埋まんねーと思うけど、まあ後は頑張ってくれ。俺はもう知らん。


 俺にはキングフェザーがあるから、櫻井グループを辞めても問題は無い。政治家になる為の勉強も頑張っているんだ。
 そのうち政党立ち上げて立候補するから、見かけたらヨロシクな。
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