11 / 28
11
しおりを挟む「おじさん、ひょっとしてよく女の子相手にこういうことしてるんですか?」
「ローさんね。また人聞きの悪いことを。君みたいな魔術の素人の女の子が悪魔を呼び出すなんてこと、そうほいほいあるわけないだろう。君が特殊なの」
それとも――と言って、ローランドがにやりと笑う。
「……妬いちゃった? 他の女の子達と一緒なんじゃないかって」
「いえ。私、いったいどんなクズに抱かれるんだろうと思って」
「だから、ローさんね。彩香ちゃん、会ったばっかりの相手にそんな失礼なこと言うの、おじさんよくないと思うな」
まるで親戚のような顔をして、彼は述べた。彩香は一応、形ばかりの謝罪をする。
「すみません。何故かまったく敬意を払う気になれなくて」
「あっはっは。女の子じゃなかったら今ごろ呪ってるよ」
さらりと物騒に返事をして、ローランドは彩香をベッドに組み敷いた。
ちなみに、この部屋に引っ越してきてからの彩香は仕事が忙しいために恋人を作れていない。故に、この部屋に入った男性はローランドが初めてだった。――入った、という言いまわしが正しいのかどうかは謎であるが。
「……ちなみに、キスはあり? なし?」
彼は小首を傾げながら問う。この、不本意ながらも母性本能がくすぐられてしまう動作はわざとなのかどうか。もしも故意であるのなら、なかなかの策士ではないだろうか。
そんな感情を押し殺して表に出さないようにしつつ、彩香は返答する。
「明日には一連の記憶をすべて抹消する予定なので、もう好きにしてください」
「悲しいねぇ。おじさんは、とても悲しい。そんなことしなくても、乱暴になんてしないのに」
ゆるく首を左右に振ってから言うと、ローランドは自身の唇を彩香の唇に軽く重ねた。
触れたそこは、人間の唇と変わらず、温かくて柔らかい。悪魔も人間も存外に大差はないのかもしれないなと、彩香はひそかに思う。
くちを離し、至近距離で視線を交わしながら、いささか呆れを含ませて彩香は言った。
「……とか言って、ちゃっかりキスはするんですね」
「ん? だって、好きにしていいって言われたし。可愛い女の子とキス、したいし」
微塵も悪びれる様子もなくそう返答されてしまえば、彩香にはもう返す言葉がない。
呆れた彩香の眼差しにもめげることなく、ローランドは彩香の頬に、耳朶に次々とキスを降らせる。
「んっ……」
我知らず漏れてしまった嬌声に、無性に恥ずかしくなった。耳聡くそれを拾った彼が、笑みを深める。
「うんうん、感度良好。優しくしてあげるから、緊張しなくていいんだよー」
「そういうオッサン臭い台詞、なんとかなりませんか……?」
それは半分は照れ隠しの反論だったが、聞くとローランドはショックを受けた面差しになって固まった。演技には見えなかった。
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる