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Office03・知れば知るほど
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昼休みになると、真吾君がまとわりついてきた。
「和歌子さんっ、一緒にお昼食べましょう」
しっしっ、と真吾君を追い払っていると、アヤネが現れた。「あら、先約? モテる女は大変ね~」
楽しそうに笑っている。オイ、アヤネ。笑い事じゃないんだ。
タチの悪い、悪霊に憑りつかれちゃったよ。彼氏とかじゃなくて、悪霊だよ?
ホント、最悪だわ。
「そうなんです。俺、和歌子さんとたった今先約しちゃったし、和歌子さんの事口説くつもりなんで、江藤さんは邪魔しないで下さいね―」
「まっ、可愛くない後輩!」
「最高の褒め言葉、有難う御座います」
「まあ、頑張りな。和歌子は手強いよ」
「ええ。知ってます。でも、頑張ります」
何故か息ピッタリの二人。
私はとばっちりを喰らう前に逃げ出そうとしたが、真吾君にガッチリ掴まれて逃げるに逃げられなかった。
「夜は三輪さんに譲ってるんです。昼くらい、俺に付き合ってくれたって、いいでしょ?」
「い・や・だ」
「イヤだイヤダも好きのうち~! さ、何食べに行きましょうか?」
きーてんのか! 人のハナシ。
いやだっつってんだよ――!!
「アンタねえ! いーかげんにしなよ!!」
「あ、三輪さん」
えっ!? 三輪さんっ!?
私は怒鳴ったせいで大きな口を開けている事に気づき、両手で口を塞いだ。
しかし真吾君は、ウソですよーと天使のような悪魔の笑顔を漏らして、私は手をガッチリ掴んでランチへと連れ出した。
お気に入りのベーカリーのランチセットを目の前に、ぶすっとしながら頬杖をつく私と、ニコニコ笑顔の真吾君。
結局、今日のキス&涙事件のお詫びにランチをご馳走してもらう事になった。
本当なら断っているんだけど真吾君はあまりに強引だし、何より急に入った一昨日の三輪さんとデートに着て行く為の洋服とサンダルの出費が、非常に財布を圧迫していた。
ランチ、奢ってもらえるなら多少は我慢しよう。定期貯金解約してまでお金、下ろしたくないし。
というわけで、仕方なく真吾君の前に座っているのだ。
けど、折角のランチも全然美味しくない。不愉快だが、OLのランチ代一回分浮くのは結構有難いのも本音だった。
「そんなに怒ってばっかりいたら、カワイイ顔が台無しになっちゃいますよ」
「余計なお世話」
「俺が困ります。俺の好きな和歌子さんの顔が台無しになるなんて」
「・・・・真吾君、ハッキリ言っていい?」
「ダメ」
「・・・・・」
この子のペース、ついてけない。
はあ、とため息ついて、ランチセットのサンドイッチを頬張った。
食べなきゃやってらんないわ。ケーキも追加してやるんだから。
「ねえ、和歌子さん。どうして三輪さんなの? 俺じゃダメですか? ほーよーりょく、結構あると自負してますが」
「ほーよーりょくあるなら、私に付きまとわないで」
「それは出来ない相談です」微笑を返された。
「じゃ、私からも聞くけど、どーして私なのよ? 自分で言うのもなんだけど、貴方がそんなに熱をあげるような価値ないわよ、私。平凡だし」
「知ってます」
「・・・・はっきり言わないでくれる?」
ハラタツわぁ。
「俺は、物事をハッキリ言うタイプなので、包み隠さず正直に何でも言っちゃいます。アホじゃないんで、相手を見て区別しますけど」
「貴方は私の事が好きなんだったら、そんなにハッキリ言ってばかりじゃ、私に好かれないじゃない! 言ってる事、矛盾してない?」
「いいえ。貴女はウソが嫌いな人だし、隠し事やおべんちゃらを言う俺を演じてしまったら、きっとよく思ってくれません」
――今でもよく思ってないんだけど。
「あ、今でもよく思ってない、とか思ってません?」
ぶっ、と飲んでいたカフェラテを吹いてしまった。
やっぱりこの人、エスパーよ!
「和歌子さんっ、一緒にお昼食べましょう」
しっしっ、と真吾君を追い払っていると、アヤネが現れた。「あら、先約? モテる女は大変ね~」
楽しそうに笑っている。オイ、アヤネ。笑い事じゃないんだ。
タチの悪い、悪霊に憑りつかれちゃったよ。彼氏とかじゃなくて、悪霊だよ?
ホント、最悪だわ。
「そうなんです。俺、和歌子さんとたった今先約しちゃったし、和歌子さんの事口説くつもりなんで、江藤さんは邪魔しないで下さいね―」
「まっ、可愛くない後輩!」
「最高の褒め言葉、有難う御座います」
「まあ、頑張りな。和歌子は手強いよ」
「ええ。知ってます。でも、頑張ります」
何故か息ピッタリの二人。
私はとばっちりを喰らう前に逃げ出そうとしたが、真吾君にガッチリ掴まれて逃げるに逃げられなかった。
「夜は三輪さんに譲ってるんです。昼くらい、俺に付き合ってくれたって、いいでしょ?」
「い・や・だ」
「イヤだイヤダも好きのうち~! さ、何食べに行きましょうか?」
きーてんのか! 人のハナシ。
いやだっつってんだよ――!!
「アンタねえ! いーかげんにしなよ!!」
「あ、三輪さん」
えっ!? 三輪さんっ!?
私は怒鳴ったせいで大きな口を開けている事に気づき、両手で口を塞いだ。
しかし真吾君は、ウソですよーと天使のような悪魔の笑顔を漏らして、私は手をガッチリ掴んでランチへと連れ出した。
お気に入りのベーカリーのランチセットを目の前に、ぶすっとしながら頬杖をつく私と、ニコニコ笑顔の真吾君。
結局、今日のキス&涙事件のお詫びにランチをご馳走してもらう事になった。
本当なら断っているんだけど真吾君はあまりに強引だし、何より急に入った一昨日の三輪さんとデートに着て行く為の洋服とサンダルの出費が、非常に財布を圧迫していた。
ランチ、奢ってもらえるなら多少は我慢しよう。定期貯金解約してまでお金、下ろしたくないし。
というわけで、仕方なく真吾君の前に座っているのだ。
けど、折角のランチも全然美味しくない。不愉快だが、OLのランチ代一回分浮くのは結構有難いのも本音だった。
「そんなに怒ってばっかりいたら、カワイイ顔が台無しになっちゃいますよ」
「余計なお世話」
「俺が困ります。俺の好きな和歌子さんの顔が台無しになるなんて」
「・・・・真吾君、ハッキリ言っていい?」
「ダメ」
「・・・・・」
この子のペース、ついてけない。
はあ、とため息ついて、ランチセットのサンドイッチを頬張った。
食べなきゃやってらんないわ。ケーキも追加してやるんだから。
「ねえ、和歌子さん。どうして三輪さんなの? 俺じゃダメですか? ほーよーりょく、結構あると自負してますが」
「ほーよーりょくあるなら、私に付きまとわないで」
「それは出来ない相談です」微笑を返された。
「じゃ、私からも聞くけど、どーして私なのよ? 自分で言うのもなんだけど、貴方がそんなに熱をあげるような価値ないわよ、私。平凡だし」
「知ってます」
「・・・・はっきり言わないでくれる?」
ハラタツわぁ。
「俺は、物事をハッキリ言うタイプなので、包み隠さず正直に何でも言っちゃいます。アホじゃないんで、相手を見て区別しますけど」
「貴方は私の事が好きなんだったら、そんなにハッキリ言ってばかりじゃ、私に好かれないじゃない! 言ってる事、矛盾してない?」
「いいえ。貴女はウソが嫌いな人だし、隠し事やおべんちゃらを言う俺を演じてしまったら、きっとよく思ってくれません」
――今でもよく思ってないんだけど。
「あ、今でもよく思ってない、とか思ってません?」
ぶっ、と飲んでいたカフェラテを吹いてしまった。
やっぱりこの人、エスパーよ!
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