①三人の天秤～二人だけの友達～

⑭代価と友達

小桜は無念にちった桜美塁と制約をかけられた花園湊音のこれから来る未来を呪うのか将又、糧とし乗り越えるのか。

　しかし、桜美塁はすでに死んでいる。未来を私が摘み取った。

　それは、事実であり、確かなことである。
　それは、決して変わらない事実なのである。そう、私自身も許されない。
　何があっても、人の命を奪うのなら自分自身の命で償わなければならない。


相談屋に湊音が相談した回想


　花園湊音は名刺を持ち扉を開けると、レトロなバーのようなところへと出る。初めから分かっていたように相談屋のお姉さんのカウンターの所に来て、カウンターに座る。

「友達を助けたいんです」
花園湊音は落ち着いている。初めから何を話せばいいかも、分っていたように話している。考えているようで直感で感じたことを言葉にしているみたいである。

「ここは、相談をのってくれるんですよね」と湊音は希望を胸に言葉を出す。


「憎悪を返すと一番大事なものがなくなる」
　小桜は花園の隣のカウンターに座り、肩ひじをつき花園の言いたいことの要約をし話している。


「一番大事なものよりも、親友が傷つくのが許せない」


　怒りではなく心からの助けを乞うている様子で話している。
　大事なものなんて友達以上にあるのか、これは、花園湊音の叫びである。

「じゃあ、一番大事なものは親友なんだね」
　小桜が冷たく言い放つ。小桜はわざと冷たく言い放っいる。なぜか、それは、仕事だからである。
　それ以上の感情を仕事には含めない。
　そうしないとやっていけない仕事だからだ。

「そうなるんですか」
　花園湊音も相談屋の本気のトーンに考えるものがある。

「だって親友を助けたいんでしょ」
　小桜は、冷たく言っているのは、冗談で憎悪を返すなんて言えないようにするため、花園湊音の本気度を推し量っている。

　相談屋の心の中でこれほど心を締め付けることはない。相談屋はこの仕事が好きじゃない。だって人の人生に関わり捻じ曲げてしまう仕事だから。

　これを冗談でやる奴はいない。だからこそ本気度を測っている。

「そうです」
　すぐには決められないようなことでも、心からの声は聞こえるもので。その場所にいたら嘘を言えないような感じがして、考えるよりも言葉に発する方が先である。


「構いません。親友には笑っていてほしいから」


　花園湊音は顔色を変えずに淡々と話していた。心はすでに決まっていた。相談屋はこの子の強さは本物だと感じる。普通の精神でここにきて淡々と話す所がこの少年の凄い所だ。
　普通なら帰ってしまうが、それをしないところを見るとこの子は本気で友達を助けたいんだと。
　心が動かされてしまう。
　そんな感じを彷彿とさせる少年である。


「殴られたり、金を盗られたりすることよりも、親友が泣かされていることが嫌だ」


　花園湊音の心からの叫びだった。湊音は素直に言葉を出している。
　心の底から話しているのが、相談屋には感じ取れる。

「憎悪をあの四人に憎悪を返してください」
「お願いです」
　一筋の涙を流しながら懇願する。もう、ここに頼るしかないんだと自然と分かっている。　


「君は、自分のために怒るのではなくて他人のために怒れるんだね」


「自分のために怒る奴は大勢いるが、他人のために怒れる奴は少ししかいない」
　相談屋の顔色がどこか悲しそうで、相談屋が花園湊音に手を差し伸べる。
　花園湊音もその手を取る。
　これで、何人かの未来が決まってしまう。
　そんな大事な場面である。

　ここほど、慎重に決めることはないんだけれど、人の人生を背負うのは並大抵のことではない。相談屋は人のやさしさも、分る存在である。

　この子は一生足かせをして生きるべき存在ではない。きっといつか、笑って足かせを外す時が来る。

「契約完了。相談屋改め復讐屋、行くよ」

「マスター、コーヒーを彼に」

「分かりました」
　昔ながらの、ドリップ式のコーヒーを入れる。
「まあまあ、コーヒー飲んで」
　花園がコーヒーを飲もうとしたら、目がクリアになり、額から弾状の憎悪を取り出す。マスターが憎悪を取る。
　マスターが相談屋に憎悪の弾を渡す。

　花園は何も言わずにその場から立ち去る。

「これからが、お仕事よ」


回想終わり