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出会いと日常
テスト勉強4
しおりを挟むこの一週間はテスト勉強を真悠と重ねていった。最近では休み時間も彼は充希の教室に訪れるので英単語の練習や授業についての情報交換などを行う。
このテスト勉強会を機に、真悠と過ごす時間が増えた。真悠と昼休みを共にするのでだって当たり前になりつつある。
中学のときは遼がいつも一緒だった。部活もクラスも同じなことが多かったから、大概遼と一緒にいた。遼はクラスの中でもムードメーカーな存在で、高校になってもクラスメイトや部活メンバーにも引っ張りだこだった。昔はおれも陸上部だったからそういう輪には入れていたが、いまは違うし真悠がいる。遼と話す機会は減ったが、真悠がいるから俺は特別寂しくもなかった。
遼がクラスメイト達に囲まれながら談笑している様子をちらりと見て、真悠のもとへ充希は向かった。遼はそれを寂しげな目でクラスメイト達の隙間から見ていたが、充希は気づいてはいなかった。
真悠のクラスにいけば、真悠はカッコイイし人気者だったから彼を中心にたくさんの生徒が囲んでいた。でも、俺の存在に気づくと、真っ先に真悠は俺の方へ来てくれていつもそこが嬉しかった。
「充希ご飯食べいこ」
「あ、うん」
先ほどまで囲んでいたクラスメイト達に真悠は軽く手を振って、充希と屋上へ向かう。真悠は俺のことを優先してくれる。それが真悠の1番の友達だと思われてるようで、充希は心なしか機嫌がよかった。
「明日からテストだね」
「そうだね」
基本的には暗記物は一人で覚えたい派の充希は、テスト期間だけは家で一人で勉強したいと真悠に告げた。
「そうだね。じゃあ、テストの結果わかったら一番に俺に伝えに来て?」
「うん。そうだよね、手伝ってもらったからすぐ伝えに行く!真悠もすぐ教えて」
「うん」
にこりと真悠は満足そうに微笑んで、前へ向き直った。
・・・・それからテストを3日間受け、一日目にあった国語と数学は翌日の午後にはすぐ結果が返ってきた。
採点が早いことも驚いたが、数学が思っていたよりも高得点でHRを終えると真っ先に真悠のクラスへ走った。
「真悠、数学90点だった!」
「やったじゃん、充希」
真悠とクラスの前の廊下で結果を告げる。帰宅しようとしている生徒や部活に向かう生徒に見られながら、真悠はよしよしと充希の前髪を撫でた。
「真悠は?」
「国語の結果、さっき返ってきて95点だった」
驚いた。俺よりも全然点数が良い。教えた側なのに点数が低くて充希は少し落ち込んでしまう。
真悠のほうが点数高い…と小さく呟くと「たまたまだよ。充希のおかげだよ、本当にありがとう」と体を抱きしめられて、真悠が頑張った結果なのだから祝福しようと充希は真悠の背中をポンポンと叩いた。
「ミツキ~!あ、マユもいるしちょうどいいじゃん!」
遼が俺たちを見つけるとこちらへ駆け寄ってきた。後ろには高校の陸上部メンバーが固まっていた。先輩もいるのか知らない顔や大人びた人もいた。
「遼、どうしたの」
「実は中間テスト終わったからさ、やっと新歓やろうって話になってさ」
(また、新歓の話…)
充希の顔がこわばる。充希は陸上部に入ろうという気持ちは今も全くなかった。夜走っているのもテスト勉強のためにやめている。
充希は断ろうと、無理やり苦笑いをした。
「充希もおいでよ」
真悠が急にそう言った。充希は部活に入る気はないと真悠に何度か言っていた。しかし彼はそう言った。
充希が驚いてる間にさっと右手を真悠に握られる。しかも自然な手つきで指が絡められた。真悠と充希の指が交差する。
遼はそれに気づいてないのか、「そうだよ、マユも言ってるしこいよ!中学のメンバーは何人かいるし、俺とマユもいるからさ」と元気に勧めてきた。
(行きたくない。俺入るつもりない…)
「ね、充希もおいでよ」
充希の心でも読んだのか、きゅっと指全体を逃がさないようにより深く真悠の手が密着した。なぜか拒否する言葉が出なくなってしまう。
…結局、充希は「わかった」と新歓の件を了承してしまった。充希の冷めざめとした顔に対して、遼は大きな声で「よっしゃー!」と喜び、陸上部メンバーに急いで伝えに走る。
てっきり、真悠は無理しなくていいと言ってくれると充希は思っていた。
真悠がどうしてそんなことを言い出したのか分からない。いつも俺のことをわかっていると勝手に思っていたから初めて充希は真悠に不信感のようなものを感じた。
真悠を見上げれば、陸上部たちのいる方をニコニコと見て、握った手を離さなかった。
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