その視界を彩るもの

疼木 沙紀

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第2章

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そんなことを思いながら、たらたら歩を進めていたから。



口を衝いて出てくる欠伸を噛み殺して、目尻に涙が浮かんでいたから。



………滲んだ視界を取り払おうと、無防備に目元を擦ったりしたから。





「―――……ッ!!??」








背後から現れた人間に、一瞬の隙も与えられずに口許を覆われてしまったのかもしれない。



完全に油断していたから。凡人のあたしが気を張ったところで然して意味は無いのかもしれないけれど、警戒しないよりはマシだと思う。



なのに、あたしは警戒は疎か目すらも開けていなかった。





苦しくて足掻いた。



鼻から口まで大きな手に全てを覆われている所為で、呼吸すら儘ならなくて暴れた。



「静かにしろ」とか、この間の万里少年みたいに何か言われたらまだ良かったかもしれない。





何も言わないから。口許を覆われて知らない方向に引き摺られるだけだったから。



恐怖が一気にその嵩を増して膨張し、どっぷり視界を占拠していく。






段々と霞みがかかってゆく目。明らかな酸素不足のために脳は思考を放棄し始めていて。



このまま意識を手放すのは時間の問題だと感じた。直感的に。








万里少年に引き摺られたときの何倍にも及ぶ恐怖。



脳の片隅に追い遣っていたゲーセンのときの出来事にも匹敵するかもしれない。



だって、あの子に連行されたときは何の関係もないことを考えている余裕があったから。





それに何より、あのときは。



近くにイサゾーが居たから。











「………ッ、……」







あのときは常に隣り合わせに感じていた「希望」は、残念ながら今は少しも感じられなくて。



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