王女と王子の政略結婚 ー背の高い私と背の低い貴方と-

たま

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第九話 ご挨拶

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部屋には、既に私の侍女が待機していた。
もちろんカンタベルが用意しておいてくれた私付きの侍女もいる。
カンタベルの侍女は、私を見ても眉一つ動かなさなかった。
丁寧に私に挨拶をし、オタゴリアの侍女を立てつつ、動く。
私にきちんと敬意を払っているし、十分に教育されているのだろう。
旅装を解いたら着替えてカンタベルのアンドリュ-王とフィオナ王妃に謁見するのだ。
今日は、のんびりお茶を飲む暇もなさそう…

そう、文字通りお茶をのんびり飲む暇もなかった。
侍女が私を飾り立て、アンドリュ-王とフィオナ王妃に謁見し、また一旦部屋に戻り、王や王妃、ジェイコブ様と晩餐をご一緒して。
謁見の間で挨拶をした時は、アンドリュ-王も、フィオナ王妃も威厳溢れる国王夫妻だった。
裏に入り家族だけになると家族らしい気遣いをしてくれる、気さくな人達だった。
ニコニコと笑顔で話すフィオナ王妃。
話しているフィオナ王妃を見つめるアンドリュ-王の優し気な顔。
たまに無茶ぶりをふられて困った顔をして微笑むジェイコブ王太子殿下。
そしてまだ10歳の弟のアンドリュ-王子はシャイなのかあまり話してはくれなかった。
けど、13歳になる妹のジョアンナ王女は海のないオタゴリアが不思議だったらしく興味津々だった。

「それでは、アリシア王女は海を見たことがないの?」

「そうですね、海は自分の目では見たことがないですね。
アシュリ-川があるので、大きな川なら見たことありますけどね。
あ、オタゴリアは海がないかわりに、グレィマウス氷河がありますよ」

大きな目に好奇心を隠しきれないのか、瞳を輝かせて私を見つめてくる。
私には年下の弟妹がいないけれど、いたら、こんな感じなのだろうか。
心温まるような、ほのぼのとして晩餐。
これが、家族の晩餐なんだ、と驚いた。
私の父様と母様とは大違いだ。
父様は家族という単位で見ても王だった。
父様、と呼んだのは幼い頃だけで。
基本、私達は家族であっても陛下と呼んだ。
家臣の目がない場所ですら。
父というものは、必要最低限の会話しかしないと思うほど。
暖かい言葉をかけられたこともあるけれど、何だか褒章を授ける時のような言い方で。
私の記憶では一度も家族らしい会話をしたことがなかった。
おまけに言えば、一緒に食事をする時位しか父といたことがない。
それすら滅多にないのに。
そして母様も、愛情溢れる、とは言い難い人だった。
大切にされてはいた、と思うけど。
兄様がいなかったら、家族の愛情を知らなかったかもしれないな、と国王夫妻を見て思った。

そんなこんなで和やかに晩餐が終わり、食後の紅茶を飲んでいた時にフィオナ王妃がニコニコと私を見た。

「それにしても、アリシア王女はスタイルがすごく良いのね。
背筋もピンと伸びて、とても素敵だわ。
花嫁衣裳を見るのが楽しみだわ、ね、あなた」

フィオナ王妃はアンドリュ-王に同意を求めると、アンドリュ-王もそれに呼応する。

「そうだな、若いのに堂々としている。
流石オタゴリアの王女だけはある」

「そう仰っていただけるなんて、光栄ですわ」

微笑んで答えたけど、言葉通り素直に取れない。
どうしても、裏を読もうとしてしまうのは、私のコンプレックスのせいなのか。
視線の端にジェイコブ王太子殿下が見える。
彼も、微笑みながら頷いている。

一見すると和やかな時間を過ごしているように見えるけど、私もそうだが、王や王妃だって私を観察しているのが分かる。
そして、もちろん歓迎してくれているのも、分かる。
そりゃそうだ。誰だって同盟国との決裂は望んでいないだろう。

あぁ、なんだか、とても疲れた。
移動、挨拶、移動、挨拶、移動。
毎日のように変わる景色、人。
決して無理のある旅程ではなかったと思うけど。
王族の初顔合わせでこんな事を思うくらいは、疲れているらしい。

お疲れだろうから、と解放されたときは心底ホッとしてしまった。
でもそこでお終いではない。
仕事はまだ残っている。
王太子殿下のエスコ-トの元、部屋に戻る、そこまでが私の王女としてのお仕事だ。

チラリとみる王太子殿下は相変わらず堂々としていて。

「今日到着したばかりでしたのに、父や母との謁見や晩餐でさぞお疲れの事でしょう。
今宵はユックリと休んでください」

王城玄関から客室までの距離ほど歩くわけでもなく、無事に部屋にたどり着く。
また手をとられるかと思って内心ビクビクしていたのを知ってか知らずか。
ジェイコブ王太子殿下は流れるような仕草で手の甲にキスをする。

「おやすみなさい、アリシア王女。
良い夢を」

爽やか笑顔付き。
本当に、辞めて欲しい。
破壊力、強すぎる。
私の心臓は音が聞こえるのではないか、というくらいドキドキして。
比喩で無く、本当に。
おまけに身長的に私の胸近くに彼の耳があるわけで…
聞こえていたら、恥ずかしすぎる。

「おやすみなさい、ジェイコブ王太子殿下」

そう畏まって、挨拶すると彼は更に甘い笑みを浮かべた。

部屋に入っても、私の心臓はドキドキしっぱなしだった。
だって…
あんな風に、女の子扱いをされたことがなかったのだもの…
王女として丁重に扱われていた事しか、ない。
あれ、私ってもしかして。
いや、もしかしなくても。
…私、女として物凄く残念なのか…?
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