【R18】異世界転移少女、イケオジと猫耳プレイする

チーズたると

文字の大きさ
11 / 23

11

しおりを挟む


 手鏡をノアに渡し、ヴィクトールは冷え切った目でナツネを見やる。
 片手で自らの口許を覆っていたナツネは、ノアに負けないくらいに驚愕の面持ちをしていた。

「……死ぬ前に言い残すことはあるか?」
「違う違う! 俺じゃない! 俺はそんな妙な魔術は使ってねぇ!」

 両手をばたばたと振り、ナツネは反駁する。

「お前じゃないなら、なんなんだ。これはお前が持ってきたもので、おまけに魔術を施したと、他でもないお前が先程言っていたではないか」

「魔術は使ったけど、そんな頭に耳が生えるような変なやつは使ってねぇって! ほんと! ほんとに!」

「なら、何故こんなことになっている」

 視野の端で、依然として鏡を覗き続けているノアが、獣の耳をぴくぴくと動かしていた。ここに彼女がいなければ、ヴィクトールはとっくにナツネに手を出していただろう。

 ヴィクトールに問われた彼が、視線を宙に流して記憶を遡る素振りを見せる。

「なんでって言われても、べつに妙なもんは使ってねぇし、魔術の順序だって――あ」

 ナツネの台詞がそこでいったん途切れた。ヴィクトールは唇だけで笑う。

「……どうやら、覚えがあるらしいな」
「いや、違う。これは事故だ。ただ単に俺のうっかりが引き起こした事故で――」

「ほう、自らに非があると認めるか。殊勝な心掛けだ」

「ほんとにわざとじゃねーんだって! 見たところ半日かそこらでもとに戻りそうな感じだし、動物の耳やしっぽが生えたからってべつに死ぬわけじゃねーし……」

 ヴィクトールが指の関節を鳴らせば、彼はあわてて椅子から飛び降りた。そうして、まるで感情のこもっていない白々しい声調で述べる。

「あー、そういえば俺、大事な用事があるんだったわ! すっかり忘れてた! ほんとはもっとゆっくりしたかったのに残念だなー! そんなわけで、俺そろそろ帰るわ! ノアちゃんに関することでなんかわかったらすぐに伝える! そんじゃあなー!」

「おい、待て」

 ナツネを捕まえようと伸ばした手は、彼の魔術の結界によって弾かれてしまった。

 反射的に舌打ちを漏らしたヴィクトールへナツネは笑顔で手を振って、驚くべき速度で走り去っていく。
 あとには、頭から獣の耳を生やしたヴィクトールとノアだけが残された。

「……あいつ……」

 明日、職場の城内で彼に会えば、しかるべき措置をとらなくてはなるまい。多少、事が荒くなっても今回は許されるだろう。

 今日何度目になるかわからないため息を零してヴィクトールが振り返ると、ノアがまだ手鏡を覗き込んで獣の耳をぴょこぴょこと動かしていた。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

辺境伯と幼妻の秘め事

睡眠不足
恋愛
 父に虐げられていた23歳下のジュリアを守るため、形だけ娶った辺境伯のニコラス。それから5年近くが経過し、ジュリアは美しい女性に成長した。そんなある日、ニコラスはジュリアから本当の妻にしてほしいと迫られる。  途中まで書いていた話のストックが無くなったので、本来書きたかったヒロインが成長した後の話であるこちらを上げさせてもらいます。 *元の話を読まなくても全く問題ありません。 *15歳で成人となる世界です。 *異世界な上にヒーローは人外の血を引いています。 *なかなか本番にいきません

落ちて拾われて売られて買われた私

ざっく
恋愛
この世界に来た日のことは、もうあまり覚えていない。ある日突然、知らない場所にいて、拾われて売られて遊女になった。そんな私を望んでくれた人がいた。勇者だと讃えられている彼が、私の特殊能力を見初め、身請けしてくれることになった。 最終的には溺愛になる予定です。

処理中です...