【R18】適当に呪文を唱えたらオッサン悪魔が来てしまった

チーズたると

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「おじさん、ひょっとしてよく女の子相手にこういうことしてるんですか?」
「ローさんね。また人聞きの悪いことを。君みたいな魔術の素人の女の子が悪魔を呼び出すなんてこと、そうほいほいあるわけないだろう。君が特殊なの」

 それとも――と言って、ローランドがにやりと笑う。

「……妬いちゃった? 他の女の子達と一緒なんじゃないかって」
「いえ。私、いったいどんなクズに抱かれるんだろうと思って」

「だから、ローさんね。彩香ちゃん、会ったばっかりの相手にそんな失礼なこと言うの、おじさんよくないと思うな」

 まるで親戚のような顔をして、彼は述べた。彩香は一応、形ばかりの謝罪をする。

「すみません。何故かまったく敬意を払う気になれなくて」
「あっはっは。女の子じゃなかったら今ごろ呪ってるよ」

 さらりと物騒に返事をして、ローランドは彩香をベッドに組み敷いた。

 ちなみに、この部屋に引っ越してきてからの彩香は仕事が忙しいために恋人を作れていない。故に、この部屋に入った男性はローランドが初めてだった。――入った、という言いまわしが正しいのかどうかは謎であるが。

「……ちなみに、キスはあり? なし?」

 彼は小首を傾げながら問う。この、不本意ながらも母性本能がくすぐられてしまう動作はわざとなのかどうか。もしも故意であるのなら、なかなかの策士ではないだろうか。

 そんな感情を押し殺して表に出さないようにしつつ、彩香は返答する。

「明日には一連の記憶をすべて抹消する予定なので、もう好きにしてください」
「悲しいねぇ。おじさんは、とても悲しい。そんなことしなくても、乱暴になんてしないのに」

 ゆるく首を左右に振ってから言うと、ローランドは自身の唇を彩香の唇に軽く重ねた。

 触れたそこは、人間の唇と変わらず、温かくて柔らかい。悪魔も人間も存外に大差はないのかもしれないなと、彩香はひそかに思う。

 くちを離し、至近距離で視線を交わしながら、いささか呆れを含ませて彩香は言った。

「……とか言って、ちゃっかりキスはするんですね」
「ん? だって、好きにしていいって言われたし。可愛い女の子とキス、したいし」

 微塵も悪びれる様子もなくそう返答されてしまえば、彩香にはもう返す言葉がない。

 呆れた彩香の眼差しにもめげることなく、ローランドは彩香の頬に、耳朶に次々とキスを降らせる。

「んっ……」

 我知らず漏れてしまった嬌声に、無性に恥ずかしくなった。耳聡くそれを拾った彼が、笑みを深める。

「うんうん、感度良好。優しくしてあげるから、緊張しなくていいんだよー」
「そういうオッサン臭い台詞、なんとかなりませんか……?」

 それは半分は照れ隠しの反論だったが、聞くとローランドはショックを受けた面差しになって固まった。演技には見えなかった。

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