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しおりを挟む「じゃあ、過去最短の時間で仕事を終わらせるわ。ところで、花を狙う魔法使いと鉢合わせたらどうするの? そいつも狩っていいの?」
「戦闘民族かよ。人間は狩るんじゃねぇ。まぁ……殴って気絶させて、森の外に放り出すくらいならかまわねーが」
「ふふ、その仕事も私にまかせてちょうだい。私と鉢合わせたことを後悔させてあげるわ」
「言っとくが、殴って気絶させるだけだぞ? 間違ってもボコボコにはするんじゃねーぞ」
「手加減はするわよ。あんまり手加減って得意じゃないけど」
「めちゃくちゃ不安になるじゃねーか」
「あら、こんなことで不安になるなんて。案外デリケートなのね」
「お前の神経と心臓が鋼鉄製なだけだろ」
「そうね。母国にいたときも、鋼の女って褒め称えられたことがあるわ」
「たぶん、それ褒めてたわけじゃねぇと思うぞ……。まぁ、いい。とりあえず、明日は午前中から家を出るぞ。風呂とベッド貸してやるから、今日は早く寝ろよ」
「あら、ベッド借りてもいいの?」
「さすがに女をソファーで寝かすような真似はしねぇよ。それとも、なんだ。添い寝のほうがいいか?」
「私、寝相悪いわよ。ベッドから蹴り落とされてもいいのなら、止めないけど」
「……今夜はソファーで寝るわ、俺」
「そう? 悪いわね。ありがと」
返して、マーガレットは笑った。
シャールはゆるく首を振りながら、ため息を漏らす。
「……顔だけは、可愛いんだけどなぁ」
「失礼ね、性格だって可愛いわよ」
「お前は『可愛い』をはき違えすぎだよ」
そういった経緯があり、マーガレットはシャールの家に泊まることになったのだった。
いつもは大きいベッドで眠っているからか、寝相の悪いマーガレットには普通のサイズのベッドは小さすぎて、夜中にベッドから落下して目覚める羽目にはなったけれど――。
*
翌日、シャールのログハウスの前でぽかぽかの陽光を浴びながら、マーガレットは笑った。
「いいお天気。お出かけ日和ね!」
「ピクニックに行くみたいなノリやめろ」
「あら、べつにいいじゃない。細かい男ね」
「細かい男だなんて、初めて言われたわ」
シャールは呆れながら返す。
彼は、腰に剣をさげていた。それを認めて、マーガレットは尋ねる。
「今日は弓矢じゃないのね」
「相手がでっけー花だからな。ちまちま矢を撃っててもキリがねぇんだよ」
「私は丸腰でいいわけ?」
「お前、なんか扱える武器あんのかよ?」
「ないけど」
「だろ。使えない武器で戦うくらいなら、丸腰のほうがマシだよ。お前みたいな肉弾戦が得意なタイプはな」
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