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第2章
*
しおりを挟む『それにね、』
まだ話は終わりでは無かったらしい。
段々と消沈していくあたしに気付いていないのか、それとも単に言いたいだけなのか。
真意は定かではないにしろ、イサゾーの言葉に関しては驚くほど敏感なあたしは勢いよく顔を上げる。
搗ち合った視線の先で悪戯っぽい笑みを浮かべたイサゾーはと言うと。
『アンタみたいな女って、割と同性から好かれるのよ』
「………えぇ」
『なに、その気の抜けた感じ』
「だってさー……、」
若干口を尖らせつつ、言葉にならない靄をどう表現しようか悩む。
別に女に好かれたって嬉しくないのに。……って、あれ?あたしはじゃあ、誰に好かれたいんだろう。
脳裏にポンと浮かび上がるユカリとアキホ。数秒遅れてアカネの姿も思い起こすものの、やっぱり何だか違う気がする。
気にしないようにしていても、やっぱりこの間言われた台詞が何処かチクリと痛みを残す。
うんうん唸って思案に暮れていると、徐に立ち上がったイサゾーを認めて瞬きを繰り返した。
『どう?もうご飯食べられそう?』
「……あ。 うん、大丈夫そう」
『そ。じゃあさっき買ってきたの温めてくるわね』
しっかりとタオルドライされた短髪は既に空気にふわりと乗っていて、イサゾーの甘い顔立ちをより際立たせる。
立ち上がったことでハニーブラウンに照明が集中し、柔な煌めきが眩しくて思わず瞳を細めた。
そっか。イサゾーもシャワー浴びてきたんだよね。
濃いグレーのスウェットに包まれた痩躯が扉の向こうに消えたことを悟り、細く息を吐く。
視界に映り込む自らの長髪。おんなじハニーブラウン。
イサゾーから借りた色違いの――黒のスウェットはぶかぶかで。
ドライヤーかけ忘れちゃったな、と思って小さく笑った。
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