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しおりを挟むそうして、ふたりは握手を交わす。
背も高く、体格もよく、おまけに優しいレオナルドはそれはそれは頼り甲斐があるふうに見えたものだが、彼の背後で揺れているふわふわのしっぽと、頭の上でぴこぴこと動いている犬(狼かもしれない)の耳だけは、どうしようもなく愛らしく見えたのだった。
*
次の日、紅葉は朝の早くから目を覚ました。状況が状況なだけに、深い眠りにつけなかったのである。
上体を起こして、室内を見まわす。レオナルドから借りた客室は整理整頓されていて清潔だったが、それはそれでいつも少し散らかっている自分の部屋を恋しく感じた。
室内はまだ薄暗い。カーテンの隙間から光は漏れているが、まだ太陽は昇っていないらしかった。
紅葉は、ゆっくりと深呼吸をする。大丈夫。きっと、帰ることが出来る。そう自分に言い聞かせた。
レオナルドも手伝ってくれると言っていたし、彼を信用もしたい。なにせ、なんの関係もなかったはずの紅葉を空の落下から助けてくれたひとなのだ。
そうして、もとの世界に戻る方法を必ず見つけてみせる。そう決意して、寝室を出た。
リビングに行くと、すでにレオナルドが椅子に腰かけてコーヒーを飲んでいた。彼は紅葉に気が付くと、穏やかに微笑む。
「おはよう。ちゃんと眠れたかい?」
「はい。レオナルドさんがいなかったら、野宿するところでした」
「はは、眠れたのならよかった。女の子に野宿なんてさせられないしね」
紅葉は、空いている椅子に腰をおろす。と、レオナルドが席を立って紅葉のためのコーヒーを入れてくれた。
湯気のたつ温かいコーヒーを入れてくれた彼に礼を述べて、紅葉はそれをひとくち飲む。砂糖とミルクが入ったそれは甘く、紅葉をホッとした気分にさせた。おいしい、と素直に思う。
席に戻ったレオナルドに、紅葉は尋ねた。
「あの、私がもとの世界に戻れるよう手助けをしてくれるっておっしゃってましたけど……私に出来ることって、なにかありませんか? お世話になりっぱなしなのは、申し訳ないですし……」
「べつに気にしなくてもいいのだけどね。しかし……そうだな。やはり、まずは情報収集をする必要がある。とりあえず町の図書館にでも行ってみようと思っているんだが――」
そのとき、ハッとした表情になったレオナルドが「伏せろ!」と叫んだ。
直後、低い地鳴りのような音が響き、家が大きく揺れる。これは――地震か。
レオナルドが紅葉を引き寄せて、テーブルのしたに滑り込む。コーヒーの入ったカップや棚の上のものが次々に落下して、壊れていった。
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