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スマイル37・王様のプロポーズ
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しおりを挟む「真秀君、まともに考えてみてよ。王雅は今、確かに私の事はホンキかもしれない。でも、その先は望めないの。わかる? こんな貧乏女が、王雅みたいな男に釣り合うワケないもの。家柄だって様々な弊害があるし、どんなに努力しても、捨てられて終わりなのは目に見えているでしょう。だから、その先に進むのはイヤなの。結果が解っているのに、惨めになりたくないから。だからこの話はもう、これで終わりにして」
淡々と告げると、真秀君はまだ何か言いたそうだったけど、仕方なく引き下がった。
貧乏を負い目に感じるキモチは、真秀君なら痛い程解ってくれると思う。
これはどうしようもない事だもの。何ともならない事だし、自分ではどうにもできない事だから。
キンコーン
真秀君と話していると、施設の来客を告げるチャイムが鳴った。
「真凛ちゃんかしら? 一緒に行きましょう」
二人で玄関に向かったら、真凛ちゃんが立っていた。私の顔を見て、目を潤ませている。
「ミューちゃん、ごめんねぇっ!」
履いていたスニーカーを乱暴に脱ぎ捨て、真凛ちゃんが私に飛びついてきた。「ミューちゃんを裏切るような事をしちゃったのに、私たちの事、赦してくれてありがとう。本当にゴメン。ごめんね!!」
「いいのよ。もう終わった事だもの。あなたたちが本当に私を裏切ったんじゃ無かったって、知れて良かったわ。ただ、花井に脅されていただけ。そうでしょう?」
「ミューちゃん!!」
真凛ちゃんは、声を上げて泣いた。ごめんなさいを、繰り返し何度も私に伝えてくれた。
もういいのに。二人が心から施設を裏切り、花井に加担していたんじゃないって、十分伝わったから。
あの卑劣な男が悪かっただけよ。困ったのは確かだけど、結局みんなに助けて貰ったし、キズものにされたワケでも無いしね。
「真凛ちゃん、もういいから、泣かないで?」
「うん。ホントにゴメンね」
二人で顔を見つめ合って、笑った。
ああ、本当に良かったわ。真凛ちゃんとこうしてまた、笑える日が来るなんて。
「さあ、ミューちゃん。今日は私がミューちゃんを華麗に変身させてあげる。見ていて! 腕によりをかけるから! あ、真秀は子供たちをヨロシクね」
あ、真秀君の呼び名――『お兄』から『真秀』に変わっている。
ああ、本当に二人は結ばれたのね。恋人になれたのね。
これからふたり、誰にも祝福されず大変だと思うけど、世界中の誰が反対しても、私は彼等の恋を応援したいと思う。
本当の兄妹で恋愛するなんて世間から見たら背徳行為だろうけど、辛く苦しいこの世の中を、幼い頃からたったふたりだけで生きて来たんだもの。愛し合う経緯になってしまった事を、誰も笑う事は出来ないわ。
「ミューちゃん。いっぱいお話しよ。さ、行こう」
「ええ。じゃあ、真秀君悪いけれど、子供たちをお願いします」
「お安い御用。真凛、美羽ねーちゃんを世界一キレイにして」
「任せて。お姫様みたいにして、王雅を驚かせてやるわ!」
真凛ちゃんはそう言って、得意げに笑った。
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