ニュートラルからドライブへ

疼木 沙紀

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「お疲れさん」



「……お疲れ様です」



「ぶすっとすんなよ、ちゃんと見たからよ」





トントン、とその指で示すのは私の名前や写真が貼り付けられたボードで。









……、…それって生徒に見せちゃまずいんじゃないの?



そんな怪訝さをむき出しにした瞳を持ち上げると、唇の端をゆるりと上げた彼は面白げな声音で。







「まあ、受かったかっつうと微妙だけどな」



「いつも先に言うのやめてください…!」



「あー、修検のときは――」



「わーわー!」





慌ててシートから身体を浮かせ、その口を手で押さえ込んでしまおうと考えた私だったけれど。













「…っ、」





急に、でも、なんて言うか。



自分でもよく分からない動悸に呼吸を奪われ、持ち上げた腕は行き場を無くした。









そして、



「か、過去のことでしょ……」



余りの不体裁具合に、顔を思い切り背けてそう言葉を零すに留まる私。









そんな此方の様子を細めた瞳で視界に映した彼は、





「過去、ねぇ」





何か特別な感情を込めた声音でぽつりと洩らし、顔を窓へ向ける私の後姿を目視していて。



その口許には、何時も通りの笑みが刻まれていた。





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