王様スマイル

さぶれ@6作コミカライズ配信・原作家

文字の大きさ
232 / 287
スマイル37・王様のプロポーズ

しおりを挟む
「美羽ねーちゃん。あのさ、王雅の事だけど」

 突然、真秀君が真剣な顔で私を見つめた。

「王雅がどうしたの?」

 さっきの話を蒸し返すつもりなのかしら。
 だとしたら、止めて欲しいんだけど。

「王雅のキモチ、まだ疑っているの? 王雅の美羽ねーちゃんに対するキモチは、偽物だと思ってる?」

「それ・・・・真秀君に答えなきゃいけない?」

 彼の言葉を突っ撥ねようとする私を、違うよ、そうじゃない、と真秀君は窘(たしな)めた。
 
「あのさ。美羽ねーちゃんが花井に指一本触れられず、今日まで無事でやってこれたのは、本当にただの偶然だと思ってる? 花井がただ約束を律儀に守っただけだって、思っているなら違うよ」

「・・・・どういう意味?」

「それは、美羽ねーちゃんを守る為に、王雅が方々手を尽くしていたってコトだよ。知らなかっただろ? 誰にも言うなって、王雅は固く全員に口止めしていたからな。恭さんや、横山さん、まりなちゃんに、商店街の人たち――・・・・みんな、美羽ねーちゃんを守ってくれていたんだよ」


 その言葉に、思わず息を呑んだ。


 だからだったんだ。
 王雅がアメリカへ出発してから、毎日まりなちゃんが朝と夕方に施設に顔を出してくれた事や、横山さんや恭ちゃんに菫ちゃんが、まるでローテーションを組んでいるかのようにしょっちゅう施設に来てくれて、子供たちと遊んでくれたりしたのね。
 時々、平岡さんや町田さんに片山さん・・・・一人だったら大変だろうって、御用聞きだって、わざわざ施設に来てくれて・・・・。

 それはただ私を助けてくれていたからだけじゃなくて、花井から私を守ってくれていたのね。

 人目があったら、花井は手を出さない。私だって花井から逃れられるものね。

 

「そうだよ。王雅の計らいで、代わる代わる施設に誰かを派遣させていたんだ。出来ない時は、俺が花井の動きをチェックして見張ってた。王雅に逐一報告入れてたのも、俺だよ。横山さんや恭さんも手伝ってくれていたんだ。王雅がアメリカへ発つ前、みんなに必死に頼み込んで行ったんだ。俺もだよ。土下座されて頼まれた。ここまでして、美羽ねーちゃんを異国の地から守ってくれたのは、まぎれもなく王雅なんだ」


 そうだったの。王雅、貴方が私を――・・・・ずっと守っていてくれたのね。
 それを聞いただけで、嬉しくて泣きそうになった。


「王雅、何て言ってると思う? ようやく両想いになっても、美羽は俺に裏切られると思い込んでるから、全然コッチ側に踏み込んで貰えないって。ポイ捨てなんかしないのに、全然信用してくれないから参ってる、って言ってるんだ。なあ、美羽ねーちゃん。本当に王雅が、美羽ねーちゃんや施設のみんなを捨てたりすると思う?」

「・・・・私に、どうしろって言うのよ。こんな貧乏女、どう考えても御曹司のアソビじゃない」

「王雅みたいな男だったら、アソビの女くらい、お金で幾らでも買えるよ。でも、美羽ねーちゃんは違うだろ。アソビかホンキかどうかくらい、わかってやってよ」

「ホンキになられても困るわ。だったら、アソビの方がマシよ。遊んで捨てられたなら、笑い話に出来るでしょ」

「だからどうして、捨てられる事になるのさ」

 真秀君もほとほと困った顔になっている。きっと王雅の話をすれば、私が彼の事をもっともっと信用するとでも思っていたんでしょう。

 でもね、甘いわよ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

田古みゆう
恋愛
推し活女子と爽やかすぎる隣人――秘密の逢瀬は、推し活か、それとも…? 引っ越し先のお隣さんは、ちょっと優しすぎる爽やか青年。 今どき、あんなに気さくで礼儀正しい人、実在するの!? 私がガチのアイドルオタクだと知っても、引かずに一緒に盛り上がってくれるなんて、もはや神では? でもそんな彼には、ちょっと不思議なところもある。昼間にぶらぶらしてたり、深夜に帰宅したり、不在の日も多かったり……普通の会社員じゃないよね? 一体何者? それに顔。出会ったばかりのはずなのに、なぜか既視感。彼を見るたび、私の脳が勝手にざわついている。 彼を見るたび、初めて推しを見つけた時みたいに、ソワソワが止まらない。隣人が神すぎて、オタク脳がバグったか? これは、アイドルオタクの私が、謎すぎる隣人に“沼ってしまった”話。 清く正しく、でもちょっと切なくなる予感しかしない──。 「隣人を、推しにするのはアリですか?」 誰にも言えないけど、でも誰か教えて〜。 ※「エブリスタ」ほか投稿サイトでも、同タイトルを公開中です。 ※表紙画像及び挿絵は、フリー素材及びAI生成画像を加工使用しています。 ※本作品は、プロットやアイディア出し等に、補助的にAIを使用しています。

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

溺愛のフリから2年後は。

橘しづき
恋愛
 岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。    そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。    でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

距離感ゼロ〜副社長と私の恋の攻防戦〜

葉月 まい
恋愛
「どうするつもりだ?」 そう言ってグッと肩を抱いてくる 「人肌が心地良くてよく眠れた」 いやいや、私は抱き枕ですか!? 近い、とにかく近いんですって! グイグイ迫ってくる副社長と 仕事一筋の秘書の 恋の攻防戦、スタート! ✼••┈•• ♡ 登場人物 ♡••┈••✼ 里見 芹奈(27歳) …神蔵不動産 社長秘書 神蔵 翔(32歳) …神蔵不動産 副社長 社長秘書の芹奈は、パーティーで社長をかばい ドレスにワインをかけられる。 それに気づいた副社長の翔は 芹奈の肩を抱き寄せてホテルの部屋へ。 海外から帰国したばかりの翔は 何をするにもとにかく近い! 仕事一筋の芹奈は そんな翔に戸惑うばかりで……

遅咲き鬱金香(チューリップ)の花咲く日

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
巴 金香(ともえ このか)は寺子屋で教師手伝いをしている十九才。 母を早くに亡くし父親は仕事で留守であることが多く、家庭の愛情に恵まれずに育った。そのために自己評価の低いところがあり、また男性を少し苦手としている。そのため恋にも縁がなかった。 ある日、寺子屋に小説家の源清 麓乎(げんせい ろくや)が出張教師としてやってくる。 麓乎に小説家を目指さないかと誘われ、金香は内弟子として弟子入りすることに……。 【第一回 ビーズログ小説大賞】一次選考通過作品

Fly high 〜勘違いから始まる恋〜

吉野 那生
恋愛
平凡なOLとやさぐれ御曹司のオフィスラブ。 ゲレンデで助けてくれた人は取引先の社長 神崎・R・聡一郎だった。 奇跡的に再会を果たした直後、職を失い…彼の秘書となる本城 美月。 なんの資格も取り柄もない美月にとって、そこは居心地の良い場所ではなかったけれど…。

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

処理中です...