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㉒本当の想いと修行
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霊山にて
「ここを登ればそうだ」
「俺達は貴方のことを何て呼べばいいですか」
その言葉を聞いて、少し宙を見てから言葉を出した。
「そうだな、師匠って呼びな」
「はい、師匠」
「二年間で使えるやつに育てる」
「はい、師匠」
とまあ、こんな感じに気楽に考えていた。それが。
「腕立て千回、腹筋千回、スクワット千回、それが、終わったら水汲みのランニング。往復しなさい、まずは小さな水がめでそこの水置き場の桶がいっぱいになるまで頑張れ」
「はい、師匠」と太郎は気持ちいくらいの言葉を出す。
「何回目だ」と正は太郎に聞く。
「腕立て五百はいった」と太郎は汗まみれで答える。
「ああ、ダメだ」と正は逃げるような言葉を出す。
「さぼっちゃおうぜ、どうせ見ていないし」
正はいつもそうだ、楽なほうへと逃げる。逃げるんだ。
「ダメだよ、俺らは強くなりに来たんだから」と太郎は正の目をまっすぐ見て答える。
俺はちゃんとする。辛くても辛くても頑張るんだ。そう思ってここに来た。
「でもさ、千回はやりすぎでしょ。俺なら最初は自分に合った訓練にするけどね」
正の言い分も分かる。これじゃ、体が壊れてしまう。俺の中に疚しい考えが入ってきた。
「俺はやるよ、千回だろ頑張るしかないだろ」
「じゃ、俺は五百でいいさ」
逃げやがって、逃げ腰の正め。
「さぼっちゃおうぜ」
甘い誘惑がきた。これからは逃げれない。太郎も観念してちょろまかそうと考えた。
「仕方ないよな、最初だし」
完全に心が折れてしまった。
「そうだよ、訓練だって無理するのは良くないよ」と太郎も開き直った。そう、二人の悪い感情がでてきた。
そして、俺達は訓練をちょろまかした。
太郎は、明日は必ず千回するんだと心に決めた。
部屋に戻ると飯が用意されていた。
「飯だ」と二人はテンションが上がっている。
「うわーーー」
「美味そう」
「最初だけだ」
師匠は意外と料理上手だ、質素な料理だが俺らには美味しそうに見えた。
「明日からは修行に自分の分の飯は自分でとるように」
俺達はこのころには分かっていなかった。そう、分かっていなかったんだ。
師匠の心が。
今、思えば俺達は愚かだった。と太郎は考える。
翌日。
また、今日もちょろまかした。でも、師匠は気づいていない。
俺達は何の為にここに来たか、すっかりと忘れていた。そう、忘れていたんだ。強くなるために来たのに出される課題をクリアする、嫌、ちょろまかすことに力を入れている。目的が変わってしまったんだ。
師匠の言葉を聞くまでは。
夜、一人師匠は小屋を出て行くときがある。
俺らは何故夜遅くに外に出かけるか不思議に思い、師匠に隠れてついて行った。
そこで、俺らは目撃した。
「清明様」
師匠は烏に話しかけている。
「で、あの子たちは使えそうですか」
烏から声が出るなんてなんか不思議な感じがして、太郎は声を出しそうになるのを耐えている。
「はい、鍛えています」
師匠は言葉に意思をのせて話している。
「文字を使用するときに肉体と精神を鍛えぬかないと、死ぬ」
「この事実は教えていますか」
二人は耳を疑った。
「まだ、でも、あいつらならいけます」
「そうですか、文字には秘匿義務があります」
「もしも、あの子たちがダメな時は貴方も死ぬんです。必死に育てなさい」
その理由を後で知ることになる。
「分かっていますか」と烏から声が出ている。
「はい」と師匠は少し悲しそうに話している。
俺らは確信した。
強くなる理由が増えたのだ。
夜が明け、朝になり、少し顔つきが変わった二人は訓練をこなす。自分の為だけに頑張るのではない。師匠の為にも頑張るんだ。そう、そっと二人は決意した。
「今日の飯はなしか。夕方になってようやく訓練が終わった」
師匠はへとへとの顔の二人を見て笑顔になった。実は師匠は知っていた、訓練をちょろまかしていたことを。でも、師匠は注意しなかった。それは、何の為に強くなるかを知って欲しいからだ。自分の疚しい心を知り、また、一段と心が強くなった二人を微笑ましくも思う。
「これから、飯の準備だ」
太郎は言葉を振り絞って大声を出した。そうしないと体が動かないからだ。今動けているのは、心の力を振り絞っているからだ。
飯の準備は夜が深くなるにつれて厳しくなった。
「くっそ、肉がいねえ」
太郎は周りを見回す。
「どうする、魚でいいんじゃ。」
正は言葉を出す。
「魚も取れねえ」
様子を見に来た師匠の顔を見て二人は自分達の顔を見た。
「ごめんなさい」
「ちょろまかしていました」
自然に頭を下げて事情を話した。
「俺達はもう、現実から逃げねぇ」
逃げねえではなく逃げられないんだ。そこまで、自分自身を追い込むんだ。俺達がすることは生半可ではいけないんだ。誰よりも強くなるんだ。
「戦うと決めたんです」と正は決意の顔をする。
「いい顔つきになった」
「飯は私が用意しようか」
「いえ、頼りません」と太郎も決意の顔をする。
師匠はこの優しさを断る勇気の持った人間はそうはいない。だから、こいつら二人を認めたんだ。自分の弟子としての器が出来ていることに、師匠は内心喜んでいる。態度には出ないが。
「夜だろうか昼だろうか関係ない。俺達は自分の出来ることは自分でする」
太郎はきっぱりと言い切った。
「当たり前のことだが難しいだろ。でもな、これを乗り切った時、お前たちは一皮むけるんだ。
世界がどんな風に見えるかその時までのお楽しみだ」と師匠こと亮は言い放つ。
二ヶ月後
「うわーーーーーーー、腕立て千回」
「うわーーーーーーー、腹筋千回」
「どうだ、次は」
太郎と正は、凄いスピードで訓練をこなしている。嫌、こなせるようなレベルに上がったんだ。
「お前ら基礎修行はここまでだ」
「これからは剣術修行と瞑想に振り分ける」
二人はお互いの顔を見た。ついでに体を見た。二人とも筋肉隆々、腹筋カーンだ。すげえだろうと二人がお互いに自分の筋肉を見せびらかしている。どうだと言わんばかりに決着がつかない。
「行くぞ」
師匠は少しあきれ顔で言葉を発した。二人はその言葉でお互いに競っていたことを止めついて来た。
どうして、師匠は強いのか考えた時がある。なぜそんな考えに至ったか。俺にも分からない。でも、師匠は俺達の目標とする人物であることは違いない。
修行場を変えて
「ああ、また、一本取れなかった」
剣で頭を叩かれている正がいる。三人は刀の修行をしている。
「どうした、正」
「師匠を足で翻弄しようとしてもダメだった」と正は太郎に言葉を出した。
確かに足で翻弄しようとしていた。しかし、上手くはいっていない。師匠は正を見ているようで見ていない。全体を見ているって感じかなと太郎は自分で考察を始めた。斬る瞬間に目線を変えている。何故そんなことをする。剣術って奴は一対一であることが普通ではない。多いい時では一対十五とかもある。だから、全体を見て斬る瞬間だけ相手を見るか。なんか俺、分かったかも、俺は正を置いて一足先に行こうか。
「まあ、戦いながら考えるんだな」と太郎は正に試練を与える。
「何かつかんだのか」
正の直感も鋭い。すぐに追いつけられそうだ。
瞑想にて
滝がある。
「この水は霊山からの贈り物だ」
「この水に長時間当たると。自分の弱さが露呈する」
「自分との対話をしなさい。自分はどういった人間であるか。どういうことが好きか、どういったことが嫌いか。そして、自分の弱さに打ち勝ちなさい」
師匠は淡々と説明をする。
「はい、質問」
正はすかさずに質問をする。
「自分の弱さに負けたらどうなるんですか」
「死ぬな」と師匠は平然と言う。
「えっーーーーーーーーー」
「そんなことを簡単に言うなよ」
「でも、心構えができた」
正は心臓に手を置きながら言葉を出した。
「一回死ぬくらいどうした。強くなれるのなら何回でも死んでやる。俺達は強くなるんだ」
「最初はそうだないきなり滝は」と師匠は滝を見ながら何やら考えている。
「俺達は強くなりたいんだ」
太郎ははっきりと言い放つ。
「だから、俺達は滝修行を行います」
太郎と正の覚悟である。
「仕方ない」
「ほれこれを持て」
「何だ、これは俺の文字の呪符がある、危ないときは使いなさい」
棒に文字が彫られている。腰における四十㎝くらいの大きさである。
「戦いでもするのか」
「それは、お前の中の文字が決めることだ」
「深層心理が働くから、最初は大変だぞ」
「苦労上等だ」
太郎と正は威勢はいいが実際は不安である。でも、師匠が見てくれるという安心感が湧いている。強くなるんだ。
一時間滝に打たれただけだった。
「なんで、文字は出てこないんだよ、師匠」
正は水から上がり、布製のタオルで体を拭いている。
「それは、まだ、お前たちがそのレベルに達していないからだ」
「自分の心は自分がよく分かっている」
「君は答えを聞かないと分からないかい。太郎を見て見なさい」
「自分で考えているぞ」
「って、師匠、あれ、寝てるだけっすよ」
あぐらをかき座って寝ている。
「まじだ」
「って、寝るな」
「いい夢を見た」
「俺、空にジャンプしてたんです。それも、何十メートルもそしたら火の羽が出たんです」
笑顔で太郎は話している。そんなにいい夢だったんだろうかと正は考えた。
「もしかしたら、自分の文字とのバイパスが出来始めているのかもな」と師匠は考えを伝える。
「あっずるいぞ、太郎、俺はまだ自分の文字さえも分からないのに」
「にっしししし」
「俺は一歩リード」
自信満々の笑み、自分のやるべきことが分かっている奴は成長も早いのだ。
「次は剣術です」
「それより師匠の文字も見せてよ」
正は急に文字に興味を持った。だからの言葉である。
「俺は、文字の二つ持ちだ」と師匠は自慢げである。
「俺には博愛だけではなく憎悪も持っている」
「まあ、お前らより強い理由にはならんがな」
師匠は分かりやすいタイプだ。聞いて欲しくないことなんだと分かる。だから、太郎は聞かないことにした。
「師匠はどうして戦っているんですか」
正が言葉を出した。正は少し無神経な所がある。でも、正は正なりに気を使う。でも、無神経だ。
「その話は長くなる。いつか教えてやるよ」
師匠は、重力と書き円で触れて半径十mの重力を掌握した。
二人の体が宙に浮いた。
「もっと高く、高く」
「すげえな、あれ見ろよあれが海だぜ」
二人は興奮しっぱなしだ。
「いつか俺達が冒険するかもしれないんだ」
「悪い奴なんかをぶっ飛ばしてさ」
「そうそう」
師匠は文字を解き地面に二人を下ろした。
「俺達は文字が使えるようになるのかな」
「なるのかな、ではなく、絶対に使えるようになるだ」
「そうだ、夜も訓練な、いつ寝るんだよ」
太郎はスパルタだな。と師匠は思いながら、二人のやり取りを聞いている。
「寝ない」
「寝るよ」
「寝ない」
「寝るってさ」
太郎と正は交互にいがみ合っている。
「そうでもしないと、俺達は強くならねえ」
「俺は力が欲しんだ」
「とおちゃんをもてあそんだハーメルンを打ち取る力を」
そう、太郎の野望、願望である。
「俺はそこまでない」
「楽に生きていきたい」
正は自分の願いのなさに愕然とする。でも俺は俺だと奮い立たせる。いいんだ、俺は、俺なんだから。と正だったら考えるよな。
「でも、それじゃ、ダメなんだよな」
「そうだな、俺達野望は違うけど、頑張ろうな」
次の修行の為に二人はお互いを奮い立たせた。
「当たり前だ」
「いつかこの先の世界も見るんだ」
「じゃ、剣術な」
と、二人が考えている間に、師匠は剣の稽古の為に用意をしてくださった。俺らの役目なのにと少し恥ずかしかった。でも、自分との対話が重要だから、自分の意思をはっきりとしたのは良かったんだと思うと二人は考えた。
三人は夕方になるまで剣術にいそしんだ。
そして、夜。
「本気の勝負しねえか」
太郎は構えつつ正に言葉を投げつけた。
「勝ったらそうだな」
「朝のたくあんを全部勝った奴に渡すってどうだ」
正はまるで、自分が欲しいものを選んだようだ。
「いいね、のった」
二人の纏うオーラが変わった。
静かで仰々しい
「俺から行く」
太郎が剣先を剣先で弾き詰め寄る。正は距離を取る。一歩踏み込み太郎は上から振り下ろした。正は両手で刀を持ち受け止めた。
そうやって二人は二時間撃ち合った。
「終わんね」
「でも、いいヒントを貰った」
正は太郎より少し剣術のセンスがいい。強いかは別として。
「何だよ、正、お前だけいい練習になったって思いやがって」
「君も気づいたでしょ、ただ、責めればいいわけじゃないって」
「呼吸や体の動き、筋肉の動きを見つつ動かないと」
正は自分の知識をひけらかしたわけじゃない。ただ、太郎と対等にいたいだけなのである。
「バレバレだぞお前は」
「そうか」
「でも、パワーは凄かった」
正は自分にないものを持っている太郎を素直に褒めた。
「もうちょっと筋トレしてから帰る」
「じゃ、先戻る」
太郎は照れ隠しでその場を離れた。
「ここを登ればそうだ」
「俺達は貴方のことを何て呼べばいいですか」
その言葉を聞いて、少し宙を見てから言葉を出した。
「そうだな、師匠って呼びな」
「はい、師匠」
「二年間で使えるやつに育てる」
「はい、師匠」
とまあ、こんな感じに気楽に考えていた。それが。
「腕立て千回、腹筋千回、スクワット千回、それが、終わったら水汲みのランニング。往復しなさい、まずは小さな水がめでそこの水置き場の桶がいっぱいになるまで頑張れ」
「はい、師匠」と太郎は気持ちいくらいの言葉を出す。
「何回目だ」と正は太郎に聞く。
「腕立て五百はいった」と太郎は汗まみれで答える。
「ああ、ダメだ」と正は逃げるような言葉を出す。
「さぼっちゃおうぜ、どうせ見ていないし」
正はいつもそうだ、楽なほうへと逃げる。逃げるんだ。
「ダメだよ、俺らは強くなりに来たんだから」と太郎は正の目をまっすぐ見て答える。
俺はちゃんとする。辛くても辛くても頑張るんだ。そう思ってここに来た。
「でもさ、千回はやりすぎでしょ。俺なら最初は自分に合った訓練にするけどね」
正の言い分も分かる。これじゃ、体が壊れてしまう。俺の中に疚しい考えが入ってきた。
「俺はやるよ、千回だろ頑張るしかないだろ」
「じゃ、俺は五百でいいさ」
逃げやがって、逃げ腰の正め。
「さぼっちゃおうぜ」
甘い誘惑がきた。これからは逃げれない。太郎も観念してちょろまかそうと考えた。
「仕方ないよな、最初だし」
完全に心が折れてしまった。
「そうだよ、訓練だって無理するのは良くないよ」と太郎も開き直った。そう、二人の悪い感情がでてきた。
そして、俺達は訓練をちょろまかした。
太郎は、明日は必ず千回するんだと心に決めた。
部屋に戻ると飯が用意されていた。
「飯だ」と二人はテンションが上がっている。
「うわーーー」
「美味そう」
「最初だけだ」
師匠は意外と料理上手だ、質素な料理だが俺らには美味しそうに見えた。
「明日からは修行に自分の分の飯は自分でとるように」
俺達はこのころには分かっていなかった。そう、分かっていなかったんだ。
師匠の心が。
今、思えば俺達は愚かだった。と太郎は考える。
翌日。
また、今日もちょろまかした。でも、師匠は気づいていない。
俺達は何の為にここに来たか、すっかりと忘れていた。そう、忘れていたんだ。強くなるために来たのに出される課題をクリアする、嫌、ちょろまかすことに力を入れている。目的が変わってしまったんだ。
師匠の言葉を聞くまでは。
夜、一人師匠は小屋を出て行くときがある。
俺らは何故夜遅くに外に出かけるか不思議に思い、師匠に隠れてついて行った。
そこで、俺らは目撃した。
「清明様」
師匠は烏に話しかけている。
「で、あの子たちは使えそうですか」
烏から声が出るなんてなんか不思議な感じがして、太郎は声を出しそうになるのを耐えている。
「はい、鍛えています」
師匠は言葉に意思をのせて話している。
「文字を使用するときに肉体と精神を鍛えぬかないと、死ぬ」
「この事実は教えていますか」
二人は耳を疑った。
「まだ、でも、あいつらならいけます」
「そうですか、文字には秘匿義務があります」
「もしも、あの子たちがダメな時は貴方も死ぬんです。必死に育てなさい」
その理由を後で知ることになる。
「分かっていますか」と烏から声が出ている。
「はい」と師匠は少し悲しそうに話している。
俺らは確信した。
強くなる理由が増えたのだ。
夜が明け、朝になり、少し顔つきが変わった二人は訓練をこなす。自分の為だけに頑張るのではない。師匠の為にも頑張るんだ。そう、そっと二人は決意した。
「今日の飯はなしか。夕方になってようやく訓練が終わった」
師匠はへとへとの顔の二人を見て笑顔になった。実は師匠は知っていた、訓練をちょろまかしていたことを。でも、師匠は注意しなかった。それは、何の為に強くなるかを知って欲しいからだ。自分の疚しい心を知り、また、一段と心が強くなった二人を微笑ましくも思う。
「これから、飯の準備だ」
太郎は言葉を振り絞って大声を出した。そうしないと体が動かないからだ。今動けているのは、心の力を振り絞っているからだ。
飯の準備は夜が深くなるにつれて厳しくなった。
「くっそ、肉がいねえ」
太郎は周りを見回す。
「どうする、魚でいいんじゃ。」
正は言葉を出す。
「魚も取れねえ」
様子を見に来た師匠の顔を見て二人は自分達の顔を見た。
「ごめんなさい」
「ちょろまかしていました」
自然に頭を下げて事情を話した。
「俺達はもう、現実から逃げねぇ」
逃げねえではなく逃げられないんだ。そこまで、自分自身を追い込むんだ。俺達がすることは生半可ではいけないんだ。誰よりも強くなるんだ。
「戦うと決めたんです」と正は決意の顔をする。
「いい顔つきになった」
「飯は私が用意しようか」
「いえ、頼りません」と太郎も決意の顔をする。
師匠はこの優しさを断る勇気の持った人間はそうはいない。だから、こいつら二人を認めたんだ。自分の弟子としての器が出来ていることに、師匠は内心喜んでいる。態度には出ないが。
「夜だろうか昼だろうか関係ない。俺達は自分の出来ることは自分でする」
太郎はきっぱりと言い切った。
「当たり前のことだが難しいだろ。でもな、これを乗り切った時、お前たちは一皮むけるんだ。
世界がどんな風に見えるかその時までのお楽しみだ」と師匠こと亮は言い放つ。
二ヶ月後
「うわーーーーーーー、腕立て千回」
「うわーーーーーーー、腹筋千回」
「どうだ、次は」
太郎と正は、凄いスピードで訓練をこなしている。嫌、こなせるようなレベルに上がったんだ。
「お前ら基礎修行はここまでだ」
「これからは剣術修行と瞑想に振り分ける」
二人はお互いの顔を見た。ついでに体を見た。二人とも筋肉隆々、腹筋カーンだ。すげえだろうと二人がお互いに自分の筋肉を見せびらかしている。どうだと言わんばかりに決着がつかない。
「行くぞ」
師匠は少しあきれ顔で言葉を発した。二人はその言葉でお互いに競っていたことを止めついて来た。
どうして、師匠は強いのか考えた時がある。なぜそんな考えに至ったか。俺にも分からない。でも、師匠は俺達の目標とする人物であることは違いない。
修行場を変えて
「ああ、また、一本取れなかった」
剣で頭を叩かれている正がいる。三人は刀の修行をしている。
「どうした、正」
「師匠を足で翻弄しようとしてもダメだった」と正は太郎に言葉を出した。
確かに足で翻弄しようとしていた。しかし、上手くはいっていない。師匠は正を見ているようで見ていない。全体を見ているって感じかなと太郎は自分で考察を始めた。斬る瞬間に目線を変えている。何故そんなことをする。剣術って奴は一対一であることが普通ではない。多いい時では一対十五とかもある。だから、全体を見て斬る瞬間だけ相手を見るか。なんか俺、分かったかも、俺は正を置いて一足先に行こうか。
「まあ、戦いながら考えるんだな」と太郎は正に試練を与える。
「何かつかんだのか」
正の直感も鋭い。すぐに追いつけられそうだ。
瞑想にて
滝がある。
「この水は霊山からの贈り物だ」
「この水に長時間当たると。自分の弱さが露呈する」
「自分との対話をしなさい。自分はどういった人間であるか。どういうことが好きか、どういったことが嫌いか。そして、自分の弱さに打ち勝ちなさい」
師匠は淡々と説明をする。
「はい、質問」
正はすかさずに質問をする。
「自分の弱さに負けたらどうなるんですか」
「死ぬな」と師匠は平然と言う。
「えっーーーーーーーーー」
「そんなことを簡単に言うなよ」
「でも、心構えができた」
正は心臓に手を置きながら言葉を出した。
「一回死ぬくらいどうした。強くなれるのなら何回でも死んでやる。俺達は強くなるんだ」
「最初はそうだないきなり滝は」と師匠は滝を見ながら何やら考えている。
「俺達は強くなりたいんだ」
太郎ははっきりと言い放つ。
「だから、俺達は滝修行を行います」
太郎と正の覚悟である。
「仕方ない」
「ほれこれを持て」
「何だ、これは俺の文字の呪符がある、危ないときは使いなさい」
棒に文字が彫られている。腰における四十㎝くらいの大きさである。
「戦いでもするのか」
「それは、お前の中の文字が決めることだ」
「深層心理が働くから、最初は大変だぞ」
「苦労上等だ」
太郎と正は威勢はいいが実際は不安である。でも、師匠が見てくれるという安心感が湧いている。強くなるんだ。
一時間滝に打たれただけだった。
「なんで、文字は出てこないんだよ、師匠」
正は水から上がり、布製のタオルで体を拭いている。
「それは、まだ、お前たちがそのレベルに達していないからだ」
「自分の心は自分がよく分かっている」
「君は答えを聞かないと分からないかい。太郎を見て見なさい」
「自分で考えているぞ」
「って、師匠、あれ、寝てるだけっすよ」
あぐらをかき座って寝ている。
「まじだ」
「って、寝るな」
「いい夢を見た」
「俺、空にジャンプしてたんです。それも、何十メートルもそしたら火の羽が出たんです」
笑顔で太郎は話している。そんなにいい夢だったんだろうかと正は考えた。
「もしかしたら、自分の文字とのバイパスが出来始めているのかもな」と師匠は考えを伝える。
「あっずるいぞ、太郎、俺はまだ自分の文字さえも分からないのに」
「にっしししし」
「俺は一歩リード」
自信満々の笑み、自分のやるべきことが分かっている奴は成長も早いのだ。
「次は剣術です」
「それより師匠の文字も見せてよ」
正は急に文字に興味を持った。だからの言葉である。
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「師匠はどうして戦っているんですか」
正が言葉を出した。正は少し無神経な所がある。でも、正は正なりに気を使う。でも、無神経だ。
「その話は長くなる。いつか教えてやるよ」
師匠は、重力と書き円で触れて半径十mの重力を掌握した。
二人の体が宙に浮いた。
「もっと高く、高く」
「すげえな、あれ見ろよあれが海だぜ」
二人は興奮しっぱなしだ。
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「悪い奴なんかをぶっ飛ばしてさ」
「そうそう」
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「なるのかな、ではなく、絶対に使えるようになるだ」
「そうだ、夜も訓練な、いつ寝るんだよ」
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「寝ない」
「寝るよ」
「寝ない」
「寝るってさ」
太郎と正は交互にいがみ合っている。
「そうでもしないと、俺達は強くならねえ」
「俺は力が欲しんだ」
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そう、太郎の野望、願望である。
「俺はそこまでない」
「楽に生きていきたい」
正は自分の願いのなさに愕然とする。でも俺は俺だと奮い立たせる。いいんだ、俺は、俺なんだから。と正だったら考えるよな。
「でも、それじゃ、ダメなんだよな」
「そうだな、俺達野望は違うけど、頑張ろうな」
次の修行の為に二人はお互いを奮い立たせた。
「当たり前だ」
「いつかこの先の世界も見るんだ」
「じゃ、剣術な」
と、二人が考えている間に、師匠は剣の稽古の為に用意をしてくださった。俺らの役目なのにと少し恥ずかしかった。でも、自分との対話が重要だから、自分の意思をはっきりとしたのは良かったんだと思うと二人は考えた。
三人は夕方になるまで剣術にいそしんだ。
そして、夜。
「本気の勝負しねえか」
太郎は構えつつ正に言葉を投げつけた。
「勝ったらそうだな」
「朝のたくあんを全部勝った奴に渡すってどうだ」
正はまるで、自分が欲しいものを選んだようだ。
「いいね、のった」
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静かで仰々しい
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そうやって二人は二時間撃ち合った。
「終わんね」
「でも、いいヒントを貰った」
正は太郎より少し剣術のセンスがいい。強いかは別として。
「何だよ、正、お前だけいい練習になったって思いやがって」
「君も気づいたでしょ、ただ、責めればいいわけじゃないって」
「呼吸や体の動き、筋肉の動きを見つつ動かないと」
正は自分の知識をひけらかしたわけじゃない。ただ、太郎と対等にいたいだけなのである。
「バレバレだぞお前は」
「そうか」
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