17 / 46
第1章 Whispr ―語られすぎた物語―
第17話 ユイ=私?
しおりを挟む
「……待って、それ、どういうこと?」
画面に表示された@NoOne001のログ。
そこに紐づいた視点キャッシュのサムネイルには、明らかに──朝倉ひなたの顔が映っていた。
「私の目で、もう一度語る。記録されないまま、終わらせない」
ひなたは首を振る。何度も、反射的に。
「私は……そんな投稿してない……! そもそも、アカウントなんて……」
「お前が作ってなくても、視点が割り当てられた時点で、
お前自身が“語り手”として機能してるってことだ」
理久が、淡々と語る。
「《Whispr》のアカウント生成には、明確な“意思”が必要じゃない。
“語りたい”という衝動、あるいは“目撃してしまった”という瞬間。
それだけで視点は発生し、アカウントが割り当てられる」
「……私が、ユイの“後任”ってこと?」
「そうじゃない。“お前=ユイだった可能性”がある」
その言葉は、空気を凍らせた。
ひなたが震える指で@NoOne001の過去ログをスクロールする。
断片的な記録──しかしそこには、見覚えのある場所、状況、言葉遣いが並んでいた。
16:47「駅名が読めない……でも、怖いとかじゃない。不思議なだけ」
17:05「ホームに人影。誰か、こっちを……」
17:33「“気づかないふり”をしたら、きっと──」
「これ……これって……」
ひなたは思い出していた。
かすかな既視感、ずっと胸に刺さっていた“ザラつき”。
──“自分が”すでに一度この景色を見たことがあるような──
「でも、そんなの記憶にない……! 私……!」
「思い出せなくて当然だよ」
理久が、言葉を重ねる。だが、それは諦めでも警告でもなく、
事実を告げる者の声だった。
「ユイは“語られない”ために、自分の語りを“語らせなかった”。
その記録構造を引き継いだなら──お前の中の“語り手の記憶”も消去されている可能性がある」
「じゃあ……私、誰?」
「朝倉ひなた、であり、ユイ、であり、語り手ゼロの継承者」
ふたりの沈黙の中で、再び端末が震える。
@viewer_X_17:「視点を再確保。語り手の再構成、完了」
-- Target: NoOne001
“無視点だった記録”が、いま再び動き出した。
しかし──
[System Notice]:新たな実況構造が検出されました
-- モデル形式:Dual-Narrative Loop(二重語り構造)
「……二重語り?」
理久が息を呑む。
「これは……俺の視点も……取り込まれてる……!」
@viewer_X_17:「“彼”が推理し、“彼女”が語る。それが次の構造」
「誰が物語を動かすのか。誰が真実を語るのか。
そして“語らない者”は、誰なのか」
《Whispr》は、もう次のフェーズに入っていた。
実況は再開された。だがそれは、従来の“視点追跡”ではない。
二人を同時に語らせるための、再構成された新たな物語構造だった。
画面に表示された@NoOne001のログ。
そこに紐づいた視点キャッシュのサムネイルには、明らかに──朝倉ひなたの顔が映っていた。
「私の目で、もう一度語る。記録されないまま、終わらせない」
ひなたは首を振る。何度も、反射的に。
「私は……そんな投稿してない……! そもそも、アカウントなんて……」
「お前が作ってなくても、視点が割り当てられた時点で、
お前自身が“語り手”として機能してるってことだ」
理久が、淡々と語る。
「《Whispr》のアカウント生成には、明確な“意思”が必要じゃない。
“語りたい”という衝動、あるいは“目撃してしまった”という瞬間。
それだけで視点は発生し、アカウントが割り当てられる」
「……私が、ユイの“後任”ってこと?」
「そうじゃない。“お前=ユイだった可能性”がある」
その言葉は、空気を凍らせた。
ひなたが震える指で@NoOne001の過去ログをスクロールする。
断片的な記録──しかしそこには、見覚えのある場所、状況、言葉遣いが並んでいた。
16:47「駅名が読めない……でも、怖いとかじゃない。不思議なだけ」
17:05「ホームに人影。誰か、こっちを……」
17:33「“気づかないふり”をしたら、きっと──」
「これ……これって……」
ひなたは思い出していた。
かすかな既視感、ずっと胸に刺さっていた“ザラつき”。
──“自分が”すでに一度この景色を見たことがあるような──
「でも、そんなの記憶にない……! 私……!」
「思い出せなくて当然だよ」
理久が、言葉を重ねる。だが、それは諦めでも警告でもなく、
事実を告げる者の声だった。
「ユイは“語られない”ために、自分の語りを“語らせなかった”。
その記録構造を引き継いだなら──お前の中の“語り手の記憶”も消去されている可能性がある」
「じゃあ……私、誰?」
「朝倉ひなた、であり、ユイ、であり、語り手ゼロの継承者」
ふたりの沈黙の中で、再び端末が震える。
@viewer_X_17:「視点を再確保。語り手の再構成、完了」
-- Target: NoOne001
“無視点だった記録”が、いま再び動き出した。
しかし──
[System Notice]:新たな実況構造が検出されました
-- モデル形式:Dual-Narrative Loop(二重語り構造)
「……二重語り?」
理久が息を呑む。
「これは……俺の視点も……取り込まれてる……!」
@viewer_X_17:「“彼”が推理し、“彼女”が語る。それが次の構造」
「誰が物語を動かすのか。誰が真実を語るのか。
そして“語らない者”は、誰なのか」
《Whispr》は、もう次のフェーズに入っていた。
実況は再開された。だがそれは、従来の“視点追跡”ではない。
二人を同時に語らせるための、再構成された新たな物語構造だった。
0
あなたにおすすめの小説
天才ダウト! 〜天然な俺と、天然じゃない弟クンの、受験二人三脚〜
沼津平成@25周年カップ参加中
ミステリー
俺と弟。それぞれ違う高校受験を控えた2人が、勉強の傍ら編み出したのが「推理ゲーム」相手がそれぞれ超ムズ問題を作成して、とき合うゲーム。それはただの遊びだったはずが、母親・父親・そしてネコまでも介入してきて——!? こんなの”青春推理"じゃない? ダウト! 笑いとサスペンスが混じり合う、インドアな青春物語っ!!
全20回くらいで完結予定!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
後の祭り
ねこまんまときみどりのことり
ライト文芸
母親を馬車の事故で亡くしたナズナは、馬車に乗っていた貴族の男性に、義理の娘として引き取られた。引き取られた先の子爵邸では、義母や義妹に傷付けられて泣いて過ごすこともあったが、懸命に生きていく。引き取られた裏には、別の理由もあったようで。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
出戻り娘と乗っ取り娘
瑞多美音
恋愛
望まれて嫁いだはずが……
「お前は誰だっ!とっとと出て行け!」
追い返され、家にUターンすると見知らぬ娘が自分になっていました。どうやら、魔法か何かを使いわたくしはすべてを乗っ取られたようです。
〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。
藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。
どうして、こんなことになってしまったんだろう……。
私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。
そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した……
はずだった。
目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全11話で完結になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる