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78 マチョリダ派を断罪しよう!

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 アブラタンク一派を一掃し、我が世の春と言わんばかりの顔でマチョリダ達がルシーファと俺の前に跪く。

「嗚呼……いと誉れ高き天にまします我らが父・スゴピカ様! ……我等の神殿に巣食う悪を一掃してくださり、感謝申しあげます」

 意気揚々と、頭を下げるマチョリダ一派。
 しかし、ルシーファの表情は冴えない。

「我々、スゴピカ様にお仕えする神官団一同、さらに己を律し、修行に励み、神の御心のままに清廉なる神殿を作り上げましょう!」

 同様に、後ろの方で控えている一般の神官達の表情も暗い。

「いいえ、マチョリダ……真の教えを見失っているのは貴方達も同様です」

「なっ!?」

 ルシーファの声は静かなものだったが、不思議とそれは広間中に響いた。
 面と向かって『真の教えを見失っている』と指摘されたマチョリダの表情が凍り付く。

「わたくしが幼い姿だった時、何度、貴方に『もうやめて』とお願いしたか覚えていますか?」

 一応、ルシーファを拾って保護していたのはマチョリダ一派だ。
 保護っていうか、あれは拷問か虐待に近かったけどな?

 あの異様な全裸ニーソっていうのも、コイツ等のしわざだ。

 そもそも天使とは穢れ無き清き者であるはずで、その身体に恥ずかしい所など一切存在しないのだから、衣類は不要! という無茶苦茶な理論。
 しかし、何代か前の天使様が、右足は太ももまである青いソックスを穿いていたという記述が残った神官の日記が保存されていたため、ソックスだけは装備させたらしい。

 それさぁ……たぶん、他にも衣類は絶対着用してたよな? 
 で、それを書いたヤツの嗜好が、太ももと衣類の隙間から垣間見える絶対領域だったと思うんだ。
 それに興奮したから、そんな事を書き残したんだろ?

 なのに、なんで、全裸にニーソっていう結論になるんだよ!?

 他の服装のことを書いてなかったとしても、そこは察しろよ!?
 例えば『彼女の前髪がそよ風に揺れた』って表現を読んで、その彼女に『前髪以外の頭髪が存在しない』と思うか?

 アブラタンクあっちはあっちでゲスだったけど、マチョリダこっちはこっちで極端なんだよ。

 聖水づくりだって、聞いた話だと完全に拷問だし。

 この辺りは砂漠地帯。
 昼間は皮膚が焼けるような暑さだが、その反面、夜には氷点下の寒さまで気温が急落する。

 その夜中に、まだあんなガキのルシーファを冷水に一刻近く漬け込むって発想がヤバイ。

 何でも、月の光は慈悲にあたる、って事で夜作るのがしきたりだそうなのだが、そんな事を続けさせられたら、肺炎じゃなくても、低体温症で死ぬぞ。

 子供とか幼生体は、成人や成体よりもか弱いって発想は人間にもあるはずなのに、どうしてコイツはそこに思い至らないんだろうな?

 実際、何度も途中で意識を失っては、どつかれたりぶん殴られたり爪を剥がれたりしていたらしい。
 そんな証言が、そういった些細な傷を治療していた神官からバッチリ出ている。

「ですが、あれは正しい修行の……」

「『正しい』とはどういうことなのでしょうか?」

「私は、神殿の書物に描かれたことを忠実に繰り返し修行しております!! 私は誰よりも正しいッ!!」

「おのれの正義を他者に押し付けることが本当に正しいのでしょうか?」

 ルシーファは、怒鳴る訳では無く、怒る訳でも無く、ただ、ただ、悲しそうに小さく首をかしげる。

 ……おお、流石、演技派……四天王の中でも一般兵への説教はアイツが一番得意だったし……
 マチョリダタイプは強く言っても絶対聞かないだろうしなぁ。
 上手い切り返しだよな。
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