王様スマイル

さぶれ@6作コミカライズ配信・原作家

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スマイル36・王様の帰還

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「どうぞ」


 了承の声を掛けると、嬉しそうな顔の花井と、相変わらず金魚のフンみたいに花井の傍についている真秀君が、仕事部屋に入ってきた。
 こんな朝早くから、よっぽど私を手に入れたいのね。
 でも、残念ね。私に美幸おかあさんの血は、一滴も流れていないのに。
 これを知った時の花井は、どんな風に取り乱すのかしら。

 最高のタイミングで、何時か貴方に伝えてあげる。
 絶対に、いつか。

 絶望を知るがいいわ。


 アンタが私に与えてくれた絶望、それ以上に地獄を見ればいい。


「美羽さん、さあ、行きましょう」


 ニヤニヤ笑っていて、本当に気持ち悪い。
 傍に来て、肩を撫でられた。

「触らなくても、自分で行けるわっ」

「反抗的な態度も、もう終わりですよ。貴女は今日から、私の妻になるんだ」


 やっぱりイヤ!
 覚悟を決めたのに、ちょっと肩に触れられるだけでこんなに鳥肌が立って、身体の全てで花井を拒否してる。




 王雅。




 王雅、助けて――・・・・





 


「そこまでだっ!!」






 バーン、と思い切り派手な音を立てて扉が開いたと思ったら、子供たちと王雅や横山さんが中になだれ込んできた。

「ミュー先生を守れっ!!」

 子供たちが、ライタ君のパーティーイベントの時、誕生日のお祝いにって、イベント会社の方が人数分送って下さったウルトライダーの大事な剣を掲げ、勇ましい顔で私を守るように取り囲んでくれた。

 みんな、まるで勇者の様だわ!


「おやおや、これは一体?」花井が驚いて肩をすくめている。

「美羽、ワリぃな、帰って来るのが遅くなっちまって。でも、もう大丈夫だからな!」

「王雅・・・・」


 本当に、本物なの?


 もうっ。帰って来るのが遅いわよ!
 待ってろって言って、この私を待たせすぎじゃないの!?


 でも、張りつめていた糸が切れたみたいに、身体に力が入らなくなった。


 気合を入れておかないと泣き崩れてしまいそうだったから、必死に気力を振り絞って立った。



 王雅が、帰って来てくれた。


 それだけで嬉しくて、胸がいっぱいになった。
 
「・・・・櫻井の坊ちゃんの仕業ですか。もうここへは二度と来るなと、警告したハズですが?」

「お前、誰に断ってそんな事言ってんだよ。この土地は俺のモンだ。お前のモンじゃねーよ」

「あぁ? 何言って――」

 王雅は花井に詰め寄って、取り出した書類をヤツの目の前に突きつけた。

「俺の土地だったっつー証拠だ。お前が権利書を偽造した証明だ。公文書偽造――これで警察にお前を逮捕してもらう」

「そんな偽の証拠書類なんか――」

「偽じゃねーことは、偽造書類作るのが得意なお前が、一番よくわかってんだろ?」更に王雅は笑顔を湛えている。「そうそう。レディアトゥルの株、沢山買ってくれてありがとよ。お陰で儲かったぜ」

「なっ・・・・なんで・・・・レディアトゥルの株の事を・・・・」

 真秀君が王雅の傍について、ノートパソコンを開いて画面を花井に見せた。
 証券取引の画面が映し出されている。それを見て花井が目を剥いて口をぱくぱくさせ、陸に上げられた魚のようになっていた。


 ああ。これは王雅がきっと、花井を追い詰める為に何か仕掛けをしてくれたのね。私には良く解らないけど、花井の顔を見れば相当なダメージを与えた事は判るもの。
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