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「やぁアッ、ぁあっ――アぁああアッ! いくっ、いっちゃいます!」
「うんうん、いい子だね。僕も、もう出ちゃいそう」

 奥をえぐるふうに刺激されたその刹那、なにかがボーダーラインを超える感覚があった。
 ミサの全身が、壊れたようにガクガクと跳ねる。

「ぁっ、あああアアあっ!」

 ひとりでに肢体が仰け反り、喉からは本能の声が迸った。
 頭の中は真っ白に染まり、肉体のすべての機能が一時停止したかのようである。

 それは、己の意思では抗えない圧倒的なナニカだった。
 にもかかわらず、これまでの人生で感じたことのない気持ちよさがある。

 いたく乱暴であるのと同時に、他のなによりも甘い感覚。一度知ってしまえば、永遠に忘れることなど出来ない禁忌的な感覚。
 それに酔いしれそうになっていた、次の瞬間だった。

 過敏になった深奥に熱いものが勢いよく叩きつけられ、意識が現実に引き戻される。
 先程までの感覚とは別の、もっと直接的な感覚がミサを襲った。

「やァアああっ! なにっ、奥にッ! ンあああァぁっ!」

 無意識に逃げようとするミサの腰をメルウィンが掴み、強引に引き寄せる。
 そうすることで、熱いものがいっそう奥に擦りつけられた。

「ぁンッ、あっ、アぁっやアぁあ!」
「っ、相変わらずすごい締まりだねぇ。全部持っていかれそうだ」

 メルウィンの声は、どこか余裕さなげに聞こえる。
 眼球の奥がチカチカと瞬く錯覚を覚えながら、ミサは懇願した。

「はっ、ァ……も、ゆるしてくださ……ッ」
「ごめん、もうちょっと」

 言うと、彼はミサに唇を寄せ、再び舌で口内を蹂躙するふうなキスをしてくる。
 さらに、今度は同時に腰をも揺すってきた。

 ミサの喘ぎは、すべてくぐもって相手に飲み込まれる。
 ここまで来ると、もはやメルウィン以外のことを考えるのは困難を極めた。

 彼はミサの舌に自身の舌を絡めながら、下腹部ではもっとミサの奥を目指そうと、腰を押しつけてくる。

 自らの頭がくらくらとしてくるのを、ミサは感じた。僅かな時間で、世界がすっかり変わってしまったようである。

 メルウィンが唇を離せば、ふたりのあいだで唾液が卑猥に糸を引いた。

 至近距離に見る彼の面持ちが、いつもの軽薄な表情から感情の読めないそれへと変化する。
 魔術師は、ひとりごとのように言った。

「あーあ、もうずっとこの世界にいればいいのにね」

 その発言は、ミサに対して向けられた言葉なのだろうか。
 なんにせよ、彼の言動が本当に現実のものなのかどうかは、もはやミサにはわからない。

 それはミサの曖昧な意識が生み出した幻覚だったのかもしれなかったし、沈みかけた意識が見せた夢だったのかもしれなかった。

 ただ、メルウィンの耳を飾っていた小さな白いピアスが、不思議と目に焼き付いた。
 それさえも、夢や幻だったのかもしれないけれども。


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